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side堀越世良 可愛くてムカつくあいつ

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田中璃央の存在は前から知ってた。

俺は元々男が好きで、女には1ミリも興味ない。けど自分で言うのも何だけど、見た目がいいから女にもモテる。

璃央と初めて会ったのは、大学入学して、高校からつるんでる沖田と真柴に無理やり引っ張られて入ったサークルの新歓だった。
こういう会に出ると、大体俺の外見に惹かれたうるさい女に囲まれんだよな。面倒臭いから表面上は愛想よくするんだけど、そうするとますます騒がれて辟易していた時だった。

「何だよ、お前女の子独り占めしやがってー。俺もそこに座らせろ!」

そんなことを言って、璃央が俺の隣に強引に座って来た。
なんだこいつ、と呆気に取られたけど、正直好みのタイプで内心ラッキーと思った。

璃央は俺より背が低くて、茶色がかった柔らかそうな髪の毛は掻き回してやりたくなったし、大きな目も色白で綺麗な肌も血色のいい唇もエロ可愛くて、『押し倒してぇな』とムラムラした。

けど、璃央はそれきり女の子たちと楽しそうに話し続けていて、

まあそうだよな。こいつが同類とかそんな奇蹟はないよな。あーつまんねぇの。

そう思った。

それから璃央と話す機会はなかった。
あいつとは学部も違うし、バイトばかりしているみたいで殆どサークルに顔出す事もなかったし、その頃の俺は手に入らない遠くの理想より、手に入る手近な現実の方に夢中になってた。大学に入って親にマンションの部屋を与えられて、一人で好き勝手に出来る、っていう解放感でタガが外れた。

俺がゲイだって知った親は俺を実家から追い出したかったみたいで、豪華なマンションも車も、手切れ金みたいなもんだった。けど俺はそれで全然構わなかったし、むしろそっちの方が良かった。家は兄貴が継げばいいし、俺は俺で好きにするから放っておいてくれりゃいい。

俺はゲイ向けのアプリで片っ端から好みのタイプを漁っては、ホテルでヤりまくった。それまで優等生のいい子を演じていたから、その反動でめちゃくちゃヤリまくった。

けど家には連れて行った事はない。アプリで出会うやつらなんて、どんな奴か分かんねぇからな。俺んちが金持ちだって知られて、脅迫されたり面倒なトラブルに巻き込まれたくない。

だからアプリで出会ったやつらとは、ホテルでしかヤッたことはない。
さすがにホテルに行く頻度が高すぎて、同じ大学の奴に見られたみたいで、ちょっと噂になったけど気にしてなかった。

俺がゲイだって知ってる沖田と真柴には、「お前ちょっと落ち着けよ」と呆れられたけど、俺は生活を改める気なんかなかった。

「お前さ、一人に絞れば?カラダだけの関係とかじゃなくて、ちゃんと好きになった相手と普通に付き合えばいいだろ」

真柴にそう言われて、
「別にいいじゃん。気持ち良けりゃいいんだからさ」

なんて答えたけど、本当は好きな相手と付き合えるんなら、それが一番いいのは分かってんだよ。

だけど俺が今まで好きになった奴はみんなノンケで、絶対に俺を好きになんかならなかったんだ。いくら俺がイケメンでも金持ちでも、こればかりはどうにもならない。
だからもう諦めた。

体だけでいいじゃん。タイプの可愛い子とエロいことやって、楽しめばいい。

そんな風に過ごしていた時だった。あの、サークルのバーベキューで久しぶりに璃央と会ったのは。
久々に見る璃央はやっぱり可愛くて、見れば見るほどタイプだった。

肉焼き係の璃央が「お前ら早く食えよ!」なんて言ってるのを見た俺は、そんなに肉は好きじゃないのに璃央を構いたくて、肉を貰いに行った。

焼きすぎて固くなった肉を何とか呑み込んで、もう一回璃央のところに行こうとしたら、松原が俺の噂話をしていた。

ち、うぜぇな、と苛ついたけど璃央は俺を肯定するようなことを言っていて、意外に思うと同時にちょっと嬉しかった。

もしかしたらワンチャンある?

まあ普通に考えて無理だよな。今まで俺が好きになったやつらだって、他人事としては肯定的でも、自分のことになると無理、ってなるやつばかりだったし。

だから、璃央が俺に「どうやったらケツでイケんの?」って聞いて来た時には脳がバグった。

え、こいつ、アナニーでもハマってんの?それとも、もしかして同類?

聞いてもないのに勝手にベラベラ喋り出した璃央が男と付き合ってるって知って、何だよ、もうこいつ人のもんなのか。とちょっとテンションが下がった。でも同時に物凄いチャンスだとも思った。

これ、マジでヤれそう。

璃央のやつ、男とは初めてらしくて何も知らないみたいだし、言いくるめるとすぐにそれを信じる。
何とかいう先輩とのなれそめとか聞かされてる時は、どうでも良過ぎて脳が停止してたけど、早く押し倒したくてたまらなくなった。
だから適当に最後まではやらないとか大嘘ついて、家に連れ込めた時から興奮して半勃ちしてたくらいだ。

そういえば初めて男、家に連れ込んだけど、璃央はよく知らないやつの家にのこのこついて来るほど警戒心も薄いし、能天気で、良く言えば純粋、悪く言えばアホだから、俺は全然心配してなかった。
俺の車やマンションにビビって興奮して騒いでる姿は、マジで笑えたな。

一緒に風呂に入ろうとしたらビビってたけど、ちょっと煽ってやったらすぐムキになってまんまと俺の思惑に嵌まってさ、アホ可愛くてたまんなくなった。

璃央はすごく敏感で、どこを触っても可愛く喘いでいて、めちゃくちゃ昂った。それなのに先輩とはイケなかったなんてな。
まあ先輩もノンケみたいだから、男同士のツボなんか知らないか。

そこでも俺はワンチャン、先輩から奪えんじゃねぇかな、って思ってしまった。
こいつ、快楽に弱いみたいだし、流されやすいし、どうにでも出来そう。

ベッドで璃央の後ろを弄ってやったら、すぐに感じ始めて、もう我慢の限界だった。挿入しようとしたら、さすがに逃げられたけどすぐ押さえ込めたし、ナカに挿れていいところを掻き回してやったら、あっという間に蕩けて可愛い声を上げだしたから、俺も無茶苦茶興奮した。

璃央とのセックスは、今までヤッた誰より気持ち良くて、ヤッてる最中の璃央は最高に可愛かった。

俺はマジでこいつのこと自分のものにしたくなって、体から落としてやろうと璃央に付き纏った。

予想通り、璃央は「ふざけんな!」とか「やめろよ!」なんて口では言うくせに、ちょっと気持ち良くしてやったらすぐ抵抗しなくなって、俺にいいようにされる。
そして、気持ちいいって必死で俺にしがみ付いて、それがものすごく可愛くて堪らなくて、俺はアプリなんか使わなくなった。

だけどそうやって何度も体を繋げて、快感に酔わせてやってるのに、璃央はずっと『先輩』のことばかり口にする。
それがムカつく。

何なんだよ、お前ディルドのサイト見て悩んでたくらい、先輩とのセックスじゃ満足できねぇくせに。
俺ならいつでもお前のことイカせてやれるし、お前だって俺がいいとこ突いてやったら、めちゃくちゃ気持ちいいって蕩けてるくせに。

だったらもう先輩なんかとは別れて、俺とだけヤッてればいいだろ。

クソ面白くねぇ。璃央が可愛いと思えば思うほど、面白くない気持ちが膨らんでいった。
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