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第一章
第3話 異世界商店
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「ここいらは終わった。次の下水に行くぞ」
「ええ!? 次も下水なんですか?」
ルガさんのまさかの言葉に愕然とした。もしかして、汚れ仕事って全部下水関係なのかな?
「仕方ないだろ。下水くらいしか冒険者がきたがらないところがないんだからな」
そういうことか、言ってみれば冒険者がやらない仕事って言うのが汚れ仕事ってことだな。仕事を選ぶなんてこの世界の冒険者はいい身分の人たちみたいだな。
「げっ! クレイジーラットじゃねえか。別の道に行くか」
「え? 何か違うんですか?」
ルガさんが前方の目の赤いネズミを見て声をもらす。ネズミにバレないように小声になってるな。
「あいつはな。ネズミの上位種で凶暴なんだ。人を見たら襲ってくるからな。避けて通るのが常識だ」
ため息をついて引き返し始めるルガさん。仕方なく僕も引き返すと背後からネズミの声が聞こえてきた。
「ルガさん! バレたみたい!」
「なに!? 仕方ねえ。始末するぞ」
僕と同じく木の棒を構えるルガさん。倒したネズミよりも二回り大きいネズミが赤い目を輝かせて駆けてくる。
「噛みつきに気をつけろ。偶に毒もちがいるからな」
「き、気をつけます」
まさかの毒もち。ゲームみたいに毒消しの薬なんてないから気をつけないと。
そんな悠長に話しているとネズミが勢いよく噛みついてくる。
木の棒でガードするとネズミは素早く後退していく。
「頭がいい。さっきまでのネズミと全然違う」
ただただ逃げようとするネズミと違ってこいつには戦う意思がある。
「おら! ネズミ野郎。こっちを見ろ!」
ネズミを警戒しているとルガさんが壁を木の棒で叩きだして声をあげる。大きな音に驚いてネズミがルガさんへと振り返った。
チャンスだ!
「はっ!」
隙を逃さず木の棒を振り下ろす。鋭く入った木の棒がネズミに当たると絶命していった。
一撃で終わった?
ドロップアイテムが出て、ネズミの死骸は消えていく。しっかり倒せたみたいだ。
「やるじゃねえかハヤト! おめえ、かなり才能あるんじゃねえか?」
「はは、そうですかね?」
ルガさんに褒められて照れ隠しに頭を掻く。大人になってからあんまり褒められたことないから新鮮だな。
『レベルが上がりました』
女性の声が聞こえてきてレベルアップを告げられる。レベルが上がって喜んでいると更に声が聞こえてくる。
『3レベルになったので異世界商店が解放されました』
「へ?」
異世界商店? なんだろうそれ?
「ん? どうしたハヤト」
「あ、いや。新しいスキルが解放されたみたいで」
「あぁ? 新しいスキル? スキルがそんなに簡単に手に入るわけないだろ?」
首を傾げるルガさんに答えると呆れられてしまった。やっぱり、スキルが簡単に手に入ることはないみたいだ。アシストが仕事しすぎだな~。
「しかし、クレイジーラットの尻尾が手に入ったのは僥倖。これで酒くらいは買えるかもな」
ルガさんはネズミの尻尾を摘まんで嬉しそうにしてる。魔石もあるから結構高いみたいだな。それにしてもクレイジーラットの尻尾は別の尻尾と違って赤いな。区別しやすいな。
「よし、あれでラストだな」
「こっちも終わりです」
別の依頼の詰まりとネズミの討伐を終えた。結局全部下水の仕事だったから早く終わったな。
「こんな感じで明日からやってくれ」
「分かりました」
「ふむ、ハヤトならすぐに路地から出られるな。別にわしらと違って逃げているわけじゃないだろ?」
ルガさんに答えると意味深なことを言って来た。ルガさん達は逃げてるの?
