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第五章 王都でもこいつらは・・・
第97話 タロウはやっぱりタロウでした
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顔をテカテカさせて上機嫌なタロウ。
「俺、この世界へ飛ばされて、ロクな目に遭わなかったけど。
今日初めて、この世界に飛ばされてきて良かったと思えたぜ。
なんか、世界が輝いて見えるくらいだぜ。」
世界が輝いて見えるって、いったいどんなお仕置きをあの金髪巨乳のお姉ちゃんにしたのやら。
まあ、おいらの町じゃ、タロウは若い女の子からキモい男認定されて不遇な立場だからね。
少しでも、気が晴れることがあったのなら良かったよ。
「そっ、喜んでもらえて良かったわ。
じゃあ、ご褒美をあげたのだから、明日もキビキビ働いてもらうわよ。
明日は、もっと荒事になるだろうから覚悟しておいてね。」
「えっ…。」
アルトの物騒な一言に、タロウの浮かれ気分は一気に吹き飛んだみたい。
思わずって感じで、一歩後ずさっていたよ。
「何よ、そんなに警戒しなくても平気よ。
ちゃんと対策はしてあげるから。
とりあえず、今日は帰るわよ。」
臆しているタロウに、ニヤッと笑ったアルトはそう告げてクッころさんの家に戻ることにしたんだ。
粗大ゴミ三体は、広場に放置したままで。
「こうしておけば、『スイーツ団』の連中が気付いて回収するでしょう。
それまでこうしておけば、王都の人達も甘味の値上がりの原因を知ることが出来るでしょう。」
アルトは、『スイーツ団』の悪行を王都の人達に知らしめるのにこいつらを利用するんだって。
********
そして、戻って来たクッころさんのお屋敷。
「これお土産よ、予定よりずいぶん長いことお世話になってるから。
これ、宿代代わりにとっておいて。」
アルトが、今日採って来た『メイプルポット』をごそっとクッころさんの前に積み上げたの。
「これは、とても有り難いですわ。
先日、『シュガーポット』もたくさん分けてもらえて、家人も喜んでおりました。
何でも、最近、甘味料が軒並み値上がりしているそうですね。」
嬉しそうに『メイプルポット』を受け取るクッころさんにアルトは。
「ああ、そのことなんだけど。
心配しないで良いわ、あと数日のうちに甘味料の値段は元に戻るから。
ちょっと、おバカさんがおイタしただけだからね。」
そう話し始めて、『スイーツ団』のことをクッころさんに説明したの。
「まあ、そうでしたの。
けしからん、人達ですわね。
お父様に言って取り締まっていただこうかしら。」
「それはしないで良いわ。
裏では、こっそり脅迫や従わないモノへの営業妨害とか悪さをしてるようだけど。
表向きは値を吊り上げているだけで、無法な行いはしてないからね。
ああいう連中はおバカだけど、悪事を隠すのは得意だから。
足が付くような証拠は残していないと思うわ。
だから、私達に任せておいて。
私のオモチャを盗ったらイヤよ。」
官憲に取り締まらせようかというクッころさんの意見を、もっともらしい理由を付けて断るアルト。
最後に本音が漏れているよ…。
「ところで、そちらのタロウは朝とは少し雰囲気が変わったようですけど、何かございまして。
こう、落ち着きが出て来たと言うか、自信をつけたというか。
なんと、言葉にして良いのかわかりませんが、一皮むけた感じがします。」
「そうね、被っていた皮をむいてもらったのかも知れないわね。」
「?????」
「おい!
クッころさんの前で、なんてことをバラしてくれるんだ!」
クッころさんから見るとタロウが少し大人になったように見えるみたい。
今日何かあったのかと尋ねて来たけど、アルトの答えは意味不明だったよ。
クッころさんも、アルトの答えの意味が分からなかったようで、首を傾げてた。
ただ、タロウには思い当たるフシがあるようで、図星を指されて怒ってたの。
「それは、冗談として。
こいつ、初めて人と剣を交えて勝ったのよ。
見掛け倒しの弱々な相手だったんだけど、強面な相手だったんで臆してたの。
苦手なタイプの相手に勝てたから自信を付けたんじゃないの。
それに、今日はこいつも『メイプルトレント』を一人で狩ったしね。
それで少しは臆病風も振り掃えたんでしょう。」
これも、もっともらしい理由を付けるアルト。
メイプルトレントを相手にした時は、凄い情けない泣き言を言ってたよね、タロウ。
自信を付けたのは、金髪巨乳のお姉ちゃんをお仕置きしてからだと思うけど…。
「まあ、そうでしたの。
やはり修羅場を経験すると、男は一皮むけるのというのは本当でしたのね。
良かったですわね、タロウ。
これからも、精進して人の役に立つように心掛けるのですよ。」
すっかり、アルトの言葉を信じてしまったクッころさん。
タロウのことを大分見直したみたい。
でも、少しは人を疑った方が良いと思うよ。
********
「それで、タロウ、明日からの保険と今日のご褒美を兼ねてこれを渡しておくわ。
これは、あんたへの施しではないから、遠慮なく受け取りなさい。
あんた一人、レベルが低いと明日からは足手まといになりそうだから、その予防のためよ。」
クッころさんとの話が一段落すると、アルトはタロウの前に『生命の欠片』をドンッと積みあげたんだ。
「すっげええええ!
