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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-

-第三章二十四節 激怒の副隊長と隠密帰り道と人間を辞めた者-

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__グググッ!!…パッ!…


「ッ!…クッ!!…」


__チャキッ!!…


「ッ!…はあぁ~…ったく!…しょうがねぇなぁ?…」


もはや怒りに我を忘れた様子で剣を振り!…それをマサツグが止めたところで

動きを制限すると、副隊長は更に怒り出す!…そしてマサツグから剣を振り払う

よう抵抗すると、マサツグも怪我をしたくないので直ぐに剣を放し…その振り払う

勢いから急に放された事で副隊長はフラ付き…それでも何とか踏ん張り態勢を

整えて見せると、副隊長はマサツグに対して剣を構える!…そこにはもう邪魔する

者は何だろうと斬ると言う事しか考えて居ない一人のエルフしか立っておらず、

黒ずくめの方も倒れている仲間を抱え上げ…本当に大丈夫なのか?と言った様子で

戸惑いの視線をチラッとマサツグの背中へ向けると、その場を後にするよう

動き出す!…


「……よしッ!…じゃあ撤退するわよ!!…」


__ササササッ………ッ~~~!……


「……これで貴様も反逆者だ!…賊を逃がす手伝いをしたのだからな!?…

……奴らの目的が何だったにせよ!…貴様にはここ償いをして貰う!!…」


「……償い…ねぇ?…」


{……さて、如何しようか?…

このままダラダラと相手するのも面倒だし?…いっそ…}


黒ずくめ達は仲間を回収すると影の中へと消えて行き…暫くしてその音すらも

聞こえなくしてしまうと、辺りを一気に静かにする…その際遠方からは何やら

こちらに向かい騒がしい足音が迫って来る音が聞こえ、その音にマサツグも

何事?…と言った様子で耳を澄ませるのだが!…そんなマサツグの事など御構い

無しに!…副隊長はこれで犯罪者と言った様子でマサツグに声を掛けると、

お縄に着くよう声を掛ける!…だがマサツグもそう言われて捕まる訳にも

行かないので、はぐらかす様に言葉を呟き…守るモノも無くなった事で

逃げようかと考え、まず目の前の副隊長を如何するかで悩み出そうとしていると、

マサツグが考えるよりも先に副隊長が動き出す!…


「ハアアアァァァ!!!…」


__ッ!!…フォンッ!!…ザスウゥン!!!…


「ッ!?…あっぶね!!…」


「ッ!!…逃がさん!!!」


マサツグに向かって行くよう剣を振り被ると、掛け声を上げては真っ直ぐに

間合いを詰めて剣を振り下ろし!…マサツグもそれを見た所で咄嗟に横へ

避けるよう回避し!…その際振り下ろした剣からシロのカマイタチに似た

何かが射出されるのを見ると、少しばかり動揺する!…そこで改めて副隊長の

持っている剣が魔剣の類だと言う事を理解すると、真剣になるよう身構え!…

副隊長も逃がさないとばかりに!…追い掛けるよう今度は横薙ぎにマサツグへ

向かい剣を振るうと、マサツグは瞬時にシロを捕まえてはしゃがみ出す!…


__ガッシ!…スッ!!…フォンッ!!…ザスウゥン!!!…


「ッ!?…ご、ご主人様!?…」


「スマン、シロ!!…俺のお腹にくっ付いててくれ!!…

その方が安全だから!!」


「ッ!…おのれちょこまかと!!…

その幼女の心配もいつまでして居られるか見ものだな!!…」


マサツグがシロを掴まえてしゃがんだ際、シロは突如掴まれた事で驚きの

様相を露わにし!…マサツグもいきなり掴んだ事謝罪するようシロに声を

掛けると、自身の腹に移動するよう声を掛ける!…その際副隊長も

