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帰りは騒がしいみたいです

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短いけど、とんでもなく濃ゆい王宮生活だったな…

今日で一応王宮での仕事は終わりになる


トランクに少ない荷物を詰め込んでいると


「はぁ…
本当にマナが私の元からいなくなるのか…」

「へ…?」


なんだか王子様は昨日から元気がなくて、四六時中私にくっついていた
今も何故かナチュラルに私の部屋にいる

一生会えなくなるわけじゃないんだけど…
まぁ、あれだけ一緒にいると寂しくなるのも分かるかも

でもセバスチャンさん達にも早く会いたい!


「私も馬車でクロムハート家まで送るよ」

「へ…?」


流石に王子様にそんな事してもらうわけにはいかないと思ったけど、有無を言わせないほど圧が強くて断れなかった

馬車乗り場の近くまで行くと…


「マナ!!」

「え…きゃあっ!?」


いきなり目の前から走って来たアルディス様に、抱き締められた


「あ、アルディス様!?」

「はぁ…会いたかった」


えぇ!?
なんでアルディス様がここに…
というより、人前で抱きつくなんて何してんですかね!?


「私がいる事を忘れてるんじゃない?」


ベリッとアルディス様から私を剥がす王子様


「おはようございます殿下
当家の侍女を迎えに来ました
マナを離してもらえますか?」

「おはよう…
わざわざ迎えにまで来るなんて、アルディスって女性に対してそんなに優しかったっけ?」

「俺も日々成長してますからね」


気のせいかな?
この2人笑いあってるけど、雰囲気が悪い気がする

アルディス様達が話していると…


「どうやら俺が送ることはできないみたいだな」


馬車の横からひょいっと顔を出しながら話かけられた


「マ、マテリオールさん…」


そう言えば、行きはマテリオールさんが馬車を走らせてくれてたんだっけ…

隈はまだ多少あるけど、すっかり顔色は良いみたいだ


「マナは…
クロムハート家のアルディス様と恋仲なのか?」

「い、いいえ…」

「じゃあ殿下とは…?」

「とんでもないです!?」


急に何を言い出すんだろうこの人は…


「そうか…
でもあの2人はどう見ても…」

「へ…?」

「いや、余計な事を言ったな
マナも相当鈍いらしい…」


何故か少し呆れたような溜息をつかれた


「マナさん」

「え…?」


名前を呼ばれて振り返ると、今度はサミュエルさんがいた

アルディス様達はさっきから、馬車で送るだの送らないだの言い合いをしていて、全く気づいてないみたい


「この間は謝罪に伺ったのですが、殿下達に追い返されてしまって…
クロムハート家から来ている他の侍女は1ヶ月ほどまだいると聞いていたので、謝罪する機会はいくらでもあると思っていたのですが…
まさかマナさんだけこんなに早く帰ってしまうとは思いませんでした」

「私新人で…
まだ仕事に慣れてないから、2週間ぐらいお試しでって言われてただけなので…」

「そうですか…
改めて、あの日勘違いとはいえマナさんにあの様な手酷い事をしてしまい、申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げるサミュエルさん


「あ…いえ…
勘違いされてもしょうがない部分もあったと言うか…
えっと、私ももう忘れるので、サミュエルさんもあれは忘れて下さい!」


一瞬サミュエルさんは驚いた様に目を見開いていたけど、いきなり私の耳元まで近づいてきて…


“申し訳ありませんが、それは出来ません
あの淫らなスカートの中身が頭に焼きついてしまい、とても忘れられそうにないです”


小声で囁く様に言われた


「なっ!?」

「サミュエル様少し近すぎませんか?」


マテリオールさんはすぐにサミュエルさんと離してくれたけど、私は羞恥で口をパクパクさせていた

もうやだ!
せっかく人が水に流そうとしてるのに、思い出させるような事言ってくるなんて…

やっぱりサミュエルさんは苦手だ


「おや…
まだお話したかったのですが、どうやら殿下達が気づいてしまったようですね…」

「へ…?」


振り返るとすぐ側にアルディス様と王子様がいて…


「なんでマナに変な虫が増えているんだ!?」

「サミュエルは兎も角、マテリオールまでマナと知り合いなんて聞いてないんだけど…」


ひぃいい、何でか分かんないけど、アルディス様も王子様も機嫌が悪いみたい!?


「ふふっ…
私は嫌われているようなので、これで失礼しますね
まぁ、マナさんとはまたすぐに会えると思いますので…」

「へ…?
それってどう言う…」


私はもう会うつもりなんてないんだけど、サミュエルさんは意味深な言葉を残して行ってしまった


「マナ、帰るぞ!」

「きゃっ…!?」


どうやらアルディス様の馬車で帰るみたいだ

グイグイと馬車に押し込められる


「ちょっと、アルディス乱暴すぎないか?」

「これ以上変な奴が出てきたら困りますので、俺達はこれで失礼します」


王子様の呼び止める声も聞かずに、さっさと馬車を走らせるアルディス様

だ、大丈夫かな?
一応この国の王子様なんだけど、無視って不敬罪とかにならないのかな…


帰りの馬車では、だから王宮になんか行かせたくなかったんだとかブツブツ文句を言いながら、アルディス様はずっと私を膝の上に乗せたまま離してくれなかった


“舞踏会が終わったら覚悟しとけよ”


とか怖い事も言ってたけど…

アルディス様も、ヒロインちゃんが出てきたら絶対そんな事言わなくなるはずだ


アルディス様こそ覚悟しててくださいよ!


と心の中で呟きながら、クロムハート家まで帰った















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