エミリオとアリエッタ

柴咲もも

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未成熟な僕等の秘密

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 樹々の合間に見え隠れする街の灯りを、ぼんやりと目で追っていた。ひしめく木の葉をすり抜けて、月の光が雨のように降りそそぐ。川の水がきらきらときらめいて、夜空に瞬く星のようだった。
 帽子を脱いだエミリオが、黄金色の髪に月の光をまとわせて振り返る。川縁の木の前でアリエッタの手を放すと、エミリオは熱を孕んだ碧い瞳でアリエッタを見下ろした。

「好きだ、アリエッタ」

 熱く火照ったアリエッタの両頬を手のひらで包み込み、ぬくもりと感触を確かめるように指先で唇に触れる。頬を包んでいた手のひらが首筋を辿って鎖骨をなぞり、アリエッタの細い肩を撫でた。
 どくどくと心臓が胸を打つ。呼吸に合わせて上下するアリエッタの胸を、エミリオの手のひらが柔らかく包み込んだ。躊躇いがちな指先に軽く胸を揉まれ、アリエッタがびくりと目を瞑る。エミリオがはたと手を止めた。

「ごめん」
「い、いえ……」

 エミリオを拒絶する気なんてアリエッタにはさらさらなかった。ただ、身体中が今までにないほど敏感になっていて、触れられただけで大袈裟に反応してしまった。
 エミリオの手がふたたび胸に触れる。指先から与えられる刺激から少しでも気を逸らしたくて、アリエッタはもう一度エミリオに口付けた。
 舌先で唇のあわいをなぞり、エミリオがそうしたように歯列に舌を這わせていく。たどたどしい舌使いで内側を舐め上げて。息を継いだ瞬間に、ちゅうと舌を吸い返された。

「んっ……ふっ、んむ……」

 かさかさと擦れ合う木の葉の音と、さらさらと流れる川の音。静寂を際立たせるふたつの音に、荒げた吐息の音が混じる。耳の奥でちゅくちゅくと響く粘着質な音が、ふたりの劣情をことさら刺激した。
 エミリオの唇がアリエッタの首筋をたどり、詰め襟を寛げる。震える指先がひとつひとつボタンを外していく。しっとりと汗ばんだアリエッタの白い肌が胸元まであらわになって、月明かりに淡くきらめいた。
 目の前にさらけ出された柔らかな胸の谷間に魅入られて、エミリオはごくりと息を飲んだ。

 初めてキスをしたあのときから、何度想像したことだろう。初めてアリエッタの胸に触れたあのときから、どれほど待ち侘びたことだろう。
 柔らかなふたつのふくらみに直に触れる、そのときを。

 ふっくらとした胸の谷間に顔を埋め、汗ばむ肌に舌を這わす。舌先が感じ取ったわずかな塩気が、エミリオの劣情をさらに煽った。
 熱を持った陰茎ががちがちに反り上がり、トラウザーズの前を押し上げていた。エミリオの意思とは無関係に、アリエッタの太腿に硬くなったエミリオ自身が押し付けられる。
 アリエッタが一際大きな吐息を漏らし、羞恥によるものか快感からくるものか、頬を紅く染めあげてエミリオを見下ろした。
 はち切れんばかりに存在を主張するエミリオ自身に、躊躇いがちに細指が触れる。掻くように撫でられるたびに、エミリオは熱の篭った息を吐いた。
 アリエッタの身体を弄っていた手のひらが背中に回されて、ぎゅうと強く抱き締められる。耳元で押し殺されるあまい吐息がアリエッタを煽る。
 腕のちからが緩んだのを見計らって、アリエッタはしゃがみこみ、エミリオの前を寛げた。
 熱く硬く反り上がった男根を取り出して唇を寄せる。ピンク色の先端をぺろりと舐めると同時に、エミリオの手に頭を押さえられた。

「そういうの、いいから……俺、兄さんじゃないし……無理、しないで……」

 息を荒げて身を屈め、肩を上下させて、少し泣きそうになりながらエミリオは訴えた。
 こんな穢らわしいものを口に出し挿れされるなんて、拷問にも等しいことのはずだ。無理をしてエミリオに尽くそうとするアリエッタのその想いが、嬉しいけれど痛ましく感じられた。

 アリエッタはエミリオを見上げたまま、少しのあいだ動きを止めていたけれど、やがて小さく首を振ると、膝立ちになってエミリオの頬に触れた。
 
「無理なんてしていません。エミリオ様に気持ちよくなっていただきたいから……わたしが、そうしたいから……」

 潤んだ瞳で真っ直ぐにエミリオをみつめて、アリエッタは囁いた。
 ウルバーノに強要されたときは本当に嫌だったけれど、エミリオには少しの嫌悪感もなかった。
 躊躇いに揺れるエミリオの瞳を見上げたまま、先端を濡らす粘液を指先ですくい、裏筋をつとなぞる。