マサツグに対して更に苛立ちを覚えると、煽る様にシロの事を口にし!…

それにはマサツグもカチンと来た様子で!…シロを抱える様にしてアイテム

ポーチから抱っこ紐を取り出すと、いつもの逆襷掛けをし始める!…


__カチンッ!……バッ!…シュルルル!…キュッ!!…


「ッ!…あれ?…あれれ?…」


「……シロ?…ちょっとだけ我慢しててくれよ?…

今このお姉ちゃんを!…」


__ギロッ!…ッ!?…


「……ちょっと恥ずかしい格好にして縛っちゃうから!!…」


もはや慣れた手付きで瞬時に逆襷掛けをすると、シロと自身の体を固定し!…

シロはシロで縛られた事に気が付いては手を放し!…自身の体がくっ付居たよう

落ちない事に驚きを覚えると、これは一体?…と言った様子でマサツグに

問い掛けるよう顔を見上げる。するとそこに有ったのは若干怒りを覚えている

マサツグの表情で、マサツグはシロに対して我慢するよう声を掛けては頭を

撫で…だがそのマサツグの視線は副隊長に向けられており、牽制をするよう

睨み続けていると、その視線に副隊長も思わずたじろぎ!…マサツグもゆっくり

立ち上がって戦闘態勢を整えると、その手に縄を持っては縛ると宣言する!…

当然これを聞いた副隊長は戸惑った反応を見せるのだが、直ぐにハッと笑い!…

マサツグに対して剣を突き付け!…挑発するよう声を掛けると、また先手を

打つよう動こうとする!…しかし!…


「……ハッ!!…面白い事言うな?…

さすが知恵を付けただけの猿と言った所か?…だが甘く見られたものだ!…

エルヴンナイツの副隊長を務める私を!!…甘く見るな!…」


__バッ!!…シュルルル!!…バシィ!!…


「ッ!?…なっ!?…」


副隊長はマサツグに対して馬鹿にするな!と言った様子で声を荒げ、その手に

持って居る魔剣で三度斬り掛かろうとするのだが!…マサツグはその攻撃を

予期して居た様子で隣を駆け抜け回避し!…そして通り過ぎる際副隊長の両手を

瞬時に持って居た縄で縛って見せると、副隊長の動きを再び制限する!…そして

やられた方も何をされたのか分かっていない様子で戸惑うと、ただただその

縛られた両手に目をやり!…マサツグはすかさずそのまま全体を縛りに掛かり!…

まるでその手の危ない者向けの亀甲縛りをすると、副隊長の完全拘束する!…


__シュルルルル!…ギュギュッ!!!…グイッ!!…キュキュキュッキュ!…


「ッ!!…な、何だこれはあぁぁぁ!!!…」


まるで降伏させるよう両足首から縛って膝立ちで股を開かせ!…胴体を

亀甲縛りに!…最初に縛った両腕は頭上を経由するよう後ろへ回し!…

そのまま両足首を固定している縄に括り付けると、それはそれは厭らしい

ポーズで縛ってしまう!…当然そんな恰好で縛られた副隊長は顔を真っ赤に

すると、羞恥に震えた様子で声を上げ!…マサツグもやり切った様子で

額の汗を拭い!…仕事終えたよう一息吐いて安堵すると、同時に自身の

刹那が切れた事にも気が付く。


「…ふぅ!…一丁上がり!!……あっ…今刹那が終わった。」


__ジタバタジタバタ!!…ジタバタジタバタ!!…


「クッ!!…か、固い!…全然緩まらない!!…

…おい解け!!…卑怯だぞ!!…」


__シュルッ!…スタッ!……ギュッ!…


そうしてもはやダルマ状態に近い副隊長はまだ諦め切れない様子で藻掻く

のだが!…幾ら藻掻いた所で縄は解けず!…ただ自身の体力だけが無駄に

消耗されて行くと、マサツグに文句を言う!…しかしその文句を言った所で

マサツグからして見れば正当防衛な訳で…当然聞き入れる様子もなく!…

シロの抱っこ紐を解いて自室に戻る用意を整えると、振り返っては逆に

文句を言う!…


「…は?…卑怯?…卑怯はどっちなんだよ?…

丸腰の相手に剣を振りかざして威嚇し?…

挙句の果てに何の罪も無い幼女まで斬ろうとする!…

