上 下
4 / 174

4.やめてください!

しおりを挟む

 首輪をつけられた僕は、真っ赤になって震えていた。タオルで体を隠しているけど、恥ずかしすぎる。それなのに、首輪に繋がる鎖を握ったオーフィザン様は、少し楽しそう。

「俺に洗われるのが嫌なら自分で洗え」
「え?」
「そのタオルをとって、自分で洗うんだ」
「……え?」

 タオル、とるの? 嫌だ……体、見られちゃう……

 だけどモタモタしてたら、首輪の鎖を引っ張られた。

「うっ…………や、やめてください……苦しい……」
「早く洗え」
「は、はい……」

 返事をしたら、オーフィザン様は鎖を引くのをやめてくれた。

 体を見られるのは嫌だけど、我慢するしかない……

 タオルを持つ手を緩めると、タオルは床に落ちて、僕の裸の姿があらわになる。

 すごく恥ずかしい。

 だけど、これだけじゃダメなんだ。体を洗わなきゃ……


 震える手で、落ちていた石鹸を拾い、急いで泡立てた。
 こうなったら、泡をいっぱい立てて、泡で体を隠しちゃおうっっ!!

 めちゃくちゃ必死に泡を立てる。なんだか、すごく泡立ちやすい石鹸だ。不思議なくらいモコモコ泡が立つ。

 いっぱい泡を立てて、それを体に塗りつける。体中がもこもこの泡で覆われると、ちょっと落ち着いた。

 やっと体を隠せて一安心!

 あとは洗うだけ。それなのに、オーフィザン様が、僕の首輪の鎖を持ったまま、ゆっくり近づいてきた。

 な、なに……!? なに!? なんで来るの!? また洗われるの? 自分でちゃんと洗ってるのに!?

 怖くて、顔をそむけようとしたけど、鎖を引かれて、無理やり顔を上げさせられる。

「うっ……!」

 な、なに……? 苦しいよ……

 オーフィザン様と、目があった。こんなに近くで見つめられたら、恥ずかしい。

 もうオーフィザン様は、僕の体についている泡がついちゃいそうなくらい、近くにいた。

「俺を見ろ」
「え? は……はい……」

 言われたとおり、オーフィザン様をじっとみつめた。

 だけど手を止めてたら、ちゃんと洗えって言われちゃう。

 注文が多いなあ……やっぱりオーフィザン様、怖い。


 僕は、言われたとおり、泡だらけの手を動かして、体を洗った。

 あと一歩前に出れば、オーフィザン様に触れちゃいそう。それくらいそばで、僕を見下ろしたオーフィザン様は、ニヤニヤ笑っていた。

 この笑顔……なんだか懐かしい。そうだ。一年前、僕を捕まえた時と同じなんだ。

 あの時、僕はお腹が空いてフラフラで、歩くこともままならないような状態だった。意識が朦朧としてきて、木になっている柿が見えて、無我夢中で走った。

 もう死んじゃうんじゃないかってくらいの状態だったのに、食べ物を見たら我を忘れて、その木に登っていた。

 そして、やっと手が届いて、久しぶりに甘い果物にかじりつけると思ったら、いきなり弾丸が飛んできたんだ。
 お城の方から、銃を持った人たちが何人も走ってきて、僕は必死に逃げた。
 後ろから何発も弾が飛んできて、怖くて堪らなかった。
 弾はほとんど外れたけど、いくつかは肩や足、腕をかすめて行って、血を流しながら、僕は逃げた。

 もう走れなくて、倒れそうになった時、背後から飛んできた、見えない鎖に縛られたんだ。

 振り返ったら、走って来る真っ黒い人影が見えて、僕は、あの人に殺されるんだって思った。

 僕は怯えていたのに、魔法で僕を捕まえたオーフィザン様は、僕を見下ろして「やっと捕まえた」って言って笑ったんだ。

 そして、住む場所と食事をくれて、仕事もくれた。たまに城で見かけた時、お礼を言おうとしたんだけど、僕は奴隷だし、いつも一緒にいるセリューがすごく怖い目で僕を睨むから、近寄れなかった。



 オーフィザン様の吐く息が、僕の頬に当たる。

 なんだか、まだオーフィザン様に洗われているみたい。だけど、洗っているのは僕の手。

 なんだか寂しいな……なんでだろう?