なんだこの『金貨』の山、って、これお金じゃなくてレベルアップの素だっけ。
なあ、この山ほどある『生命の欠片』、ホントにもらっちまって良いのか。」
目の前に現れた『生命の欠片』の山に仰天するタロウがアルトに確認すると。
「何度も言わせないで、あんたが弱いとあんたばかり狙われるでしょう。
あんたを庇いながら闘うのは面倒なのよ。
それ全部取り込めば、レベル二十まで上がるはずよ。
そこまで上げておけば、冒険者ギルドの幹部連中にだって引けを取らないはずだわ。」
アルトは、明日以降、大ぴらに『スイーツ団』への嫌がらせをするつもりなんだって。
バックについてる『冒険者ギルド』の高レベル冒険者が出て来た時に備えて、タロウを強化するんだって。
それを聞かされたタロウ、ブルっと震えて…。
「ええええ、アルト姉さん、本気で冒険者ギルドとやり合うのか?
俺も、戦えと?
無理、無理、無理、あんなヤーさんみたいな連中の集団を前にしたらブルっちまうぜ。
レベルとか、実力とか以前に、ああいう威圧的な顔の奴らは苦手なんだって。」
うん、やっぱりタロウだ。
幾らレベルを上げても、幾ら修羅場を経験しても、ビビりなところは変わらないね。
「つべこべ言ってると、あんたが自信満々な本当の訳をこの娘に教えちゃうわよ。
冒険者ギルドの連中なんてほとんどが見掛け倒し、威嚇するだけしか能がないおバカばっかりよ。
レベル二十まで上げておけば、なんてことないから早く取り込みなさい。」
「しーっ!アルト姉さん、それはダメだって、勘弁してくださいよ。
分かりましたよ、戦えば良いんでしょう、戦えば…。
ホント、レベル二十あれば勝てるんでしょうね。」
アルトが何か言おうとした瞬間、タロウは慌ててアルトの言葉を止めたんだ。
そして、アルトに脅されたタロウは、渋々『生命の欠片』を取り込んでいたよ。
『生命の欠片』って、とっても貴重なものなのに、タロウってば凄い悲壮な顔をしてんの。
よっぽど、冒険者ギルドの連中とやり合うのが嫌なんだね。
「俺、この世界へ飛ばされて、ロクな目に遭わなかったけど。
今日初めて、この世界に飛ばされてきて良かったと思えたぜ。
なんか、世界が輝いて見えるくらいだぜ。」
世界が輝いて見えるって、いったいどんなお仕置きをあの金髪巨乳のお姉ちゃんにしたのやら。
まあ、おいらの町じゃ、タロウは若い女の子からキモい男認定されて不遇な立場だからね。
少しでも、気が晴れることがあったのなら良かったよ。
「そっ、喜んでもらえて良かったわ。
じゃあ、ご褒美をあげたのだから、明日もキビキビ働いてもらうわよ。
明日は、もっと荒事になるだろうから覚悟しておいてね。」
「えっ…。」
アルトの物騒な一言に、タロウの浮かれ気分は一気に吹き飛んだみたい。
思わずって感じで、一歩後ずさっていたよ。
「何よ、そんなに警戒しなくても平気よ。
ちゃんと対策はしてあげるから。
とりあえず、今日は帰るわよ。」
臆しているタロウに、ニヤッと笑ったアルトはそう告げてクッころさんの家に戻ることにしたんだ。
粗大ゴミ三体は、広場に放置したままで。
「こうしておけば、『スイーツ団』の連中が気付いて回収するでしょう。
それまでこうしておけば、王都の人達も甘味の値上がりの原因を知ることが出来るでしょう。」
アルトは、『スイーツ団』の悪行を王都の人達に知らしめるのにこいつらを利用するんだって。
********
そして、戻って来たクッころさんのお屋敷。
「これお土産よ、予定よりずいぶん長いことお世話になってるから。
これ、宿代代わりにとっておいて。」
アルトが、今日採って来た『メイプルポット』をごそっとクッころさんの前に積み上げたの。
「これは、とても有り難いですわ。
先日、『シュガーポット』もたくさん分けてもらえて、家人も喜んでおりました。
何でも、最近、甘味料が軒並み値上がりしているそうですね。」
嬉しそうに『メイプルポット』を受け取るクッころさんにアルトは。
「ああ、そのことなんだけど。
心配しないで良いわ、あと数日のうちに甘味料の値段は元に戻るから。
ちょっと、おバカさんがおイタしただけだからね。」
そう話し始めて、『スイーツ団』のことをクッころさんに説明したの。
「まあ、そうでしたの。
けしからん、人達ですわね。
お父様に言って取り締まっていただこうかしら。」
「それはしないで良いわ。
裏では、こっそり脅迫や従わないモノへの営業妨害とか悪さをしてるようだけど。
表向きは値を吊り上げているだけで、無法な行いはしてないからね。
ああいう連中はおバカだけど、悪事を隠すのは得意だから。
足が付くような証拠は残していないと思うわ。
だから、私達に任せておいて。
私のオモチャを盗ったらイヤよ。」
官憲に取り締まらせようかというクッころさんの意見を、もっともらしい理由を付けて断るアルト。
最後に本音が漏れているよ…。
「ところで、そちらのタロウは朝とは少し雰囲気が変わったようですけど、何かございまして。
こう、落ち着きが出て来たと言うか、自信をつけたというか。
なんと、言葉にして良いのかわかりませんが、一皮むけた感じがします。」
「そうね、被っていた皮をむいてもらったのかも知れないわね。」
「?????」
「おい!
