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第五章 王都でもこいつらは・・・
第101話 まるでお笑い一座のような…
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夕暮れ時の王都、場所は繫華街にある『スイーツ団』の本拠地の前で。
「お届け物よ!」
そんな声を掛けならが、アルトは、目の前に浮かべた光の玉を扉に放り投げちゃった。
扉に着弾する瞬間、光の玉は眩い閃光を放ち…。
ドカーン! という大音響と共に扉を粉々に破砕したんだ。
「何だ、何だ、カチコミか!」
「何処のどいつだ、こんなナメた真似してくれたんは!」
そんな声をあげながら、建物の中からぞろぞろと出て来たのは如何にも冒険者という風体の若い男が五十人ほど。
どいつもこいつも、チンピラという言葉がお似合いの、雑魚臭がプンプンとする奴らだったよ。
アルトが言うところの、ハッタリだけという言葉が良くお似合いの。
「何よ、せっかく、届け物に来てあげたというのに…。
雑魚ばっかりでお出迎えとは失礼ね。
もう少し、まともな連中出しなさいよ。」
あっ、アルト、それ言っちゃう。
おいら、思っていても口にしなかったのに…。
「何処のどいつかと思ったら、そこの羽虫か?
俺達、『STD四十八(スイーツ団四十八人衆)』を雑魚だなんて、ナメた口を叩くのは。
この場で、握り潰してやろうか。」
「全くだ、『スイーツ団』の中核を担う俺達、『STD四十八』を雑魚だなんて赦せねえぜ。」
こんなのが中核って、『スイーツ団』って実は捨て駒の集団?
『STD四十八』って、四十八人もいれば、もはやその他大勢だよね。
おいらが、『STD四十八』を眺めながら、そんな事を考えていると。
「アッハッハッハ!
こいつらマジか!
人前で、『STD四十八』なんて、良く大声で名乗れるな!
おっかしいの!」
タロウが、お腹を抱えて笑い出したんだ。
「タロウ、何がそんなにおかしいの?」
おいらが尋ねると、タロウは笑いがながら答えてくれたよ。
「俺達の世界じゃあ、『STD』ってのは、…。
あんまり他人様の前でおっぴらに言えるもんじゃないんだよ。
何と言うか、少し恥ずかしい病気? シモの病気の総称と言うか…。」
そう言った後も、『STD四十八』を指差しながら笑い続けるタロウ。
そんなタロウに、アルトが一言。
「ああ、シモの病気って、昨日の美人局の娘が持ってたやつね。」
「えっ?」
タロウってば、さっきまでの大笑いから一転、泡を食ったような顔になっちゃった。
「あんた、少しは考えて行動しなさいよ。
目の前に美味しそうな餌をぶら下げられたからと言って…。
そんなにがっつくもんじゃないわよ。
あんな仕事をしている娘だもの。
一つや二つ、持っていてもおかしくないでしょうに。
あんた、男になったって凄く喜んでたでしょう。
水を差したら悪いかなと思って、昨日は黙ってたの。
ほら、これ飲んでおきなさい、『妖精の泉』の水よ。」
そう言って、アルトは万病に効くという『泉』の水が入った徳利を渡してたよ。
「アルト姉さん、それ知ってて、俺にご褒美だって差し出したんですか?
それは、あんまりですよ。」
焦った様子のタロウは愚痴を零しながら、徳利を受け取ってた。
まあ、変な病気をもらっても、『泉』の水ですぐに治るからね。
おいら達の会話は周りにいる人達の耳にも入ったようで。
「ねえ、奥さん聞きました。
あの連中、シモの病気だそうですよ。」
「ええ、聞きましたとも。
チャラチャラしてて、遊んでそうですもの。
然もありなんですよね。」
おいら達の後ろについてきたやじ馬のオバチャン達がそんな会話をしてた。
あいつら、恥かしい病気確定なんだ…、風評被害ってこんな風に起こるんだね。
「おめえら、俺達を無視して、何ごちゃごちゃ言ってやがる!」
あっ、忘れてた…。
********
で、仕切り直し。
「まあ、良いわ。
雑魚でも、伝言係くらいは出来るでしょう。
ほら、届け物よ。
ちゃんと返したからね。」
アルトは、そう言うとゴロツキ五人を『STD四十八』の前に放り出したの。