ただこっちは言う事を聞かなかったから制止させただけだぜ?…

礼を言われる筋は有れど…文句を言われる筋は無い!…」


「ッ!?…」


「……おまけに?…

剣を持って居ながらも丸腰の相手に拘束されたとか!…

何なら相手も武器を持って居たのなら話は別だがぁ?…

丸腰の相手に!?…それも自分は武器を持っていたにも関わらず!?…

その相手に辱しめられるよう縛られたとか!!…

口が裂けても言えないなぁ?…

もっと言うならプライドが許さねぇだろぉなぁ~??」


「ッ!?!?…ッ~~~~~~~!!!!…」


反省を促すよう副隊長をそのままにする方向で、マサツグは再度説教を

する様に…何なら呆れた様子で文句を言い出すと、副隊長の落ち度だと

話し出す!…この時自分達の事を正当防衛と話すと、改めて状況を

突き付ける様に話し!…それを聞いて副隊長はショックを受け!…

マサツグを睨む様な視線を向けると、マサツグは更に煽るよう副隊長の

プライドを傷つける!…その際今の自分の姿を確認させるよう!…

と言い聞かせ!…当然

それを聞かされて副隊長は更に顔を赤らめ!…更に目に涙を溜めて今にも

爆発せん勢いで言葉を押し殺して居ると、辺りが一層騒がしくなる!…


__カシャカシャカシャカシャ!!…


「ッ!…あいつ等も居なくなった事で妙な魔法も無くなったってか?…

じゃあ…そろそろお暇するか!…」


「ッ!?…お、おい待て!!…」


「安心しろ!…言ってる間に助けが来るだろうさ!…

…まぁ…アンタの状態を見て如何思うかは別だが?…」


「ッ!…ご主人様!!」


恐らくこちらの異常に気が付いたのだろうその足音は明らかにグリーヴの音で!…

慌しく走って居る音が聞こえて来ると、マサツグもあの黒ずくめ達の魔法が

解けたと理解し…自分達も面倒事は御免と言った様子でその場を後にしようと

すると、待った!が掛かる。言わずもがなあの副隊長が呼び止めたのだが、

マサツグは知らないとばかりに置いて行く気満々で!…直ぐに助かるとだけ

声を掛けてはその場を後にしようとし、シロも急ぐようマサツグの事を呼ぶと、

二人は本当に副隊長を放置してその場を後にする!…


__タッタッタッタッタッ!…


「ッ!!…あっ!…おい待て!!…ッ~~~~!!!!…

この恨みは絶対に忘れないからなあぁぁぁぁ!!!!」


「……最後の最後まで元気だな…まぁいい!…

俺達も部屋に戻ろう!…もう十分だろ?…」


「ッ!…はいです!」


マサツグ達が副隊長を置き去りにする際、副隊長は最後にマサツグ達へ向けて

恨み節を叫び!…マサツグもそれを聞いて若干驚いた様子で…元気が有り

余って居ると言った様子で言葉を呟くと、自分達が寝て居た部屋へと向かう!…

その際シロに満足したかどうかについて尋ねると、シロは元気に手を上げて

返事をし!…また帰り道も影を伝い!…副隊長のお陰か警備が手薄になって

居るのを歩いて帰ると、案の定ここでマサツグのパッシブスキルが発動する…


__コッ…コッ…コッ…コッ……


「……ふあぁ~…あぁ…ご主人様ぁ?…」


「……イカン!…

調子に乗って出て来たは良いモノの帰り道が分からん!…

完全初見と言うか…基本俺建物の道を覚えるのが…

何て言ってる場合じゃない!…

近くに居る衛兵にワザワザ道を聞く訳には行かないし!…」


マサツグのパッシブスキル…それは方向音痴!…いつもの様に出て来たは

良いモノの建物の構造を知らない訳で、自分達の寝て居た部屋への帰り道が

何処なのか全く分かって居ない!…これにはシロも再度眠そうに欠伸を

してはマサツグに声を掛け…マサツグもこれには不味い!と…若干冷や汗を

掻いた様子で宮殿内を歩き回っていると、色々思考を駆け巡らせる!…

この時思わず近くに居る衛兵に声を掛けようと考えたりもするのだが、