クッころさんの前で、なんてことをバラしてくれるんだ!」
クッころさんから見るとタロウが少し大人になったように見えるみたい。
今日何かあったのかと尋ねて来たけど、アルトの答えは意味不明だったよ。
クッころさんも、アルトの答えの意味が分からなかったようで、首を傾げてた。
ただ、タロウには思い当たるフシがあるようで、図星を指されて怒ってたの。
「それは、冗談として。
こいつ、初めて人と剣を交えて勝ったのよ。
見掛け倒しの弱々な相手だったんだけど、強面な相手だったんで臆してたの。
苦手なタイプの相手に勝てたから自信を付けたんじゃないの。
それに、今日はこいつも『メイプルトレント』を一人で狩ったしね。
それで少しは臆病風も振り掃えたんでしょう。」
これも、もっともらしい理由を付けるアルト。
メイプルトレントを相手にした時は、凄い情けない泣き言を言ってたよね、タロウ。
自信を付けたのは、金髪巨乳のお姉ちゃんをお仕置きしてからだと思うけど…。
「まあ、そうでしたの。
やはり修羅場を経験すると、男は一皮むけるのというのは本当でしたのね。
良かったですわね、タロウ。
これからも、精進して人の役に立つように心掛けるのですよ。」
すっかり、アルトの言葉を信じてしまったクッころさん。
タロウのことを大分見直したみたい。
でも、少しは人を疑った方が良いと思うよ。
********
「それで、タロウ、明日からの保険と今日のご褒美を兼ねてこれを渡しておくわ。
これは、あんたへの施しではないから、遠慮なく受け取りなさい。
あんた一人、レベルが低いと明日からは足手まといになりそうだから、その予防のためよ。」
クッころさんとの話が一段落すると、アルトはタロウの前に『生命の欠片』をドンッと積みあげたんだ。
「すっげええええ!
なんだこの『金貨』の山、って、これお金じゃなくてレベルアップの素だっけ。
なあ、この山ほどある『生命の欠片』、ホントにもらっちまって良いのか。」
目の前に現れた『生命の欠片』の山に仰天するタロウがアルトに確認すると。
「何度も言わせないで、あんたが弱いとあんたばかり狙われるでしょう。
あんたを庇いながら闘うのは面倒なのよ。
それ全部取り込めば、レベル二十まで上がるはずよ。
そこまで上げておけば、冒険者ギルドの幹部連中にだって引けを取らないはずだわ。」
アルトは、明日以降、大ぴらに『スイーツ団』への嫌がらせをするつもりなんだって。
バックについてる『冒険者ギルド』の高レベル冒険者が出て来た時に備えて、タロウを強化するんだって。
それを聞かされたタロウ、ブルっと震えて…。
「ええええ、アルト姉さん、本気で冒険者ギルドとやり合うのか?
俺も、戦えと?
無理、無理、無理、あんなヤーさんみたいな連中の集団を前にしたらブルっちまうぜ。
レベルとか、実力とか以前に、ああいう威圧的な顔の奴らは苦手なんだって。」
うん、やっぱりタロウだ。
幾らレベルを上げても、幾ら修羅場を経験しても、ビビりなところは変わらないね。
「つべこべ言ってると、あんたが自信満々な本当の訳をこの娘に教えちゃうわよ。
冒険者ギルドの連中なんてほとんどが見掛け倒し、威嚇するだけしか能がないおバカばっかりよ。
レベル二十まで上げておけば、なんてことないから早く取り込みなさい。」
「しーっ!アルト姉さん、それはダメだって、勘弁してくださいよ。
分かりましたよ、戦えば良いんでしょう、戦えば…。
ホント、レベル二十あれば勝てるんでしょうね。」
アルトが何か言おうとした瞬間、タロウは慌ててアルトの言葉を止めたんだ。
そして、アルトに脅されたタロウは、渋々『生命の欠片』を取り込んでいたよ。
『生命の欠片』って、とっても貴重なものなのに、タロウってば凄い悲壮な顔をしてんの。
よっぽど、冒険者ギルドの連中とやり合うのが嫌なんだね。
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