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番外編
化けちゃった(2)
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「ちなみに、詰め物はどうしますか?」
「詰め物?」
「胸の」
「ああ。普通で」
「普通って。普通っていうのが一番わかりません」
「では、君と同じサイズで頼む」
いっそのこと、いつもと同じように「大きめで」言ってくれた方が楽なのに、とメメルは心の中で呟く。それに自分と同じサイズってどういうこと、と。これではガレットに胸のサイズを知られてしまうじゃないか、と。
そう思ったメメルは、自分のサイズよりも少し多めに盛ってみた。
「どうでしょう?」
「ああ。文句の付け所が無いくらい、素晴らしい。この鏡に映っている美女は誰だ、と自分でも思うな」
「でしたら、その口調も気を付けた方がいいですね。もっと女性らしく」
「わかりました、気を付けます」
とガレットが声色を変えて言うものだから、メメルもドキリとしてしまう。
「ねえ、メメル?」
本来ならば上目遣いで言うべきものなのだろう。だが、メメルの方が彼よりも背が低いため見下ろされてしまう。それでもドキリとしてしまうのだから、上目遣いで見られた日には、その辺の男はころりといってしまうだろう。
「一緒に夕飯、食べに行かない?」
「あら、いいですね。団長のおごりですよね、もちろん」
「そうね。これの御礼もしないとね」
ガレットの言う「これ」とは女装の手伝いのことだろう。
「では、すぐに片付けますから、少しお待ちいただいてもいいですか?」
ガレットは「ああ」と頷くが、思わずそれが素であったため、慌てて「ええ」と頷いた。そんなガレットが楽しくて、メメルもつい笑みをこぼしてしまう。
「はい。お待たせしました」
と言うメメルもいつの間にか、着替えていたらしい。といっても、薬師としてのローブを脱いだだけだが。
「では、いきますか」
ガレットが手を差し出してきた。
さて、この手が意味するところはなんだろう、とメメルは考えるのだが。
「団長。まさか、女性同士で手を繋ぐ、という意味でしょうか?」
「ああ、すまない。つい」
「団長。言葉が」
「ええ、そうね。久しぶり過ぎるから、なかなか慣れないわね。そういうあなたも、私のことを団長と呼ぶのはやめなさい」
「でしたら、どのようにお呼びすればいいかしら?」
メメルは首を傾けてガレットを見上げた。勝手に女性の名前をつけても、呼び慣れないとボロが出る。
「あ、お姉さまとお呼びしてもよろしいですか? 私も、お姉さまが欲しかったのです。シャンにお姉さまと呼ばれるのは嬉しいのですが、私も呼ぶ方になってみたかったのです。ね、お姉さま?」
「悪くはない、な」
「ほらほら、お姉さま。言葉遣いには気を付けましょうね」
言うと、メメルはガレットの腕に両手を絡ませた。やれやれ、という視線でガレットはメメルを見下ろした。うん、悪くはない。
「メメル。食べたい物はあるかしら? お姉さまが御馳走してあげる」
「そうですねぇ」
唇に人差し指を当てながら考え込むメメルは、実年齢よりも幼く見える。うん、悪くはない。
悪くはないのだが、ガレットが気になるところとしては、彼女のために一番目の妻の座を空けてあるのだが、それにまったく喰いついてくれないということだろう。
「どうかしましたか、お姉さま」
「いいえ。どこに行こうかな、と考えていたのよ」
今はまだこの関係でも悪くはない。
「詰め物?」
「胸の」
「ああ。普通で」
「普通って。普通っていうのが一番わかりません」
「では、君と同じサイズで頼む」
いっそのこと、いつもと同じように「大きめで」言ってくれた方が楽なのに、とメメルは心の中で呟く。それに自分と同じサイズってどういうこと、と。これではガレットに胸のサイズを知られてしまうじゃないか、と。
そう思ったメメルは、自分のサイズよりも少し多めに盛ってみた。
「どうでしょう?」
「ああ。文句の付け所が無いくらい、素晴らしい。この鏡に映っている美女は誰だ、と自分でも思うな」
「でしたら、その口調も気を付けた方がいいですね。もっと女性らしく」
「わかりました、気を付けます」
とガレットが声色を変えて言うものだから、メメルもドキリとしてしまう。
「ねえ、メメル?」
本来ならば上目遣いで言うべきものなのだろう。だが、メメルの方が彼よりも背が低いため見下ろされてしまう。それでもドキリとしてしまうのだから、上目遣いで見られた日には、その辺の男はころりといってしまうだろう。
「一緒に夕飯、食べに行かない?」
「あら、いいですね。団長のおごりですよね、もちろん」
「そうね。これの御礼もしないとね」
ガレットの言う「これ」とは女装の手伝いのことだろう。
「では、すぐに片付けますから、少しお待ちいただいてもいいですか?」
ガレットは「ああ」と頷くが、思わずそれが素であったため、慌てて「ええ」と頷いた。そんなガレットが楽しくて、メメルもつい笑みをこぼしてしまう。
「はい。お待たせしました」
と言うメメルもいつの間にか、着替えていたらしい。といっても、薬師としてのローブを脱いだだけだが。
「では、いきますか」
ガレットが手を差し出してきた。
さて、この手が意味するところはなんだろう、とメメルは考えるのだが。
「団長。まさか、女性同士で手を繋ぐ、という意味でしょうか?」
「ああ、すまない。つい」
「団長。言葉が」
「ええ、そうね。久しぶり過ぎるから、なかなか慣れないわね。そういうあなたも、私のことを団長と呼ぶのはやめなさい」
「でしたら、どのようにお呼びすればいいかしら?」
メメルは首を傾けてガレットを見上げた。勝手に女性の名前をつけても、呼び慣れないとボロが出る。
「あ、お姉さまとお呼びしてもよろしいですか? 私も、お姉さまが欲しかったのです。シャンにお姉さまと呼ばれるのは嬉しいのですが、私も呼ぶ方になってみたかったのです。ね、お姉さま?」
「悪くはない、な」
「ほらほら、お姉さま。言葉遣いには気を付けましょうね」
言うと、メメルはガレットの腕に両手を絡ませた。やれやれ、という視線でガレットはメメルを見下ろした。うん、悪くはない。
「メメル。食べたい物はあるかしら? お姉さまが御馳走してあげる」
「そうですねぇ」
唇に人差し指を当てながら考え込むメメルは、実年齢よりも幼く見える。うん、悪くはない。
悪くはないのだが、ガレットが気になるところとしては、彼女のために一番目の妻の座を空けてあるのだが、それにまったく喰いついてくれないということだろう。
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「いいえ。どこに行こうかな、と考えていたのよ」
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