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9.ほろ苦い失恋話(3)

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「仕方ないなぁ。その次に言われたのが、俺が新入社員の時で、相手は新歓コンパで知り合った、他の会社のOLの子だったんだけどね」

「シンカンコンパってなーに?」

「えーと、そうだな。男の人と女の人が仲良くなるために集まって、お酒の飲み会を開くんだよ。それがコンパって言うの」

「ふーん。お兄ちゃん、お酒飲むんだね」

「あんまり強くないから、少しだけだよ。んでそのコンパで、女の子と連絡先を交換したりするんだけどさ」

「うんうん」

「俺が気になったOLの子に電話とかメールをして、何度か会ったりもしてね。そうしているうちにこの子と付き合いたいと思って、覚悟を決めて告白したんだ」

「なるほどー」

 ミオは目をキラキラさせながら相槌あいづちを打った。

「それで、その人はオーケーしてくれたの?」

「いーや、もう告白したその日に撃沈だよ。すごく気まずそうに『いい人だけど……』って言われてね」

「いい人だけど?」

「だけど『そのままお友達でいましょ』って断られたんだ。それで二人の関係はおしまいだよ」

「え? じゃあ今はお友達じゃないんだ」

「いや、さすがにフラれた女の子と、お友達のままでいられるほどメンタルは強くないよ……」

「んー、ボクにはよく分かんないけど、気まずいってこと?」

「まぁ簡単に言うとそうなるかな。その子にとって俺は、今後は自分に恋心を持ってる男と友達としての付き合いになるわけだろ。そんな複雑な関係なんて続くわけないんだよ」

「そんなものなのかなぁ」

 ミオが首をかしげる。

 そういう反応になるのも無理はないな。ミオくらいの子供なら、友達でいましょうって言われても、額面通りに受け取ってしまうかも知れないし。

「それでもまだ、人を傷つけないように気を遣ってくれただけマシだったんだけどな。ようやく付き合えた彼女は、そんな遠慮なんてない子だったしね」

「お兄ちゃん彼女いたんだ!」

 あ。また余計な事を口走ってしまった。

 案の定、ミオは俺の元カノの件に興味しんしんである。

「ねぇねぇ、その彼女の事も教えてよ。お兄ちゃん」

「まいったなぁ。彼女がいたとは言っても、そのとは一年ちょっとしか続かなかったんだけどね」

「そうなんだ。どうして別れちゃったの?」

 ミオは何も知らないから遠慮無く突っ込んでくるけど、それが一番聞かれたくない内容なんだよなぁ。

「それは〝大人の事情〟だから詳しくは言えないんだけど、その言葉が一番うなされる原因になった、とだけ……」

「そこまで言われると気になるよー」

 ミオが俺の腕をぎゅっと抱いておねだりする。

「ごめんな、これだけは心の中にしまっておきたいんだ」

 そう言って俺は、ミオの頭を優しく撫でた。
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