勿論怪しまれるので出来る訳もなく!…ただ彷徨うようシロの手を引いて

歩き、必死に自身の記憶の糸を手繰り道を進んでいると、ここで救世主が

現れる!…


「……チョイとそこ行くお兄さん!…何処をお探しで?…」


「ッ!…え?…その声は?……ッ!?…」


「……ちょっと動向が気になって来て見れば!…

まぁた愉快な事を仕出かしてくれたわね?…」


まるで最初から付けていた様に…マサツグの背後から突如軽快に何者かが

声を掛けると、マサツグもその声に反応し!…その際マサツグはその声に

聞き覚えがあり!…確認するようその場で振り返り正体を確認すると、

そこにはいつもの出で立ちで仁王立ちするロディの姿が有った!…そして

ロディもマサツグが振り向いた事で笑って見せると、最初から尾行して

居たと話し!…この時同時に面白かったと感想を口にし始め!…見ていて

飽きない♪と言った様子で言葉を漏らしていると、マサツグも安堵した

様子でロディの名前を呼ぶ!…


「ロ、ロディ!!……ちゃん!…」


「ッ!…はぁ~い♪…まぁ若干引っ掛かりのある間は置いといて…

帰りたいんでしょ?…部屋に!…ついて来て!…」


ロディの事をマサツグはちゃん付けで呼ぶのだが、若干忘れて居た様子で

間を開け…ロディも呼ばれた事でマサツグに笑顔で手を振って返事をし、

この時自分も疑問を持った様子で言葉を口にするのだが…まぁ気にしないと

言ってはマサツグの悩みに答える。そして案内するとマサツグに答えると、

付いて来る様に手をクイっとやって見せ!…その様子にマサツグも本当に

安堵した様子で、ロディの事を褒めてはシロに付いて来るよう声を掛けると、

そこである事に気が付く。


「ッ!…さすギル!!…頼りになるぜ!!……シロ?…ッ!…」


「うぅ~ん……」


「…あははは…悪いシロ…ほら、背中…」


それはシロが返事をしないと言う事で、マサツグは気になった様子でシロの方へ

振り返り…そこでもう限界なのかシロが眠い目を擦っている様子を見つけ…

マサツグはその様子を見るなり自分のせいだと理解すると、シロに謝っては

しゃがんでシロをおんぶする…その際シロを呼ぶ様にマサツグが声を掛けると、

シロは眠そうにしながらもマサツグの背中にしがみ付き…マサツグも落とさない

ようしっかりとシロを抱え!…改めてロディの案内のもと部屋へと歩き出すと、

衛兵達の目を掻い潜りながらの潜入任務スニーキングミッション?…を始める。


__スススス!……


「……ロディちゃん一体どんな歩き方してるの!?…

俺みたいに幻影コートを着ているのならまだしも!…

アンタパンツ一丁だよな?…」


「ッ?…え?…いやこれ位余裕よ?…

だってすり足で移動すれは極力音は立たないし……

何なら足の指だけで移動も出来るわよ?…ほら?…」


__すぃ~~……


「ッ!?!?…いや怖ぇよ!!!…

てか何!?…そのド〇みたいな移動方!?…」


ロディが斥候として動くと安全を確保し…それに付いて行くようマサツグが

シロをおんぶしながら続いていると、ふとロディの動きの良さ?…に疑問を

持ち出す。確かに身に着けている物はパンツだけなのであまり音は立たない

のだろうが…普段歩いている時の音はブ〇リーして居る為、更にマサツグは

疑問を持ち…思わずロディに如何やって動いているのか?について尋ねると、

ロディは不思議そうに振り返っては摺り足と答える。その際余裕と答えては

更にこんな事も出来ると、歩く事無く爪先の力だけで移動して見せ!…

まるでホバー移動して居る様な動きを見せるロディの後ろ姿に!…マサツグも

驚いた反応を見せると、某・モ〇ルスーツの名前を出してはツッコミを入れる!…

さてそんなこんなで次々に衛兵達の目を掻い潜ると、徐々に自分達の部屋へと

