苦いイヤホンと、興味ないフリの春
統合が決まり、今の校名で過ごせる最後の一年を迎えた私立汐見ヶ丘高校。旧校舎の端にある放送室には、目立つのが苦手なのに機材の扱いだけは抜群にうまい二年生の力也と、締切も校則もきっちり守りながら、昼休み放送を学校の記憶に残るものへ変えようとする二年生の友香がいた。ほかにも、言葉で場を回す三年生の淑雄、捨てられない物に思い出まで詰め込んでしまう慎乃、学校じゅうの音を集めるのが好きな一年生の弘恭、予算と安全面から放送室に厳しく向き合う生徒会会計の桜香がいる。
ある日、力也は放送室の備品箱から、潮風のせいか少し金属の苦い匂いがする古いイヤホンとICレコーダーを見つける。そこに残っていた昔の録音をきっかけに、六人は昼休み放送を立て直し、文化祭で生放送劇までやろうと走り出す。ところが男子役が足りず、真面目すぎる友香が低い声と所作を作り込み、ついには男装して舞台に立つことになる。笑いと騒ぎの中で距離を縮める二人だったが、文化祭直前には脚本データと録音素材の一部が壊れ、放送は中止寸前に追い込まれる。消えていく校舎、残したい声、言えなかった本音。
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