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26.夏のマリンアクティビティ(7)

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「お客様におかれましては、安全のためにライフジャケットのご着用をお願いしております。今一度、ご自身やお子様の装着をご確認ください」

 ライフジャケットはその名の通り、まさしく自分の命を守るための救命胴衣だ。

 万が一、何らかのアクシデントで海に投げ出されるような事があっても、水に浮き、呼吸ができさえすれば、命が助かる可能性は飛躍的に上がる。

 だからこのホテルの方針としては、いかに安全度が高いマリンアクティビティといえども、ライフジャケットの着用は義務となっているのだ。

 俺たちはバックルがきちんと止められているか、背中などのベルトにねじれが無いかなどを入念にチェックする。

「ミオ、ベルトはきつくない?」

「うん。大丈夫だよー」

「あ。移動中に揺れるかも知れないから、今のうちに酔い止めを飲んでおこうか」

「はーい」

 酔い止めの効果が表れるまで時間がかかるため、ほんとは船に乗る三十分前くらいに飲むのがベストなのだろうが、うっかり忘れてしまっていた。

 まぁ、さっき遊んだペダルボートでさんざん波に揺られても平気だったんだから、ミオはおそらく酔わない体質だと思うのだが、これも念のためだ。

「それでは出港いたします。観覧ポイントまでの所要時間はおよそ十分ほどを予定しておりますが、移動中も海底の様子はご覧になれますので、どうぞ心ゆくまでお楽しみください」

 船長さんによるアナウンスが終わり、ようやくボートが動き出した。

 さすがは原動機付のボートだ、進む速度がペダルボートとはわけが違う。

 さっそく海底を覗いてみると、透き通った水の底に、真っ白でサラッとした砂地が見えた。

 さすがに、この浅さではまだ魚なんていないかな。

 ミオは他の乗客の子供たちと同じように、座席から身を乗り出し、海底を食い入るように見つめている。

 何か目ぼしいものを見つけたら、きっとこの子が教えてくれるだろう。

 それまで俺は、窓の外の景色でも眺めておくとするか。

「ねぇねぇお兄ちゃん」

 船が出発してから五分近く経ったころ。

 海底をじーっと見ていたミオが体を起こし、流れ行く景色を見ながら物思いにふけっていた俺の袖を引っ張る。

「……え? どうかした?」

「この海って何の魚がいるの?」

「んー、何だろうな。パンフレットに何か書いてないか読んでみよっか」

「うん。一緒に読もうー」

 俺はバッグからマリンアクティビティのパンフレットを取り出し、ミオと一緒にグラスボートの項目を探す。

「あ。あったぞ、グラスボート」

「何が書いてあるの?」

「えーと、『佐貴沖島さきのおきしま外海では、美しいサンゴ礁や色とりどりの魚が貴方を待っています。ウミガメに出会えるチャンス!』だってさ」

「ウミガメがいるんだ?」

「そういう触れ込みだから、たぶん見られるなんだろうけど……どこにいるのか場所分かってんのかな?」

「ね。ウミガメもずっと泳いでるんだもんねー」

 ミオはこういう「チャンス」だとか「機会がある」などといった文言には乗せられないタイプなのか、いたって冷静だ。
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