転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第二章

逆らう術無く

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 逃げ道はないらしい。
 嫌なことや危ないことはやりませんからね、と私はデジレ様に釘を刺しておいた。本当に刺せているかはわからない。
「ちょっと忍び込んだりするだけだ、大丈夫だ」
「それ大丈夫じゃないです」
 詳しい話はおいおいしようとデジレ様は仰る。ああ、逆らう術がない。
 ああ、とため息深く。その間に挨拶は終わっていた。
 そして、なんと。
 この耳には意味があるのだという説明が始まっていた。
 さすがにそれは聞いておかないとまずい気がすると、ジゼルちゃんとデジレ様をつついた。
 付け耳。
 犬、猫、うさぎ。ほかにもきつねや狼があるそうで、その同じ耳の方との歓談タイムがある様子。
 初対面の方もいるので気軽に交友できるきっかけにー、って。
 別にそれいらない気遣いだよね!
 新しい出会いは、それは楽しいと思う。けど、下心がなければだと思う。
 ここはあの人とお近づきになりたいとかそういう気持ちが見えてしまう。
 私はうさ耳なのでジゼルちゃんとベルが一緒なので、まだ良い。
 しかし!
 犬耳チーム! お兄様! 殿下! 殿下に犬耳つけてくださいってお願いしたバルトロメ様すごいなとはちょっと思った。
 お兄様は正直、なんで耳をと思っていると思う。殿下は苦笑まじりに、現状を楽しんでいるような。
 次、猫耳チーム! テオ! デジレ様!
 テオがデジレ様に絡まれている……としか見えない。
 そして私はうさ耳チーム。ジゼルちゃんとベルと一緒なんだけど、さらに。
「ご一緒で嬉しいですよ」
 カロン様がいて。私は今、彼に絡まれている。
 帰っていい? うん、無理なのわかってる。
 どうぞこちらに、とエスコートされてしまっては逃げようがない。
 何がお好きですか、とかいつも何をされているのですか、とか。質問攻めになっている。
 私はあいまいに答えつつ深くは踏み込ませないようにガードガード!
「あなたからは何も、尋ねてくださらないのですね」
 私との話は楽しくないですか、と問われる。
「そんなことはありませんよ」
 心躍るものではないとは、思う。
「お互いを知れば、好きになれるとも思いますが」
「……カロン様は私のことが好き、なのですか?」
「はい」
 笑顔で頷かれた。
 ではどこが、と聞けばいいのかな。
 そこに並ぶ言葉に、私が喜ぶことはない気がするけども!
「あなたにも好きになっていただければ嬉しいのですが」
 きっとそれは、カロン様一番の笑みなのだろうけど。
 私は、そういう笑い方は好きじゃないのだよなぁーと思っていた。
 私はどちらかというと、ふと柔らかに不意打ちで笑まれるのが好きなのだ。
 なので、自分をよく見せようと頑張っているような笑みには心揺れない。
 ここはどきっぱりと、ないです! って言いきったほうが良いのかな。
 いやしかし、婚約云々は家から正式にお断りしたし。
「そういったご縁があれば良いですね」
「ええ」
 無いです、と言い切ることもできるけどぼかした。
 それから、見かねたジゼルちゃんが私に声をかけてカロン様から引き離す。
「もう、レティ。あんなに話続けることなんてありませんよ」
「えー、だってなんか上手に区切れなくて」
「それこそカロン様の思うつぼですわ」
 なんで、と問えば。
 こういった会で長時間話を続けるというのは何かしら含むことがあると見られても仕方ない。
 今回は、完全にカロン様がレティに気があるという形とジゼルちゃんは言う。
「気があるのはわかるんだけど、本当にそうなのかわからないよね」
「そうですけど、ここにはカロン様側の方が多いのですよ」
「うん?」
「熱心に口説くカロン様に対してつんとする、悪女というイメージがついてしまいます」
「悪女」
「はい。ここから変な噂を流される可能性も無きにしも、ですよ」
 なるほど。
 しかし、悪女。悪女!
 なんだろうその響き。すごいそわっとするけど私からは程遠いと思う。
「なんにせよ、もうカロン様がレティに絡んでくるのは無理だと思いますけど」
「え、なんで?」
「ご令嬢たちに囲まれたので」
 あれから逃げるのはなかなか難しいと思いますとジゼルちゃんは言う。
「ああ、確かに……」
「でもレティもぼーっとしてちゃだめですよ」
「え?」
 ほら、とジゼルちゃんが視線で示す。
 するとカロン様と同じように、ご令嬢方に囲まれているテオがいた。
 えっ、そんなにもてるの!?
「……何も思いません?」
「……うん」
 うん、と頷いたけどそれは嘘だ。
 私はご令嬢方に囲まれてるテオがいやだなと思った。
 テオが相手にしてないのもわかってるんだけど。社交辞令だってわかってるんだけど。
 それでも、あんまり良い気はしなかった。
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