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43 モヤモヤ
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「そうか。逃げやがったのか!」
「ふっかけて、悪かったな」
浅葱と朧の言ったことを妖たちは、言葉のまま受け取り、青鬼と八咫烏の見物へと戻って行った。
「オッチャンの白々しい台詞を鵜呑みにした?」
「その様ですね。相変わらず、単純な奴らで助かったでござりますぞ」
佐久夜も妖たちが、自分たちから興味を無くしたことに、ホッと胸を撫で下ろした。京平は、幼子にお姫様抱っこという不名誉な状態になっていた。
人魂の中心で、青鬼と八咫烏が激しくぶつかり合い、周りの人魂を蹴散らし輪から無数飛び散って行く。
飛び散った赤い人魂は、野次っている妖たちに捕まっては、喰われ、捕まっては、喰われと消えていった。
「浅葱どん。赤い人魂が、どんどん食べられていくんだけど?」
「そうですね。これもまた運命。全ての魂が、輪廻出来るわけじゃないでございますぞ」
喰われた人魂は、妖の糧となる。平然と語る浅葱だが、その解答に佐久夜は釈然とできなかった。
「浅葱。言葉を選ぶにゃ。佐久夜にとって、人魂であっても、同じ人間として思ってるにゃ。佐久夜、ここは黄泉の世界にゃ。輪廻に列ぶは、未練を残した魂だけにゃ」
「失礼したでございます、佐久夜さま。」
佐久夜は、顔を左右に振った。青鬼と八咫烏の戦いは、飛び交う野次の中、白熱して行く。その間も幾つもの人魂が、宙を舞い喰われて消えて行く。
「違う、あの中には俺たちの様なここに来てしまった魂もあるんだろう!」
我慢出来ずに、佐久夜は大きな声を発してしまった。
「人間?」
「おい、人間が紛れ込んでいるぞ!」
「探せ!俺たちが喰ってやる!」
朧は、風呂敷の中から、人形を二枚取り出した。
「浅葱!」
「任されたでござりますぞ」
朧は、人形を放り投げると、大きく瞳を開いた。浅葱は、抱いていた京平から手を離し、地面を蹴って人形を掴み、人魂を二個掴みとる。
合わせた様に、朧が幻術で霞を出し、佐久夜たちを妖達の視界から外した。
地面に落とされた京平は、ゴチンと頭を地面にぶつけた。
「ンガッ」
佐久夜は、慌てて京平を支え、口を手のひらで抑え込んだ。
「それそれそれそれ」
浅葱が、陽気な掛け声と共に、人魂を人形に押し込み、八つ手で仰ぎ飛ばして行く。
「それそれそれそれ」
浅葱が、八つ手で仰ぎ、霞も風で流される。
「あそこだ!」
「人間だ!人間だ!」
「俺が、喰ってやる!どけ!邪魔だ!」
妖たちが、怒声を上げながら、霞の流れて行く方向を向いて人形を追いかけていった。
人魂が押し付けられた人形は、浅葱が起こした風に乗って、ヒラヒラと遠くに飛んでいく。
「今のうち、ここから離れるにゃ!」
浅葱も戻ってくると、京平を再び抱き上げて、走り出す。佐久夜も、朱丸と一緒に朧を追いかけ、その場を後にした。
青鬼と八咫烏は、騒ぎの中、脇目を向けることなく戦い続けていた。
輪を囲む妖たちも、少しずつ戻ってきて、やんや、やんやと野次を飛ばし、祭りは続いていった。
「ふっかけて、悪かったな」
浅葱と朧の言ったことを妖たちは、言葉のまま受け取り、青鬼と八咫烏の見物へと戻って行った。
「オッチャンの白々しい台詞を鵜呑みにした?」
「その様ですね。相変わらず、単純な奴らで助かったでござりますぞ」
佐久夜も妖たちが、自分たちから興味を無くしたことに、ホッと胸を撫で下ろした。京平は、幼子にお姫様抱っこという不名誉な状態になっていた。
人魂の中心で、青鬼と八咫烏が激しくぶつかり合い、周りの人魂を蹴散らし輪から無数飛び散って行く。
飛び散った赤い人魂は、野次っている妖たちに捕まっては、喰われ、捕まっては、喰われと消えていった。
「浅葱どん。赤い人魂が、どんどん食べられていくんだけど?」
「そうですね。これもまた運命。全ての魂が、輪廻出来るわけじゃないでございますぞ」
喰われた人魂は、妖の糧となる。平然と語る浅葱だが、その解答に佐久夜は釈然とできなかった。
「浅葱。言葉を選ぶにゃ。佐久夜にとって、人魂であっても、同じ人間として思ってるにゃ。佐久夜、ここは黄泉の世界にゃ。輪廻に列ぶは、未練を残した魂だけにゃ」
「失礼したでございます、佐久夜さま。」
佐久夜は、顔を左右に振った。青鬼と八咫烏の戦いは、飛び交う野次の中、白熱して行く。その間も幾つもの人魂が、宙を舞い喰われて消えて行く。
「違う、あの中には俺たちの様なここに来てしまった魂もあるんだろう!」
我慢出来ずに、佐久夜は大きな声を発してしまった。
「人間?」
「おい、人間が紛れ込んでいるぞ!」
「探せ!俺たちが喰ってやる!」
朧は、風呂敷の中から、人形を二枚取り出した。
「浅葱!」
「任されたでござりますぞ」
朧は、人形を放り投げると、大きく瞳を開いた。浅葱は、抱いていた京平から手を離し、地面を蹴って人形を掴み、人魂を二個掴みとる。
合わせた様に、朧が幻術で霞を出し、佐久夜たちを妖達の視界から外した。
地面に落とされた京平は、ゴチンと頭を地面にぶつけた。
「ンガッ」
佐久夜は、慌てて京平を支え、口を手のひらで抑え込んだ。
「それそれそれそれ」
浅葱が、陽気な掛け声と共に、人魂を人形に押し込み、八つ手で仰ぎ飛ばして行く。
「それそれそれそれ」
浅葱が、八つ手で仰ぎ、霞も風で流される。
「あそこだ!」
「人間だ!人間だ!」
「俺が、喰ってやる!どけ!邪魔だ!」
妖たちが、怒声を上げながら、霞の流れて行く方向を向いて人形を追いかけていった。
人魂が押し付けられた人形は、浅葱が起こした風に乗って、ヒラヒラと遠くに飛んでいく。
「今のうち、ここから離れるにゃ!」
浅葱も戻ってくると、京平を再び抱き上げて、走り出す。佐久夜も、朱丸と一緒に朧を追いかけ、その場を後にした。
青鬼と八咫烏は、騒ぎの中、脇目を向けることなく戦い続けていた。
輪を囲む妖たちも、少しずつ戻ってきて、やんや、やんやと野次を飛ばし、祭りは続いていった。
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