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プロローグ 『魔の森の試練』で、大きな犬だと思ってフェンリルをペットにして帰ってきました

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やけくそになった私は、それからも、矢印の方にドンドン歩いていった。

でも、歩けど歩けど着かない。数字はまだ90なんだけど……

私はお母様にはめられたと思った。

お母様はいつもこうだ。

この前も「ケーキをここに置いてきたから取ってきなさい」

と言ってこの矢印の機械を渡してくれたのだ。

でも、そのケーキのある場所はとても遠くて次の日に私が着いた時には魔物に食べられた後だった。

お腹いっぱいで寝ていた魔物たちは怒った私がやっつけたけど、食べられたケーキは返ってこなかったのだ。


今回も、食べ物はケーキしか入っていなくてお腹の減った私はそのあたりの食べられそうな草木を食べながら進んだのだ。

庭師のじーちゃんに食べられそうな草木の見分け方は聞いていたし、多分あっていたと思う。

とちゅうでお腹が少し痛くなったけれど、大丈夫なはずだ……



そんな時だ。目の前に大きな犬が現れたのだ。

それは大きな岩ほどもある犬だった。

私よりも遥かに大きい。『魔の森』では犬まで大きくなるみたい。


「うーーーー」
ワンちゃんは私を睨みつけて唸りだしたのだ。

庭師のじーちゃんは犬をしつけるには逃げたら駄目だと言っていたなと私は思い出した。

そして、私もワンちゃんを真似て

「うーーーーー」
と唸りだしたのだ。

でも、次にワンちゃんは大きな口を開けて私を食べようと襲いかかろうとしたのだ。

でも、私の口はあそこまで大きくない。これでは負けるではないか。

こうなったら最後の手段だ。

私はおやゆびをつき出して思いっきり
「めっ」
と言ってやったのだ。

これで私に噛みついてきた犬はいない。

ワンちゃんは最初は抵抗してきたが、私がにらみつけるのをやめないと、ついに首をたれて
私の前に頭を差し出したのだ。

「よいこ、よいこ」
私がなでると

「クーン」
と鳴いてくれた。

その日の夜は私はそのワンちゃんを抱きまくらにして眠った。

とても暖くて寝やすかった。

途中でうなりごえが聞こえたようなきがしたが、
「うるさい」
ってさけんで叩いたら静かになった。

翌朝ワンちゃんをみたら頭に大きなたんこぶこしらえていたんだけど、どうしたんだろう?


次の日は冒険もいい加減に疲れてきたので、ワンちゃんに乗せてもらうことにした。

私を乗せたワンちゃんはとても早かった。


あれよあれよという間に家のお城が見えてきたのだ。


「おい、フェンリルがこちらに向かってくるぞ」
「魔の森の主が何故襲ってくる?」
「直ちにお館様に連絡を」
「お館様は外だ」
「騎士達の大半が出払っているぞ」
「奥様に連絡だ」
なんかお城の騎士たちが大騒ぎしているんだけど。

フェンリルって何だろう? この犬の種類なんだろうか?


「おい、フェンリルの上に誰か乗っているぞ」
「嘘をつくな」
「本当だって」
「何処だよ」
「ほら、背中に」
「本当だ」
「いや、でも小さくないか?」
「子供だぞ」
「まさか、フェンリルが人を攫ったのか」
「いや、あの子はこちらに手を振っているぞ」
「フランお嬢様だ」
「うそ、お嬢様がフェンリルを手懐けられたのか……」

私は大騒ぎしている騎士達の目の前でフェンリルから飛び降りた。

私を迎えてくれた騎士達は驚きの目で私を見ていた。

「皆、迎えてくれてありがとう。料理長はいる? お腹が減ったんだけど、なんでもいいから食べたい。それでこのワンちゃんにも何かあげて」

私の言葉に皆呆れて声も出せないみたいだけど、なんでだろう?



後でお母様に「野生のフェンリルに乗ってきてはいけません」って怒られたけど、疲れたから仕方がないじゃない。

ワンちゃんに乗ってはいけないって始めに言わなかったくせに!

本当にお母様はわがままだ。


「フラン様。出来ましたよ」
料理長は私の目の前に大好きなハンバーグをだしてくれた。

「ありがとう」
私はお礼を言うとフォークをハンバーグにつきさしたのだ。

ま、お犬さんとともだちになれたし、良しとしよう!

「いただきます」
私は大喜びで料理長の作ってくれたピーマンいっぱいのハンバーグにかじりついていたのだ。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話は以前私の書籍『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』に閑話で乗せていた分をリメークしたものです。
ここから少し視点も変えてどんどん書いていくつもりです。
ブックマーク等よろしくお願いします。

『つぎラノ』へのリンクも私の書籍のリンクもこの下10センチくらいの所に載せているのでよろしくお願いします!
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