「わしらは好きで路上生活をしているわけじゃないんだぞ。金貸しから逃げているものや、命を狙われているもの、それぞれの事情を背負っとるんだ」
「そ、そうだったんですね」
僕は異世界に来てすぐに狩られてしまっただけだ。何か僕に出来ることはないかな?
「何か出来ることはないか? なんて考えておるならやめておけ」
「え?」
「まったく……ハヤト。おめえ田舎者だろ?」
考えていることを見抜かれて呆れた声をかけられる。ルガさんはため息と共に言葉を紡いだ。
「世界は甘くねえってことだ。助けられねえもんもいるんだよ。それが俺達だ。覚えておけ」
「は、はい……」
話し終わるとルガさんは下水の出口の梯子を上っていく。助けられない者達か……本当にそうなのかな? ルガさんはそういうけど、ルガさん達は僕を仲間に入れてくれて助けてくれた。矛盾してるよな~。
「おお、早かったな」
「へい。二人で済ませましたので早く終わりました」
ギルドに帰ってきて若者に依頼達成を告げる。報告をするのはいいけど、どうやって確認するんだろう? 討伐は尻尾の数でわかるけど、掃除とかは分からないよな~。
「ネズミの討伐証明の尻尾と依頼書です」
「おう」
ネズミの尻尾と羊皮紙を手渡すルガさん。若者は受けとると羊皮紙に手をかざしてまるでパッドをスライドするように横に手を動かしている。ステータスのウィンドウみたいなものが出てるのかもしれないな。
「確かに全部達成してるな。おまけにクレイジーラットを倒したんだな」
「へい、魔石も換金できますか?」
「おう。いい仕事するな。すぐに持ってくる」
若者はそういって魔石をもってギルドに入って行く。しばらくすると皮袋を持って戻ってきた。
「ほれ、銅貨5枚だ。それとこれはおまけだ」
「え?」
「いい仕事したやつにはそれなりのものを、マスターの教えだ」
銅貨と酒の入った瓶を手渡して嬉しそうに微笑む若者。思わずルガさんと顔を見合ってしまった。
「ははは、俺の名前はヴェインだ。まだまだ若輩だがいつかはマスターになる男だ」
ヴェインと名乗ってきた若者、すぐに僕らも顔を見合って名乗ると嬉しそうに頷いた。人懐っこい人だな。
「普通はクレイジーラットに出会ったら逃げるもんだからな。それを討伐して戻ってくるなんて大したもんだ。冒険者でもないのによくやってくれた」
「は、はぁ」
「あいつらはな。偶に下水から出てきて寝てる赤ん坊を傷つけたりと凶暴なんだ。一匹でも多く退治しないといけない魔物なんだ。これからも見かけたら始末してくれ。じゃあ、またな」
一方的にヴェインはそう話してギルドの中へと戻っていった。
僕とルガさんはポカンとその様子を見ていた。
「酒代が浮いたな」
ルガさんはそういって小屋へと戻るようで歩き出す。僕もついて歩きながら気になっていたステータスを確認する。
伊勢川 隼人 (イセガワ ハヤト)
LV 3
【体力】30
【魔力】18
【筋力】20
【生命力】18
【命中性】20
【敏捷性】21
【知力】15
【精神力】18
スキル
【学習アシスト】【ブラリカ語】【軽装】【棒術】【剣術】
異世界商店 0G
【入店】【退店】
異世界商店が追加されてる。入店と退店という項目があるけど、どうやったらいいんだろうか?
そういえば、ヴェインがスライドさせたりしてたな。ってことはステータスウィンドウは触れるってことだよね。
と、試しにステータスウィンドウの入店を触ってみた。すると、
「わっ!?」
ブンッ! という音と共に眼前に大きなウィンドウが現れる。人がすっぽり入るほどの大きさだ。
「ど、どうした?」
ルガさんを驚かせてしまった。僕は首をブンブン振って答えるとため息をついて小屋へと歩きなおしてくれた。
さて、どうしよう?