近付き!…それと同時に辺りは更に騒がしく!…やはり賊が侵入した!と警告が

入ったのか部屋の前まで辿り着くと、そこには客人を警護する為の衛兵達が

設けられていた!…


「……ッ!…マサツグちゃんタンマ!…」


「ッ!…如何し……ッ!…」


「……何で急にこんな…一体何か有ったのか?…」


最期の角を曲がって自室の部屋前に出ようとする際…ロディが先に安全確認を

するようその先の様子に目を向けると、マサツグへ止まるよう腕を突き出す。

そんなロディの行動にマサツグも戸惑った様子で足を止めては、何事かと

尋ねようとするのだが…ロディは説明するより見せた方が早いと…マサツグに

見せるよう突き出した腕の方で人差し指を立てると、突く様に動かしては先の

光景を見る様にやって見せる。そしてそれを見てマサツグも不思議そうに

反応をすると、顔を覗かせる様に角から先の様子を確認するのだが…そこには

ロディが待つ様に言った理由があり!…部屋の前で警備をしている衛兵達も

一体何が起きたのか分かって居ない様子で話しては、辺りに対して警戒をして

居た!…

「……聞いた話だと賊が出たらしい!…この前の件と言い…

最近活発になって来てるな!…

もしかするとこちらの方にも来るかもしれない!…

…噂だとダークだとか?…」


「ッ!?…ダーク!?…宮殿にまで来るのか!?…

…本当に奴らは何を考えているんだ?…」


「さぁな?…奴らの考える事等我々には到底理解出来ない…

まぁ…理解等したくもないがな?…とにかく今晩だけだ…

今晩だけ凌げば我々も休息を…」


この時まだ副隊長があのポーズで捕まって居た事は伝わっていないのか、

あくまでもただ賊が出たと言う話しかしておらず…その正体も不明と…

一応噂でダークエルフ達の仕業と出回っている様子で話を続けていると、

宮殿内にダークエルフが現れた事についてその衛兵の相方が驚く!…

まるで今まで一度としてなかった事に驚いた様子で反応していると、

そのダークエルフ達の目的について疑問を持ち!…だが当然疑問を持った

所でその理由を分かる訳がなく!…ただ考えたくも無いと言った様子で

言葉を漏らし警備に戻ると、今晩だけと口にする。そしてそんな様子を

見てロディも不味いと言った様子で顔を顰めると、打開策を考えるのだが…

その際マサツグの方へチラッとだけ視線を向け…ある事をして居るのに目が

行くと、ロディはマサツグの名前を呼んでは何をして居るかについて尋ねる。


「……不味いわね…このままだと部屋に戻れないじゃない!…

トイレに行っていたとしても言い訳が通るか?…

いや怪しいわね?…それでも外に出ていたって事がバレて怪しまれる!…

何か打開策は……ッ?…マサツグちゃん?…」


「……これ…使えないですか?…」


ロディがマサツグに視線を向けた際、一体何をして居たのか?と言うと…そこには

自身のアイテムポーチを漁っているマサツグの姿が有り…そして何かを見つけた

様子で目をパッと見開いて見せると、マサツグはそのアイテムを取り出しては

ロディに使えないか?と差し出す。その差し出したアイテムは手の平サイズの

麻袋に包まれては、口を固く紐で縛って有り!…そしてその袋にはアイテム名が

キッチリと!…何なら取扱注意とばかりにデンジャーマークも付いており!…

名前にはネムリテングダケの粉末と表記されて有るのをロディが目にすると、

驚いた反応を見せる!…


「……ッ!…これって!…」


「…ネムリテングダケの粉末…

…とある屋敷に潜入した際使えると思って…

道具屋で仕入れておいたんです…」


「……貴方トンデモナイ物を持ってるわね?…一応これ劇薬指定品よ?…

一応専用ジョブで無いと手に入れられない様になって居る筈…

…まぁこの際如何でも良いわ!…ナイスよ!……