ドスンという音と共に、アルトの『積載庫』の中から転がり落ちる五人。
「若頭!」
一番偉そうなおっちゃんを見て、誰かがそう叫んでたよ。
「おい、こっちには舎弟頭のアニキもいるぜ。
ホシガキ隊の三人まで…。
『じゃねえぜ会』の看板トリオまでやられちまったのか。」
三人束になって掛かっても、タロウに一蹴されて不甲斐ない連中だと思ってたけど。
仲間内から『ガキ』と呼ばれるくらいの雑魚だったんだ。
『じゃねえぜ会』って、広域ギルドの末端組織みたいだけど。
あの三人が看板じゃ、きっと末端も末端の組織なんだろうね。
「まさか、若頭をこんな目に遭わせたのはてめえらか。
若頭は、『王都の冒険者百選』に選ばれるほどの強者なんだぞ。
いったい、どんな卑怯な手を使ってこんな目に遭わせてくれたんだ。」
『王都の冒険者百選』って、いったい誰が選ぶんだよ…。
それは、ともかくおいらの一撃で沈んじゃうおっちゃんが百選に入っているって。
本当に冒険者って見掛け倒しの塵芥が多いんだね。
「卑怯な手も何も、…。
そのおっちゃん、おいらがチョコンと突いたら倒れちゃったよ。
これ以上、手の抜きようが無かったよ。
だいたい、悪いのはこの五人の方だよ。
自由市場で露店を広げてたら営業妨害して来たんだもん。
だから、排除したの。
おいら達、何も悪いことしていないよ。」
おいらが、若頭と呼ばれるおっちゃんを指差しながら答えると。
「ガキの癖に、でっかい口を叩きやがって。
最近のガキは口の利き方ってものを知らねえのか。
少し、躾をしてやらねえといけねえな。」
『STD四十八』の一人が、こぶしを振り上げて殴りかかってきたんだ。
さすがに、八歳の女児に向かっていきなり剣を抜くことは無かったよ。
おいら、今回は『回避』が働く前に自分から行動することにしたんだ。
振り下ろされてくるこぶしを、デコピンの要領で弾いてやったの。
グシャ! という破砕音と共に…。
「ぐぎゃあああああ!」
絶叫と共に、こぶしを抱え込んで蹲っちゃったよ、『STD四十八』の一人。
「てめえ、何しやがる!」
もう一人、おいらに殴りかかろうとするんだけど…。
「ちょっと待て!
今、このガキなんて言った。
たしか、『自由市場で露店を広げてた』って言わなかったか。
おい、こいつ等じゃねえのか。
昨日から、大ぴらに『スイーツ団』のシノギを邪魔しているのって。」
別の『STD四十八』がおいらに殴りかかろうとする兄ちゃんを止めたんだ。
やっと、おいら達が何者かに気付いたみたい。
やっと、本題に入れるよ。
こいつら、沸点が低くてすぐに乱暴してくるものだから…。
中々、話しが前へ進まなくて困ってたんだよ。
「お届け物よ!」
そんな声を掛けならが、アルトは、目の前に浮かべた光の玉を扉に放り投げちゃった。
扉に着弾する瞬間、光の玉は眩い閃光を放ち…。
ドカーン! という大音響と共に扉を粉々に破砕したんだ。
「何だ、何だ、カチコミか!」
「何処のどいつだ、こんなナメた真似してくれたんは!」
そんな声をあげながら、建物の中からぞろぞろと出て来たのは如何にも冒険者という風体の若い男が五十人ほど。
どいつもこいつも、チンピラという言葉がお似合いの、雑魚臭がプンプンとする奴らだったよ。
アルトが言うところの、ハッタリだけという言葉が良くお似合いの。
「何よ、せっかく、届け物に来てあげたというのに…。
雑魚ばっかりでお出迎えとは失礼ね。
もう少し、まともな連中出しなさいよ。」
あっ、アルト、それ言っちゃう。
おいら、思っていても口にしなかったのに…。
「何処のどいつかと思ったら、そこの羽虫か?
俺達、『STD四十八(スイーツ団四十八人衆)』を雑魚だなんて、ナメた口を叩くのは。
この場で、握り潰してやろうか。」
「全くだ、『スイーツ団』の中核を担う俺達、『STD四十八』を雑魚だなんて赦せねえぜ。」
こんなのが中核って、『スイーツ団』って実は捨て駒の集団?
『STD四十八』って、四十八人もいれば、もはやその他大勢だよね。
おいらが、『STD四十八』を眺めながら、そんな事を考えていると。
「アッハッハッハ!
こいつらマジか!
人前で、『STD四十八』なんて、良く大声で名乗れるな!