「ええ!? 次も下水なんですか?」
ルガさんのまさかの言葉に愕然とした。もしかして、汚れ仕事って全部下水関係なのかな?
「仕方ないだろ。下水くらいしか冒険者がきたがらないところがないんだからな」
そういうことか、言ってみれば冒険者がやらない仕事って言うのが汚れ仕事ってことだな。仕事を選ぶなんてこの世界の冒険者はいい身分の人たちみたいだな。
「げっ! クレイジーラットじゃねえか。別の道に行くか」
「え? 何か違うんですか?」
ルガさんが前方の目の赤いネズミを見て声をもらす。ネズミにバレないように小声になってるな。
「あいつはな。ネズミの上位種で凶暴なんだ。人を見たら襲ってくるからな。避けて通るのが常識だ」
ため息をついて引き返し始めるルガさん。仕方なく僕も引き返すと背後からネズミの声が聞こえてきた。
「ルガさん! バレたみたい!」
「なに!? 仕方ねえ。始末するぞ」
僕と同じく木の棒を構えるルガさん。倒したネズミよりも二回り大きいネズミが赤い目を輝かせて駆けてくる。
「噛みつきに気をつけろ。偶に毒もちがいるからな」
「き、気をつけます」
まさかの毒もち。ゲームみたいに毒消しの薬なんてないから気をつけないと。
そんな悠長に話しているとネズミが勢いよく噛みついてくる。
木の棒でガードするとネズミは素早く後退していく。
「頭がいい。さっきまでのネズミと全然違う」
ただただ逃げようとするネズミと違ってこいつには戦う意思がある。
「おら! ネズミ野郎。こっちを見ろ!」
ネズミを警戒しているとルガさんが壁を木の棒で叩きだして声をあげる。大きな音に驚いてネズミがルガさんへと振り返った。
チャンスだ!
「はっ!」
隙を逃さず木の棒を振り下ろす。鋭く入った木の棒がネズミに当たると絶命していった。
一撃で終わった?
ドロップアイテムが出て、ネズミの死骸は消えていく。しっかり倒せたみたいだ。
「やるじゃねえかハヤト! おめえ、かなり才能あるんじゃねえか?」
「はは、そうですかね?」
ルガさんに褒められて照れ隠しに頭を掻く。大人になってからあんまり褒められたことないから新鮮だな。
『レベルが上がりました』
女性の声が聞こえてきてレベルアップを告げられる。レベルが上がって喜んでいると更に声が聞こえてくる。
『3レベルになったので異世界商店が解放されました』
「へ?」
異世界商店? なんだろうそれ?
「ん? どうしたハヤト」
「あ、いや。新しいスキルが解放されたみたいで」
「あぁ? 新しいスキル? スキルがそんなに簡単に手に入るわけないだろ?」
首を傾げるルガさんに答えると呆れられてしまった。やっぱり、スキルが簡単に手に入ることはないみたいだ。アシストが仕事しすぎだな~。
「しかし、クレイジーラットの尻尾が手に入ったのは僥倖。これで酒くらいは買えるかもな」
ルガさんはネズミの尻尾を摘まんで嬉しそうにしてる。魔石もあるから結構高いみたいだな。それにしてもクレイジーラットの尻尾は別の尻尾と違って赤いな。区別しやすいな。
「よし、あれでラストだな」
「こっちも終わりです」
別の依頼の詰まりとネズミの討伐を終えた。結局全部下水の仕事だったから早く終わったな。
「こんな感じで明日からやってくれ」
「分かりました」
「ふむ、ハヤトならすぐに路地から出られるな。別にわしらと違って逃げているわけじゃないだろ?」
ルガさんに答えると意味深なことを言って来た。ルガさん達は逃げてるの?
