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一緒に居たいだけなのに

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テストまで一週間、中間テストは三日間。十日もシンヤとろくに過ごせないなんて嫌だ。隔日でもいいから家に行きたい。一日目はダメだったから、明日適当に言いくるめてやろう。

「ただいまー……」

「おかえりヒロ、勉強しなさいよ?」

「……分かってるよ」

「うん、いい子。頑張ってね」

行きの電車と、昼食中と、帰りの電車。シンヤと話せたのは合計一時間にも満たない、寂しくて死にそうだ。

「別に……エロいことさせて欲しい訳じゃない……ただ、もう少し一緒に…………もっと、話したい……」

机に座って教科書とノートを広げ、とりあえず課題だけでもやらなければとシャーペンを握ったが、集中出来ない。

「ヒロー、ちょっと」

トントンと扉が叩かれる。母だ。

「何? 勉強中なんだけど」

「ちゃんとやってるのね、シンヤくんの影響?」

「違う……」

母は部屋の外から僕の机を見て僕がちゃんと勉強していると判断したようだが、まだ課題は一行しか進んでいない。

「……それ何?」

「プリンよ。久しぶりに作ってみたの。甘いもの欲しくなるでしょ?」

「…………ありがとう」

「あんまり根詰めちゃダメよ」

マグカップいっぱいの手作りプリンを受け取り、机に戻る。シャーペンの代わりにスプーンを握り、早めのおやつタイム。

「美味し……」

夕飯が出来たと呼ばれるまで、課題は半ページしか進まなかった。夜もまた勉強だ、このペースでは課題すら終わらないかもしれない。

「ヒロー、起きてる?」

「母さん……ちゃんと勉強してるよ」

扉を開けると一人用の鍋を持った母が立っていた。

「夜中まで勉強してるとお腹空くでしょ? ヒロ、鍋焼きうどん好きよね」

「う、うん……ありがとう母さん」

「頑張ってね」

半人前の鍋焼きうどんを受け取り、机に戻る。甘い味付けがたまらない、勉強もたまにはいいな……



翌朝、僕はシンヤを言いくるめる決意を固めて駅に向かった。

「シンヤくーん」

「ヒロくん♡ おはよーっ♡」

満面の笑みで手を振るシンヤの元へ走り、手を繋いでホームへ。会話は自然とテスト勉強の話になる。

「シンヤくんは課題終わってるの?」

「うん、範囲発表の前からやってたから。課題が邪魔でテスト勉強出来なきゃ元も子もないしね」

「優等生だなぁ……」

「ヒロくんは?」

この時、僕は失念していた。睡眠時間がいつもより短かったから頭が上手く回っていなかったのかもしれない。

「僕はまだまだ。昨日始めたばかりだよ、多くて嫌になっちゃう。でも母さんがおやつとか夜食とか作ってくれてさ、それが美味しくて……やる気出るって言うか、もう逆に集中出来なくて逆に困るって言うかさ~」

「へぇー、ヒロくんのお母さん優しいね」

「世話したがりなだけだよ」

砂糖多めに作られていたプリン、甘く味付けしてあった鍋焼きうどん、美味しい差し入れを思い出す僕の顔は緩んでいただろう。シンヤにはあまり家庭の話をしないようにしようと以前決めたことなんて、頭からすっぽり抜けていた。
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