おっかしいの!」
タロウが、お腹を抱えて笑い出したんだ。
「タロウ、何がそんなにおかしいの?」
おいらが尋ねると、タロウは笑いがながら答えてくれたよ。
「俺達の世界じゃあ、『STD』ってのは、…。
あんまり他人様の前でおっぴらに言えるもんじゃないんだよ。
何と言うか、少し恥ずかしい病気? シモの病気の総称と言うか…。」
そう言った後も、『STD四十八』を指差しながら笑い続けるタロウ。
そんなタロウに、アルトが一言。
「ああ、シモの病気って、昨日の美人局の娘が持ってたやつね。」
「えっ?」
タロウってば、さっきまでの大笑いから一転、泡を食ったような顔になっちゃった。
「あんた、少しは考えて行動しなさいよ。
目の前に美味しそうな餌をぶら下げられたからと言って…。
そんなにがっつくもんじゃないわよ。
あんな仕事をしている娘だもの。
一つや二つ、持っていてもおかしくないでしょうに。
あんた、男になったって凄く喜んでたでしょう。
水を差したら悪いかなと思って、昨日は黙ってたの。
ほら、これ飲んでおきなさい、『妖精の泉』の水よ。」
そう言って、アルトは万病に効くという『泉』の水が入った徳利を渡してたよ。
「アルト姉さん、それ知ってて、俺にご褒美だって差し出したんですか?
それは、あんまりですよ。」
焦った様子のタロウは愚痴を零しながら、徳利を受け取ってた。
まあ、変な病気をもらっても、『泉』の水ですぐに治るからね。
おいら達の会話は周りにいる人達の耳にも入ったようで。
「ねえ、奥さん聞きました。
あの連中、シモの病気だそうですよ。」
「ええ、聞きましたとも。
チャラチャラしてて、遊んでそうですもの。
然もありなんですよね。」
おいら達の後ろについてきたやじ馬のオバチャン達がそんな会話をしてた。
あいつら、恥かしい病気確定なんだ…、風評被害ってこんな風に起こるんだね。
「おめえら、俺達を無視して、何ごちゃごちゃ言ってやがる!」
あっ、忘れてた…。
********
で、仕切り直し。
「まあ、良いわ。
雑魚でも、伝言係くらいは出来るでしょう。
ほら、届け物よ。
ちゃんと返したからね。」
アルトは、そう言うとゴロツキ五人を『STD四十八』の前に放り出したの。
ドスンという音と共に、アルトの『積載庫』の中から転がり落ちる五人。
「若頭!」
一番偉そうなおっちゃんを見て、誰かがそう叫んでたよ。
「おい、こっちには舎弟頭のアニキもいるぜ。
ホシガキ隊の三人まで…。
『じゃねえぜ会』の看板トリオまでやられちまったのか。」
三人束になって掛かっても、タロウに一蹴されて不甲斐ない連中だと思ってたけど。
仲間内から『ガキ』と呼ばれるくらいの雑魚だったんだ。
『じゃねえぜ会』って、広域ギルドの末端組織みたいだけど。
あの三人が看板じゃ、きっと末端も末端の組織なんだろうね。
「まさか、若頭をこんな目に遭わせたのはてめえらか。
若頭は、『王都の冒険者百選』に選ばれるほどの強者なんだぞ。
いったい、どんな卑怯な手を使ってこんな目に遭わせてくれたんだ。」
『王都の冒険者百選』って、いったい誰が選ぶんだよ…。
それは、ともかくおいらの一撃で沈んじゃうおっちゃんが百選に入っているって。
本当に冒険者って見掛け倒しの塵芥が多いんだね。
「卑怯な手も何も、…。
そのおっちゃん、おいらがチョコンと突いたら倒れちゃったよ。
これ以上、手の抜きようが無かったよ。
だいたい、悪いのはこの五人の方だよ。
自由市場で露店を広げてたら営業妨害して来たんだもん。
だから、排除したの。
おいら達、何も悪いことしていないよ。」
おいらが、若頭と呼ばれるおっちゃんを指差しながら答えると。
「ガキの癖に、でっかい口を叩きやがって。
最近のガキは口の利き方ってものを知らねえのか。
少し、躾をしてやらねえといけねえな。」
『STD四十八』の一人が、こぶしを振り上げて殴りかかってきたんだ。
さすがに、八歳の女児に向かっていきなり剣を抜くことは無かったよ。
おいら、今回は『回避』が働く前に自分から行動することにしたんだ。
振り下ろされてくるこぶしを、デコピンの要領で弾いてやったの。
グシャ! という破砕音と共に…。
「ぐぎゃあああああ!」
絶叫と共に、こぶしを抱え込んで蹲っちゃったよ、『STD四十八』の一人。
「てめえ、何しやがる!」
もう一人、おいらに殴りかかろうとするんだけど…。
「ちょっと待て!
今、このガキなんて言った。
たしか、『自由市場で露店を広げてた』って言わなかったか。
おい、こいつ等じゃねえのか。
昨日から、大ぴらに『スイーツ団』のシノギを邪魔しているのって。」
別の『STD四十八』がおいらに殴りかかろうとする兄ちゃんを止めたんだ。
やっと、おいら達が何者かに気付いたみたい。
やっと、本題に入れるよ。
こいつら、沸点が低くてすぐに乱暴してくるものだから…。
中々、話しが前へ進まなくて困ってたんだよ。
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