このまま袋ごと投げちゃっても良いけど…二次災害を生みかねないわね…

……よし!…」


ロディはまさかここでこんな物が出て来るとは思っても居なかった様子で、

マサツグとアイテムを交互に見るとただただ驚いた反応を見せており!…

マサツグはマサツグで仕入れた経緯を話し、これなら打開出来ると言った

様子でロディに袋を手渡すと、ロディはそれを受け取るなり改めて如何

言った物かを話し出す。その際ロディは驚いた様子のままそのネムリテング

ダケの粉末を劇薬と説明し!…まるで薬剤師の資格が無いと買えないと

言った説明を続けて話し!…一体何処で売って居たのか?…と思わず

聞きそうになるのだが、今それ所では無いと言った様子で考えると、

出そうになった言葉を飲み込む!…そして改めて見張りに付いて居る衛兵達に

視線を向けると、使用方法について悩み出すのだが…そこはロディに考えが

ある様で、少し悩んだ後すぐに思い付いた様子で袋の紐を開け出すと、

そこから中身を取り出す!…


__スッ…ファサッ…


「……ッ!…マサツグちゃん?…少しの間呼吸を止めて?…

もし吸引したらあっと言う間に夢の国だからね?…」


「ッ!…了解!…」


__クルッ!…スウウゥゥ~!!……グッ!…


ロディは袋の紐を解いた後、中身を掌に出そうとするのだが…その前にハッと

気付いた様子で、マサツグの方へ振り返るなり誤って粉末を吸い込まないよう

注意をすると、マサツグも気が付いた様子で返事をする。そしてそっぽを向く

よう粉末から顔を背けると、マサツグは大きく息を吸い込み!…そして準備

出来たとばかりにロディの方へ振り返り!…サムズアップをして見せると、

ロディもそれを確認した所で行動に出る!…


「よし!…行くわよぉ!…」


__パサッ!……クルッ!…スウウゥゥ~!!……ブフウウウゥゥゥゥ!!!…


軽く気合を入れるよう掛け声を掛けると、袋の中身を掌にぶちまけ!…そして

すかさずそっぽを向いては大きく息を吸い!…息を止めるのではなくその

警備している衛兵達目掛けて粉末ごと息を吹き掛けると、まるで睡眠ブレスを

吐くよう粉末を拡散させる!…その際驚くのはそのロディの肺活量で、一応その

見張りをしている衛兵達との距離は約5mあるのだが!…そこまで余裕で届く

とばかりに!…その粉末が月明かりに照らされてキラキラと光り!…衛兵達の

居る辺りで残留すると、その突然の出来事に衛兵達は戸惑い出す!…


「……ッ!?…な!?…何だ!?…この青いきらきら…は?…」


__カシャン!…バタッ!…カランカラン!!…


「ッ!?…お、おい!…どうし…ッ…」


__カシャン!…バタッ!…カランカラン!!…


突如自分達の目の前に青く光を反射する何かが漂い出すと、当然衛兵達は

何事!?…と言った様子で慌てるのだが…そんな慌てる時間も無いと

ばかりに!…ネムリテングダケの粉末を吸引した事で衛兵の一人が意識を

失った様に膝から折れて眠りに就くと、その倒れた相方にもう一人の

衛兵が驚き出す!…そしてその衛兵に起きるよう声を掛けようとする

のだが、そのもう一人の衛兵も直ぐに眠りに就いた様子で膝から折れ…

二人が倒れた所で槍は音を立てて転がり…近くに他の衛兵は居ないのか

辺り一帯が静かになると、ロディは二人とも寝た所で上手く行ったと

ばかりに笑みを浮かべる!…


「…good nightおやすみ♥…良い夢を!…

…さて、もう息を吸っても大丈夫よ!…

ただ部屋に入る少し手前でもう一回息を止めないとだけど?…」


「……ぷはぁ!……はあぁ…

…それよりも…アンタの肺気量如何なってんだよ…」


「ッ!…え?…これ位ギルドマスターとして当然…」


「いやいや!…ギルマスだからってレベルじゃねぇだろ!?…

アンタ完全に人間止めてるから!!…」


