【本編完結】俺は勇者の付添人なだけなので、皆さんお構いなく(勇者が溺愛してくるんだが……)

第１章 『新感覚☆女の子も男の子も楽しめる乙女ゲーム』ってなんだ？

戦闘パートが良質過ぎる

あれから妹は、乙女ゲームを俺に託して高校の部活の遠征へと旅立っていった。高校生は受験勉強に部活にと、何かと忙しいよな。


そして父は海外に単身赴任中。母は夏期休暇を利用して父に会いに行っている。つまり、自宅には俺一人と言うことだ。こんなにゲームに適した環境があるだろうか？


自室で家庭用の小さなゲーム機の電源を起動する。
滑らかな旋律を奏でる音に、画面にはチェリーブラウンの髪を風に靡かせる女の子。

そして、女の子を中心としてイケメンの顔が映し出された。


妹に嬉々として託された乙女ゲーム『聖女と紋章の騎士』のオープニングが始まる。画面には二つの選択肢が現れて、『Ａパート』『Ｂパート』と出ている。俺は迷わず『Ｂパート』を選んでゲームを進めた。


このゲームは、ゲームをする人に感情移入をしてもらうためなのか、プレイ中は主人公のシルエットが全く出てこない。主人公の容姿についても、ゲームの会話の中に出てこないあたり、とても徹底しているな。


そして、ゲームを進めていった俺は、妹の苦戦しているという戦闘パートに見事に嵌まってしまった。


……なんだこれは、めちゃくちゃ凝ってる。

武器のカスタマイズは何百通りもあるし、装備自体もデザインがカッコイイ。ダンジョンの背景はすごく綺麗だ。
音楽に至っては、戦闘シーンの重低音かつ爽快感が絶妙にマッチした旋律で、もはや神だ。


これは、本当に乙女ゲームか？
その辺に転がっている、ＲＰＧよりも力が入っている。


ストーリーとは関係なく、戦闘だけ楽しめるのも良かった。

魔物も中々に強いから、攻略本を片手に弱点を確認した。武器も魔法属性との相性によって変えると、攻撃力が上がったり、特殊効果が加わったりする。ある程度魔法についても知識が必要とされるみたいだ。

敵を切るだけじゃない面白さが、何ともゲーム好きには堪らない。


さすが、『新感覚☆女の子も男の子も楽しめる乙女ゲーム爆誕！』と謳っているだけのことはある。

男子も十分に楽しめる。戦闘エフェクトもカッコイイ。


俺は戦闘パートに嵌まりまくって、気が付けばストーリー攻略はそっちのけになっていた。


……まあ、主人公のレベルを上げておけば、ストーリーも攻略しやすくなるだろうし……。

最悪、主人公を最強にしておいて妹にストーリーだけ攻略してもらうと言う手がある。


……うん。もう、そうしよう。


大学の友人が帰って来るまでの期間、俺は乙女ゲームの主人公を着々と強くしていったのだった。