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番外編
明けちゃった(2)
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コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン――。
しつこく扉をノックされる音で目が覚めたのはローガンだった。どうやら昨日は、というより今日は、毎年恒例の朝までパズルをしながら、そのままテーブルに突っ伏して眠ってしまったらしい。顔をあげて目を開けたら、向かい側にそのような恰好で眠っているシャンテルがいた。
ノック音はしつこく続いている。どうやらシャンテルは起きそうにない。仕方なくローガンが立ち上がり、扉を開けた。
「……っひ」
という悲鳴にも似たような声を思わずあげそうになったのは、鬼のような形相をしているグレイクが立っていたからだ。
「えっと、サニエル団長。新年、おめでとうございます」
お酒が抜けきっているにも関わらず、ローガンの心臓はバクバクと音を立てていた。
「ああ。これは、これは、ローガン殿。私が覚えている限りでは、この部屋はシャンテルの部屋であったと記憶しているのだが」
「そ、そうですね。シャンテルは、あそこで寝てます」
机で突っ伏して眠っているシャンテルの姿をグレイクに見えるように、ローガンはすすっとその身体をずらした。
「それで君たちは、何をしていたのかな?」
なんだろう、この威圧感。シャンテルのことになると一気にへたれになるこの男が、今日は異様に怖く感じる。
いや、殺されるかもしれない、と思っていたのだから、こうなることはわかっていたはずだ。
「朝までパズルですね。毎年、恒例でしたので」
「毎年、恒例だと?」
ここで怯んだら負けだ、とローガンは思った。このグレイクの勢いに飲まれてはならない。
「ええ。まあ、シャンと僕が一緒に暮らしていたということは聞いているとは思いますが。シャンが僕の家にいたときは、こうやって美味しい果実水と美味しいお菓子とパズルで新年を迎えたのです」
「つまり、家族の儀式である、と?」
「そ、そうです。何しろ僕とシャンは兄妹のようなものですから」
「兄妹……」
「そ、そうです。兄妹です。ですからサニエル団長。妹のことは任せます」
そしてローガンは逃げた。すぐにパタンという乾いた扉の音が響く。どうやらローガンは自分の部屋へと戻ったようだ。
グレイクはシャンテルの部屋の扉の鍵をかけると、ゆっくりと彼女に近づいた。テーブルの上には、空になった酒瓶と、少しばかり残っている箱の中のお菓子。そして、朝までパズルと言われていたジグソーパズルが未完成のまま残っていた。
肝心のシャンテルはそのテーブルの上に両手を重ね、その上に右側の頬をくっつけて幸せそうに眠っている。幸せの原因は、恐らくこのお酒だろう。グレイクでさえも目にしたことがある銘柄だ。しかもちょっとお高い。
グレイクがそっと彼女の頬に触れると、その瞼がぴくぴくと動き、重そうにゆっくりとそれが開かれる。
「ん……。あ、レイ様。おはようございます……。あれ、ローは?」
「ローガンは帰った」
「あ、そうですか……」
そして再びシャンテルは瞼を閉じた。グレイクは、この婚約者をどうしてやるべきかということを、悶々と考えていた。
しつこく扉をノックされる音で目が覚めたのはローガンだった。どうやら昨日は、というより今日は、毎年恒例の朝までパズルをしながら、そのままテーブルに突っ伏して眠ってしまったらしい。顔をあげて目を開けたら、向かい側にそのような恰好で眠っているシャンテルがいた。
ノック音はしつこく続いている。どうやらシャンテルは起きそうにない。仕方なくローガンが立ち上がり、扉を開けた。
「……っひ」
という悲鳴にも似たような声を思わずあげそうになったのは、鬼のような形相をしているグレイクが立っていたからだ。
「えっと、サニエル団長。新年、おめでとうございます」
お酒が抜けきっているにも関わらず、ローガンの心臓はバクバクと音を立てていた。
「ああ。これは、これは、ローガン殿。私が覚えている限りでは、この部屋はシャンテルの部屋であったと記憶しているのだが」
「そ、そうですね。シャンテルは、あそこで寝てます」
机で突っ伏して眠っているシャンテルの姿をグレイクに見えるように、ローガンはすすっとその身体をずらした。
「それで君たちは、何をしていたのかな?」
なんだろう、この威圧感。シャンテルのことになると一気にへたれになるこの男が、今日は異様に怖く感じる。
いや、殺されるかもしれない、と思っていたのだから、こうなることはわかっていたはずだ。
「朝までパズルですね。毎年、恒例でしたので」
「毎年、恒例だと?」
ここで怯んだら負けだ、とローガンは思った。このグレイクの勢いに飲まれてはならない。
「ええ。まあ、シャンと僕が一緒に暮らしていたということは聞いているとは思いますが。シャンが僕の家にいたときは、こうやって美味しい果実水と美味しいお菓子とパズルで新年を迎えたのです」
「つまり、家族の儀式である、と?」
「そ、そうです。何しろ僕とシャンは兄妹のようなものですから」
「兄妹……」
「そ、そうです。兄妹です。ですからサニエル団長。妹のことは任せます」
そしてローガンは逃げた。すぐにパタンという乾いた扉の音が響く。どうやらローガンは自分の部屋へと戻ったようだ。
グレイクはシャンテルの部屋の扉の鍵をかけると、ゆっくりと彼女に近づいた。テーブルの上には、空になった酒瓶と、少しばかり残っている箱の中のお菓子。そして、朝までパズルと言われていたジグソーパズルが未完成のまま残っていた。
肝心のシャンテルはそのテーブルの上に両手を重ね、その上に右側の頬をくっつけて幸せそうに眠っている。幸せの原因は、恐らくこのお酒だろう。グレイクでさえも目にしたことがある銘柄だ。しかもちょっとお高い。
グレイクがそっと彼女の頬に触れると、その瞼がぴくぴくと動き、重そうにゆっくりとそれが開かれる。
「ん……。あ、レイ様。おはようございます……。あれ、ローは?」
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