誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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39.怖い気がする……

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 フュイアルさんが扉を開こうとすると、まだ鍵も開けてないのに、それは外から勢いよく開かれる。

 飛び込んできたのは、やっぱりオーイレールだ。鍵は魔法で勝手に開けたらしい。
 フュイアルさん、怖い顔してるけど、オーイレールは全く気にしてない。フュイアルさんの横をすり抜け、後ろにいた僕のほうに走ってくる。

「お邪魔しまーす!! あ! いた!! トラシュ!! よかったー。無事だったか!! 昨日お好み焼き食べずに消えるから、心配したぞ!!」
「心配って……だから来たのか?」
「ん? 当然だろ? 元気でよかった」
「……」

 微笑んで、本当に安心したように、オーイレールが笑う。その目がなんとなく怖くて、僕はすぐに目をそらすのに、そいつは僕の顔を覗き込んでくる。

「どうした? フュイアルにひどいことされたなら言えよ!」
「別に……」
「そうか? ほら! お好み焼き、持ってきてやったぞ!!」

 彼は、ずっと抱えていた大きな風呂敷包みを、ダイニングテーブルに下ろした。
 その中から出て来たのは、いくつもの弁当箱で、中にはオーイレールがいつも作る焼きそばや、職場でバーベキューする時の焼肉が詰まっていた。僕が食べ損なったお好み焼きも、ちゃんとある。

「これ……」
「トラシュ、お好み焼き、すげえ楽しみにしてたじゃん。みんなで作ってきた!! 他にもいろいろあるから食え!! あっためてやる!!」
「え? あ、オーイレール!」
「電子レンジどこだよー? マヨネーズあるかー?」

 勝手にキッチンに入り、勝手に皿にお好み焼きを盛って電子レンジに突っ込んで、冷蔵庫を開けて中のマヨネーズを見つけるオーイレール。他の料理も、次々皿に盛っている。

 いつもまるでモデルルームのように整然と片付けられているキッチンにズカズカと侵入されて、フュイアルさんはかなり怒ってるみたいだけど、やっぱりオーイレールは全く気づいてない。

「オーイレール。そろそろいい加減にしろ」
「おーっ!! 何だこれ爆発したぞ!!」
「お前何チンしたんだ!? おいっ! なんで電子レンジがドロドロになってるんだ!?」

 キッチンからは黒い煙が上がって、それを発生させているレンジには、絶対食べ物には見えない謎のドロドロしたものが飛び散っている。絶対あれ、弁当箱に入っていたものじゃない。一体何をチンしたんだ。
 ピカピカだったキッチンが、焦げた匂いでいっぱいになって、フュイアルさんは本気でキレてるみたい。
 だけどオーイレールは、それでも全く気にしていない。「タオルどこだー?」なんて言いながら笑っている。

 そんな二人を遠目に眺めているヴァルアテアは、さっきフュイアルさんが持ってきた、変な生クリーム入りホットミルクを飲んでしまう。

「……なんだこれは…………?」
「さっきフュイアルさんが、僕に持ってきた、変な生クリーム入りホットミルク」

 僕が答えると、ヴァルアテアはめちゃくちゃ嫌そうな顔をした。

「……先に言え……」
「だって、勝手に飲んじゃうから。なんともないの?」
「俺は魔族だからな……だが、気分が悪い……」

 全く影響がないというわけではないらしく、ヴァルアテアはずっと口元を押さえている。僕がコーヒーを差し出すと、まだ結構熱いのにもかかわらず、一気に飲み干してしまった。

「……フュイアルは、これをお前に飲ませたのか?」
「僕は飲んでないよ。フュイアルさんにはいつも騙されてるし……ねえ……」
「なんだ?」
「……お前たち、フュイアルさんに言われて、僕のこと監視してるのか?」
「監視? ああ……フュイアルがそう言ったのか?」
「そうだよ! ……もう近づくな!!」
「確かにそんなことを言われたが、誰も聞いていない。安心しろ」
「え?」
「主従関係があるわけじゃない。ただ、魔物からトラシュの街を守りたいから協力しろと頼まれただけだ」
「……」

 信用していいのか? 確かにこいつらに何かされたことはない。

 ヴァルアテアが嘘をつくのを見たことないし、ドロドロになった電子レンジで弁当箱の中のものを温めようとして、フュイアルさんに取り上げられているオーイレールが、あの人に従っているようにも見えない。しかも今度は冷蔵庫から出したマヨネーズぶちまけられて、フュイアルさんはすでにちょっと泣きそう。オーイレールはどうやら朝食を作ると意気込んでいるようだけど、朝食の代わりに、もう二度とあのキッチンではご飯を作れなくなりそうだ。オーイレールは、そんなこと全く気にしていないようだけど。

 主従関係はなさそうだけど……オーイレールを信じるのも、ちょっと怖い気がする……
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