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お祖母様の提案

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「そうねぇ。一応、陛下にリリーシアと婚約させるようにとお話はしておくわ。ただ、権力の偏りの件に目をつぶれば貴女でも良いことは分かるわね?」

 お祖母様に問われて頷く。

 私はセニヨン公爵家の本当の娘ではないから、レオナルドがどうしても!と言えば、セニヨン公爵家の娘のまま婚約者にされる可能性がある。

 はっきり言って、お断りである。
そんなことになるくらいなら、貴族籍を捨てて平民になった方がマシ。

 ローズマリアは生粋の公爵令嬢だから、平民になった方が~なんて言っても、生きていけるわけがない。

 お風呂に食事、着替えに買い物、何を取ってもひとりで出来ないのが貴族令嬢。

 下位の貴族令嬢なら、家庭によっては侍女が少なくて出来る人もいるだろうけど、ローズマリアは無理。

 親にいないものとして扱われていても、そういう意味での虐待はされていないし、カイルが来てからはカイルが全てをしていたから。

 前世が一般人の私だから、着替えやお風呂、買い物や食事は大丈夫だけど、働き口が困るわよね。

 それに、客観的にみてローズマリアは美少女だ。

 絶対、誘拐される。

「はい」

「それを拒むには、貴女が誰かと婚約しておくことが必要なのだけど・・・相手が誰でもいいわけではないのもわかるわね?」

「はい」

 私は・・・
カインを推しだけど、それが恋愛感情かと言われると自信を持って頷けないし、それにカインは孤児だ。

 彼と結婚するには、私が平民になるしかない。

 そんなことをしても、今のレオナルドの様子からしたら、無理矢理愛妾にされるかもしれない。

 まさか、レオナルドがあんなふうになるとは思っていなくて、オズワルド公爵家から逃げさえすれば婚約を避けられると思っていた。

「そうね、とりあえず誰かの婚約者になってくれる人を探しましょう。後々のことを考えれば他国ね。ランドール、すぐに当たってちょうだい」

「大奥様。こちらを」

 セニヨン公爵家の家令ランドールが、サッと封筒をお祖母様に差し出す。

「あら?仕事が早いわね。予想していたのかしら」

「ローズマリアお嬢様が養女になられたときに、念の為にと準備しておりました」

 ランドールは、お祖母様より少し年齢が上くらいの、ナイスミドルだ。

 元々がお祖母様付きの侍従だったそうで、降嫁された時に一緒にセニヨン公爵家に付いてきたのだとか。

 厳しくて、優しくて、頼りになって、すごく優秀な人だ。

 前世的にいうなら、上司にしたい人ナンバーワンというところ。

 お祖母様が、パラパラとその書類に目を通す。

 私はただ黙って待つしかなかった。


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