 目の前のオーフィザン様と、顔をあわせていられない。

 だけど、下を向いたら、叱られてしまった。

「目をそらすな。ちゃんと俺を見ろ」
「……」

 無理だよ……だって、さっきのこと思い出しちゃう。僕、さっきまで、この人の手で洗われていたんだ……

 恥ずかしいのに、触れられた時のことを思い出すと、それだけで体が熱くなる。手を動かしながら、つい、自分の手がオーフィザン様のものだったらと想像しちゃう。

 ……やっぱり、またさっきみたいに洗って欲しい。僕、何考えてるんだ……

 さっき触れてもらった時のこと、忘れられない。こんなことなら、ちゃんと我慢すればよかった。そうしたら、オーフィザン様に洗ってもらえたのに。

 涙目になりながら見上げたオーフィザン様は、意地悪そうに笑っていた。

「今、何を考えていた?」
「え!? な、何も……考えてません!」
「……嘘をつくことは許さないぞ」
「え?」
「次は罰を与える。さあ、話せ。何を考えていた?」
「……」

 言えないよ……そんなこと。言ったら怒るし、今更、触って欲しくなりましたなんて、恥ずかしくて言えない。

 何か言い訳考えなきゃ……

「ああうっっ!!」

 痛い! なんだこれ!! 体に鎖が巻きついてる!

 僕が捕まった時と同じ、オーフィザン様の魔法だ。それに締め上げられて、僕は悲鳴をあげた。

「い、痛っ……あぁっ……!!」
「罰を与えると言っただろう」
「うああっっ! も、申し訳ありません……お、オーフィザン様に洗ってもらえることを考えてました……」
「そうか……」

 僕が答えたことに満足したのか、オーフィザン様は、僕を鎖から解放してくれた。

 安心したのも束の間、すぐに鎖で両方の手首を縛られ、宙に吊るされてしまう。

 足はなんとか床につくけど、痛いし怖いし、考えてることまで知られて、恥ずかしくて、涙が出てくる。

「ひっく……ひっく……」
「よく言えたな……では、褒美として、お前の望みを叶えてやろう」
「え?」

 オーフィザン様が、泡だらけの手で僕の胸に触れる。くるくるそこを洗われて、たまに彼の手が、胸の真ん中の尖ったところに触れていく。その度にそこから、全身に甘くて熱いものが広がる。

 まるで、体を焼かれているみたい。オーフィザン様の手が、そこに触れる度に、変な声が出てしまう。

「うっ……うぅ……あぁあ……ぉ、オーフィザン様……」
「なんだ?」
「あ、あの……あの……」

 やめてくださいって言おうと思った。

 それなのに、オーフィザン様の顔を見たら、言えない……

 恥ずかしいのに、やめてって言えなくて、どうしたらいいのか分からない。

 もう泣きそう……

 僕にかけられていた魔法が解かれるまで、誰かに触られても、くすぐったいとしか思わなかった。
 それなのに、今はオーフィザン様に触れられるたびに、体がゾクゾクしてる。

 僕の体、変だ。絶対、オーフィザン様が変な魔法かけたんだ。

「どうした? 望みがあるなら聞いてやるぞ」
「え?」
「褒美だからな。お前の望みを、あと一つだけ叶えてやる」
「あ、あと一つ、ですか?」
「ああ。一つだけだ」
「……」

 あと一つあと一つ……何がいいかな? やめて、にしようかな。

「なんでもいいぞ? やめてくださいと言えばやめてやる」
「え!?」
「性奴隷にするのをやめてください、でもいいぞ」
「……」

 性奴隷、ならなくていいの? でも、そうしたら、もうこんなことはしてもらえないの?

 どうしよう、どうしよう……恥ずかしいし嫌だけど、さっきの感触は捨てがたい。こ、困った……

「さあ、早く言え。言わないなら、俺が勝手に鞭打ち百回に決めるぞ」
「え!? えっと……」
「どうした? やめてください、か?」
「えっとえっと……」
「早く言え」
「あ、あの……気持ちよくしてください!」

 しまったーーーーっっ!! 本当に一番してほしいこと言っちゃったっっ!!

 だってオーフィザン様が急かすから…………ひどいっ!