「あッ……」

 弱々しく声をあげ、エミリオは唇を噛み締めた。
 粘液をまとった指先がエミリオの肉棒を包み込む。擦り上げるようにしごかれて、そのたびに甘い吐息が漏れた。
 アリエッタを見下ろすエミリオの瞳に、徐々に熱が灯っていく。ぐっと口元を引き結ぶと、エミリオはアリエッタの手を引いて立ち上がらせた。樹木に背を追い詰めるようにして、貪るようにキスをする。

 これ以上は危険だ、と。エミリオの理性が警告していた。
 これ以上先に進めば、きっと歯止めが効かなくなる。

 けれど、エミリオの意思とは裏腹に、先走った手のひらはアリエッタの秘められた箇所を求め、アリエッタの脇腹を弄るように降っていった。ドレスの裾を捲り、ペチコートを掻き分けて、薄布越しに太腿を撫で上げる。
 ちらりと見れば、アリエッタは恥じらいに身悶えながら翠の瞳を潤ませていた。
 
「エミリオ様……待っ……」

 か細い指先がエミリオの手首に触れて、弱々しい抵抗をみせる。けれど、エミリオの手は止まらなかった。ドロワーズの隙間から指先が滑り込み、アリエッタの薄い下生えを掻き分けて、秘められた箇所に触れる。とろりと蜜を滲ませるその場所に触れられて、アリエッタは我慢できずに声をあげた。

「や、あっ……」

 びくりと全身が震え、股を閉じかけた。けれど、エミリオの指先はなおも念入りに蜜を掻き混ぜて、ついにはアリエッタの硬くなり始めた花芯に触れた。

「んふっ……はっ……」

 声をこらえるだけで精一杯で、アリエッタはもう、何も考えられなくなっていた。焦らすように周りを撫でられるたびに、快感を求めて腰が揺れてしまう。逃げ出してしまいたい気持ちとは裏腹に、無意識にエミリオの指に陰部を擦り付けた。
 婚前の娘がこんな淫らな真似をするなんて恥ずかしいことなのに。いけないことなのに、我慢ができない。
 夢中でエミリオの指先を求めていた最中、思考を惑わせていた薄靄が瞬時に晴れた。
 熱く硬いものがぬるりと内股に滑り込み、アリエッタの身体がびくりと跳ねた。

「大丈夫……挿れたりしないから……アリエッタのこと、感じさせて……」

 エミリオに耳元で吐息混じりに囁かれ、アリエッタはこくりと頷いてエミリオに身を任せた。

「ん……あっ、は……っ」

 しとどに濡れた股の隙間に、硬くなったエミリオが抜き挿しされる。ぬるりと秘裂を擦られるたびに、下腹部の奥が甘く痺れるようだった。
 花芯の先をエミリオが掠める。そのたびに蜜口がきゅんと締まり、アリエッタは太腿を擦り合わせてエミリオを締め付けた。

「……アリエッタ、……アリエッタ……ッ!」

 アリエッタの腰を両手で押さえながら、エミリオが激しく腰を揺さぶる。ぬちぬちと淫猥な音が、月明かりの木立に響いていた。

「あっ、は、……エミ……様ッ、あッ……」

 必死に口を押さえても、声を堪えることなどできなかった。エミリオの身体にしがみつき、首元に顔を埋める。アリエッタのくぐもった喘ぎ声は、エミリオをさらに興奮させた。

「アリエッタ、いくっ……も、イクッ……!!」
「エミリオ様ッ、エミリオ様ッ……!」
「くっ……は、……んああっ!」

 切なげな声をあげるとともに、エミリオはアリエッタの内股に白濁を吐き出した。
 アリエッタを掻き抱く両腕にぎゅうっとちからが籠められる。熱くてどろりとしたものが、アリエッタの太腿を流れて落ちた。

 草の上に崩れ落ちるように座り込んだふたりは、息を荒げたまま、しばらくのあいだ呆然とみつめあっていた。



***


「ごめん、ハンカチ汚れちゃったな」

 衣擦れの音を聞きながら、エミリオがぽつりと溢す。内股を濡らす白濁を拭っていたアリエッタは、顔をあげ、頬を薄らと染めて、小さく首を振った。

「お気になさらないでください」
「今度、新しいの買ってやるから」

 真剣な眼でエミリオが言うものだから、アリエッタはつい、つられて頷いてしまった。
 アリエッタの手を両手でそっと包み込み、エミリオが真摯に告げる。
 
「今日の責任は取るから。絶対に大切にするから」

 祈るように、誓うように呟いて、エミリオはアリエッタを抱き寄せた。エミリオの腕に包まれて、アリエッタはうっとりと目を閉じた。

 あたりはとっぷりと夜の闇に浸かっており、復活祭を祝う歌声が街のどこかで聴こえた気がした。
 フクロウの鳴く声が、遠くの森で響いていた。


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