「わしらは好きで路上生活をしているわけじゃないんだぞ。金貸しから逃げているものや、命を狙われているもの、それぞれの事情を背負っとるんだ」
「そ、そうだったんですね」
僕は異世界に来てすぐに狩られてしまっただけだ。何か僕に出来ることはないかな?
「何か出来ることはないか? なんて考えておるならやめておけ」
「え?」
「まったく……ハヤト。おめえ田舎者だろ?」
考えていることを見抜かれて呆れた声をかけられる。ルガさんはため息と共に言葉を紡いだ。
「世界は甘くねえってことだ。助けられねえもんもいるんだよ。それが俺達だ。覚えておけ」
「は、はい……」
話し終わるとルガさんは下水の出口の梯子を上っていく。助けられない者達か……本当にそうなのかな? ルガさんはそういうけど、ルガさん達は僕を仲間に入れてくれて助けてくれた。矛盾してるよな~。
「おお、早かったな」
「へい。二人で済ませましたので早く終わりました」
ギルドに帰ってきて若者に依頼達成を告げる。報告をするのはいいけど、どうやって確認するんだろう? 討伐は尻尾の数でわかるけど、掃除とかは分からないよな~。
「ネズミの討伐証明の尻尾と依頼書です」
「おう」
ネズミの尻尾と羊皮紙を手渡すルガさん。若者は受けとると羊皮紙に手をかざしてまるでパッドをスライドするように横に手を動かしている。ステータスのウィンドウみたいなものが出てるのかもしれないな。
「確かに全部達成してるな。おまけにクレイジーラットを倒したんだな」
「へい、魔石も換金できますか?」
「おう。いい仕事するな。すぐに持ってくる」
若者はそういって魔石をもってギルドに入って行く。しばらくすると皮袋を持って戻ってきた。
「ほれ、銅貨5枚だ。それとこれはおまけだ」
「え?」
「いい仕事したやつにはそれなりのものを、マスターの教えだ」
銅貨と酒の入った瓶を手渡して嬉しそうに微笑む若者。思わずルガさんと顔を見合ってしまった。
「ははは、俺の名前はヴェインだ。まだまだ若輩だがいつかはマスターになる男だ」
ヴェインと名乗ってきた若者、すぐに僕らも顔を見合って名乗ると嬉しそうに頷いた。人懐っこい人だな。
「普通はクレイジーラットに出会ったら逃げるもんだからな。それを討伐して戻ってくるなんて大したもんだ。冒険者でもないのによくやってくれた」
「は、はぁ」
「あいつらはな。偶に下水から出てきて寝てる赤ん坊を傷つけたりと凶暴なんだ。一匹でも多く退治しないといけない魔物なんだ。これからも見かけたら始末してくれ。じゃあ、またな」
一方的にヴェインはそう話してギルドの中へと戻っていった。
僕とルガさんはポカンとその様子を見ていた。
「酒代が浮いたな」
ルガさんはそういって小屋へと戻るようで歩き出す。僕もついて歩きながら気になっていたステータスを確認する。
伊勢川 隼人 (イセガワ ハヤト)
LV 3
【体力】30
【魔力】18
【筋力】20
【生命力】18
【命中性】20
【敏捷性】21
【知力】15
【精神力】18
スキル
【学習アシスト】【ブラリカ語】【軽装】【棒術】【剣術】
異世界商店 0G
【入店】【退店】
異世界商店が追加されてる。入店と退店という項目があるけど、どうやったらいいんだろうか?
そういえば、ヴェインがスライドさせたりしてたな。ってことはステータスウィンドウは触れるってことだよね。
と、試しにステータスウィンドウの入店を触ってみた。すると、
「わっ!?」
ブンッ! という音と共に眼前に大きなウィンドウが現れる。人がすっぽり入るほどの大きさだ。
「ど、どうした?」
ルガさんを驚かせてしまった。僕は首をブンブン振って答えるとため息をついて小屋へと歩きなおしてくれた。
さて、どうしよう?
応援ありがとうございます!
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