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218.レンの無事、隙間を探して(前半スノーラ視点後半レン視点)

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 何だ? 戦っている最中、こう言う時には絶対に声をかけてこない、ローレンスが我の事を呼んだ。全く何なんだと思いながら、ローレンスの方をチラッと見れば、魔獣と戦っているはずなのに、剣を掲げ我らに何かを伝えてきていて。その剣の掲げ方も、魔獣を切るついでという感じだったが。

 何故こんな時にと思いながら、我は動きを止めずにディアブナスに攻撃を続け。その時ある事を考え。もしかしたら今の一瞬の合図は…。わざわざこんな時に合図を送ってきたのだ。もしかしたら。

 そんなローレンスの合図があってから少したち、ユイゴの元へ何処からともなくあやつが現れ、コレイションの腕を切り落とした。すぐにコレイションがディアブナスの元へ戻り、腕を再生してもらう。ただその間もディアブナスの攻撃が止む事はなく、我等は戦いながら、現れた者と会話をする事に。

 そう、レン達と下へ落ちていったはずのアーティストが、いきなり現れたのだ。となればあの先程のローレンスの合図は。

「アーティスト、子ども達は無事か」

「はい! 今は近くに隠れております」

『怪我は?』

「それも大丈夫です。ブローの魔法で一切怪我はしておりません」

『そうか、良かった』

 はぁ、今まで気にしないように、絶対に無事だと信じて戦っていたが、ハッキリとそう言われ、良い具合に肩の力が抜けた。自分では今まで気づいていなかったが、かなり力が入っていたらしい。その変化は攻撃にも現れ、明らかに攻撃の威力が上がった。

 いやしかし、本当に無事で良かった。だがどう言う事だ? いくら気配が感じにくいと言っても、少しだけでもレン達の気配を感じられそうな物だが。そう、アイスが逃げてきた時と同じように、色々な場所から気配がするなどだ。今は全くレン達の気配を感じない。
 そう言えば、ここへアーティストが現れるまで、アーティストの気配も一切感じられなかった。

 ユイゴが我と同じ事を考えていたようで、ディアブナス達に聞かれないように、さらに小さな声でアーティストに質問をする。

「何故気配が全くしなかった?」

「これもブローの力です。ここへ来る前に聞きましたが、少し魔法には猶予があるようで、動くなら今だと思い私はこちらへ」

『そうか。ではその魔法が切れる前に、そしてあれが完成するまでに、確実にあいつを、ここに止めておかなければいかんな』

『そうだな。魔獣はローレンス達に任せて大丈夫だろう。我等はしっかりとディアブナスを止めるぞ』

 まだレン達の元へ行く事はできないが、本当に無事で良かった。後はエイデン達を待つだけだが。急げよ。時間はもうあまりないぞ。レン達が隠れていられるうちに、そして我らがディアブナスを止めているうちに。急げ!!

      *********

「どこか、みえりゅ?」

『う~ん、隙間ない』

『こっちもないなの』

『僕の方もダメ』

『少しの隙間で良いのにね。穴でも良いんだけど』

 相変わらず大きな爆発音と、何かが割れる音? その他にも色々な音が聞こえてくるけど、僕達は中々隙間を見つけられなくて。向こうの壁から顔を出せば見えるけど、それじゃあ見つかっちゃうし。本当、少しの隙間で良いんだよ。

 今度は少し左に移動した僕達。部屋の端っこの方へ行ったんだ。もちろん枕と毛布を引っ張って持っていきながら。いくらお屋敷が全壊しないで一部が残っているとはいえ、そこら中ボロボロの壊れた物の残骸で、そのまま膝をついたり手をつくと痛いんだよ。だから持って歩いてるの。

「あっちゃ?」

『こっちない』

『ないなの』

『これだけボロボロなのに、隙間がないってどうなの?』

 ブローが文句を言った時でした。壁の隅を調べていたドラちゃんが。

『あっ! これなら見えるよ! 隙間もみんなの分ちょうど空いてるし。早く来て!』

 そう言われて急いでみんなでドラちゃんの所に。そこには壁の端にそって、細い隙間がピーンッ!って入っていて。僕達が縦に並んだら、ちょうどみんな一緒に、向こうを見る事ができるくらいの長さの隙間でした。

「みんにゃ、ちいて!」

 毛布を敷いてその上に枕を置いて、まずはアイスが壁の隅に並びます。その上に僕がハイハイの格好をして覆いかぶさって、僕の頭の上にルリが乗りました。
 それから次ぐにドラちゃんが僕達に覆いかぶさるようにして来て、最後にブローがドラちゃんの頭の上に乗りました。

「よくみえりゅ」

『うん! スノーラ元気。怪我してない! 多分?』

『バシバシッ! ドカ~ンッ!! 噛みつき攻撃、全部凄いなの!!』

『お父さんの攻撃も凄い!』

『でも、あいつもすぐに回復してるね。まぁ、コレイションは少し回復するのに、時間かかるようになってきたみたいだけど』

 そう、コレイションがディアブナスに、腕を治してもらっていました。でもその治してもらった腕を、またすぐにユイゴさんに切られて、また治してもらって。時間がかかってるか僕には良く分かんないけど、何か腕細くなってない?

『どうしようか、順番に見る? 僕達気配が分からないから、そこら辺を飛んでる魔獣にも気づかれてなくて、襲われないけど。もしこっちに来たら大変。危ない時は逃げなくちゃ』

 しっかりスノーラ達を見る前に、逃げる場所を確認します。まず向こうを見る順番は僕とルリとアイスで見て、交代でドラちゃんとブローが見ます。
 それからもし魔獣がこっちに来そうになったら、壁に沿ってあの壊れてるドアの所まで行って、隣の部屋に行く事にしました。

 スノーラ達の方は穴を掘って向こうを覗いて、バレるといけないからしなかったけど横は大丈夫って、ささっと壁の下を少しだけ掘ったドラちゃん。隣の部屋を確認したら、こっちの部屋みたいにボロボロだけど残っていました。

『じゃあ、先にレン達見て。僕達は見張るからね』

 すぐに僕達は隙間から向こうを見ます。見た瞬間、ディアブナスの顔の辺りが爆発してました。
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