眠りに就いた衛兵達を見て気取る様におやすみと声を掛け…マサツグの方に

振り返ってもう大丈夫と返事をすると、同時に部屋へ戻る際の注意点を話す…

それはまだ残留しているかもしれないネムリテングダケの粉末の事で、

マサツグもロディの言葉を聞いて一度大きく息を吐き出すと、落ち着く様に

呼吸をする。その際ロディのやって見せたロングブレスについてツッコミを

入れ出すと、ロディはマサツグからのツッコミに対して若干戸惑い!…

キョトンとした様子でこれ位余裕と…また何か可笑しな事でもしたかしら?…

とばかりにカマトトぶると、マサツグは更にツッコミを入れる!…さて

こうして無事に部屋へ戻れる状態にすると、部屋に入る少し手前で大きく

息を吸い込み!…そして息を止めて部屋の前へと移動し、衛兵達を起こす事

無く部屋へ辿り着くと、マサツグとロディは部屋に入るなりホッと胸を

撫で下ろす…


__ギイィィ…ガタンッ!……はあぁ~…


「…いやぁ…私も改めてこの宮殿内を見て回ったけど…

大冒険だったわね?…久々に興奮しちゃった!…」


「……途中ヒヤヒヤでしたけどね?…

とにかくもう寝ましょう…色々疲れた……どっこいしょ!…

シロもグッスリだし…」


「ッ!…そうね?…私も朝早くから女王様とお話だし?……

所でマサツグちゃん……貴方…ダークエルフ達の所に行くの?…」


部屋に入って扉を閉め…ロディが予め点けて置いたのか小さなランプの

明かりを目にすると、安堵と同時にドッと疲労感が押し寄せて来る!…

その一方でロディは楽しかったとばかりに燥いでいると、まるで現役

時代に戻ったよう乙女の様に内股で喜び!…マサツグはマサツグで

やはり疲れたと零し始め…自身に用意されたベッドの元へ移動すると、

おんぶして居たシロをベッドに降ろす…この時シロは幸せそうな様子で

寝顔を見せており、マサツグもその表情を見て眠りに就こうとする

のだが…ロディが最後にある事を言い出した事で眠りに就けず…

その意味についてロディに尋ね出すと、ロディはある意味深な事を

言い出す…


「ッ!…え?…あ、あぁ…そうですね…でも如何して?…

確かまだ話しては?…」


「フフフ!…私を誰だと思ってるの?…

…でも気を付けた方が良いわよ?…うろ覚えで申し訳ないけど…

彼女達の居る場所はとても厄介な場所で…

熟練の冒険者でも簡単に命を落としてしまう…そんな場所だから…」


「ッ!?…え!?…」


「まぁマサツグちゃんなら大丈夫だと思うわ?…

ただ大人数で行く事はお勧めしない!…これだけ言っておくわ!

じゃ、おやすみぃ~!…」


「えぇ!?…いやちょっと待って!!……はあぁ~…

ログアウトしてるし…もういいや…また明日聞こう…」


ロディが話し出したのはマサツグ達の次の目的についてで、それを聞かれた

事にマサツグが返事をすると同時に戸惑う!…そしてその話をしたかどうかに

ついて尋ねると、ロディは笑いながら知っている理由について話し出し!…

次にスッと自身の知って居る事について続けて話すと、マサツグはその話を

聞くなり更に戸惑いようを露にする!…何故ならロディが話し出したのは

そのダークエルフ達の居場所についての話なのだが、結構危険だと言う話を

サラッとマサツグに説明し!…当然そんな話を聞かされた事でマサツグは

途端に狼狽え!…その危険な理由について質問しようとするが、ロディは

マサツグの話を聞く事無くゲームをログアウトする…ある意味で貴重な運営の

ログアウト場面に出くわした訳なのだが、マサツグにとっては如何でも良くて!…

だが幾ら頭を抱えた所で答えは返った来ず!…マサツグも諦めた様子で後日

話を聞く事を決めると、今日の所はログアウトするのであった。

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