 真っ赤になる僕を見下ろして、オーフィザン様は笑った。

 そして、僕の胸に触れる。何度も撫で回され、僕には喘ぐことしかできない。

「あ、あ、あぁう…………ひああ……あう!」
「ここを触られると、感じるか?」
「うっっ!」

 彼の手が、僕の胸の先を摘む。指に力を入れられ、その度に股間がジンと熱くなった。

 もうだめだ。触れられるたびに熱が湧いて、僕の体なんか溶けそう。

 感じるってこと、ずっと忘れていた。そのせいか、なんだか苦しくなってきた。

 もう体は泡だらけだ。

 ふわふわした泡から、すごくいい匂いがする……

「おい……もう壊れそうじゃないか。お前は今日から、俺の性奴隷なんだぞ。それなのに、体を洗っただけでビービー泣いていて、これからのことに耐えられるのか?」
「う……う……」

 耐えられるかなんて、分からない。それより、さっきから下半身がむずむずしていて、もどかしい。

 魔法をかけられてから、自慰をしても僕は何も感じなかった。それなのに、今はそこに触れたくてたまらない。だけど、手を拘束されて、吊るされているから触れない。

 い、イきたいのに……

 オーフィザン様は、なにも答えない僕の腰や尻に、丁寧に泡を擦り付けていく。

「聞かれたことには答えろ」
「だって…………だって…………ぁ……あ……っ!」
「……これは本格的に躾けないと使い物にならないな……まだ洗っていないところが残っているぞ」

 パンパンに膨らんだ僕の欲を、オーフィザン様が見下ろす。こんなところ見られるなんて、恥ずかしすぎるっ……!

 すぐに隠したいのに、両手を縛られて吊るされて、僕にできるのは涙目になりながら、オーフィザン様の嬲るような視線に耐えることだけ。

 そして、オーフィザン様は、僕の欲に、つん、と指で触れた。

「あっ…………!!」
「洗っていないのは、ここだ。どうするかな……」
「う…………ぁっ……いやっ…………や、やめてくださっ…………っ!!」

 もう限界なのに、オーフィザン様は僕のそれを、ツンツン指で弄ぶ。

 もう耐えられない……

 腰が蕩けそう。くすぐったくて、じわじわ熱くなって、先っぽから我慢しきれないものトロリと流れて。

 もう辛い……

「あっ……んっ…………っ!! ……ぁぁっ…………ぉっ……オーフィザン……さまぁっ……もうっ……やめ……やめてくださ……っ!! ど、どうか……お慈悲を……お慈悲を……あああっっ!!」
「どうしようか………………まだ初日だ。長く楽しみたい。このあたりで、今日は許してやる」

 オーフィザン様が、僕のそれを強く扱いてくれる。

 解放してくれるんだ。

 我慢なんて、できるはずなくて、散々焦らされて溜まったものが勢いよく溢れていく。

 焼けるような熱が一気に体に広がって、体が溶けちゃいそう。

「う、うえ……ああう……やだよお……ああ……ああ……」

 涙が止まらない。

 先から漏れ出たものは、とめどなく流れて、まるでずっとお漏らししてるみたい。

 床も、僕が出したものでドロドロ。気持ちいいのに、久しぶりの快楽に耐えきれず喘ぐ。

 オーフィザン様は、僕を吊るしていた鎖から解放してくれて、抱っこしてくれた。

「お……おーふぃざん……さま?」
「異常なほど感じやすいな……仕方ない。ゆっくり進めてやる」
「え……」
「行くぞ」

 オーフィザン様が、僕を横抱きにしたまま、歩き出す。

 オーフィザン様の体、すごく気持ちいい。これが気持ちいいっていう感情なんだ。

 いい匂い……夢を見ているみたい。ずっと抱っこされていたい。

 見上げると、すぐそばにオーフィザン様の顔がある。

 やっぱり格好いい。僕がもし、オーフィザン様を好きだったら、今以上にドキドキするのかな……?

 ぼんやりしながら、僕は、オーフィザン様の胸の中で、気を失ってしまった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:61,725pt お気に入り:6,365

長生きするのも悪くない―死ねない僕の日常譚―

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:695pt お気に入り:1

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,346pt お気に入り:625

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:58,688pt お気に入り:3,614

【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

BL / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:2,842

実は私、転生者です。 ~俺と霖とキネセンと

BL / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:1

【完結】妹にあげるわ。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:161,242pt お気に入り:3,764

処理中です...