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253.何故私の邪魔ばかり(ディアブナス視点)

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 何故だ、何故こんな事になっている。あの時も最初はうまく行っていた。それが何故。
 大体私を生み出したのはお前達だ。この全ての世界の命ある者達が私を生み出した。
 
 我はこの世界だけではない、様々な世界から集まった悪で生まれた。最初はとても小さな小さな存在で、気づく者などいなかった。そう神でさえも。だが徐々に力をつけ始め、私に意志が生まれた。その時の喜びと言ったら。

 意志が芽生えると、自分を成長させるのにそんなに時間は掛からなかった。そう、世界のどこにでも、我の力の源となる力が溜まっていたからだ。それだけではない。その力を取り込めば、新たに別の場所に力は生まれ、それは途切れることなく続き。そのため力を集めるのに苦労はしなかった。

 そしてかなりの力を集めると、ようやく私の存在に気づいた者がちらほらと現れた。その者達は我を悪と呼び、すぐに我を消そうとしてきた。しかし我の源となる力、奴等が悪と言っている、負の力と言っている物は、自分達が生み出しているとも気づかず。私の力は強くなり続け、こうして強くなり続けた私は、ついに実体を手に入れる事ができた。

 そしてその頃から我の支配する者達と、私に敵対する者達との、本格的な戦いが始まり。敵対している者達が何度か、どうしてお前は強くなり続ける、何故お前は力を使い続けているのに、その力が底をつかない。など言ってきたが。お前達が我に力を与えているのだろう、いい加減気づかないのかと不思議に思った。

 毎日のように、私のことを悪と呼ぶ者達が、その悪の力を生み出しているのだ。それを私は取り込んでいただけの事。別に私が何か特別な事をしたわけではない。自分達で私を作り出し、更にずっと力を与えて続けておいて、私が文句を言われる筋合いはないのだ。

 その後、自分達で自分達の敵を強くしている。それにようやく気づいたようだが、だからと言って私の力の源がなくなるわけでもないく。そんな時だった。奴が仲間と現れたのは。

 勇者マサキ。その者はこの世界の者達を1つにした。すると今まで無限に生み出されていた悪の力は、完璧になくなる事はなかったが、それでも徐々に減り始め。そして私は最初の封印をされる事に。
 
 しかしその減ってしまった悪の力を、少しずつ少しずつ取り込んだ私は、封印を破り再びこの世界を手に入れようとして。結局は勇者マサキの命懸けの封印に、また封印される事になってしまったが。

 やっと、やっとまた、私はこの世界に出てくる事ができたのだ。しかもあの頃以上の力を手に入れて復活した。それなのにどうして。途中までは上手くいっていた。が、最初にあの子供の力を、しっかりと自分の力にしてしまっていれば。
 
 あの子供、そうだあの子供が全ての原因だ。最初の復活の時、全ての力を手に入れる前に、子供と闇の精霊に逃げられ。その後も何度もチャンスはあったのに、あと少しというところで、すべて逃げられてしまった。挙句の果てには、コレイションの用意した体が保たず、止めとばかりに子供に変な武器で攻撃をされれば、完璧に外見は崩れてしまい。

 本当にどこまでも邪魔をしてくれる。早くあの子供の体を手に入れなければ、魔法陣が更に力を増してきている。動けなくなるのも時間の問題だろう。今の私にどれだけの事ができるか、今だけコレイションの体を使うか?
 奴はかなりの力を持っている。まだ自分では全ての力に気づいていないようだが。だから私が奴を闇の住人にしても、奴は平気で動けているのだ。

 そんなコレイションだが、なるべくだったらこのまま奴を動かしたい。今のところ私の指示についてこれる者は、この世界全てを探しても、そうはいないだろう。徐々に私の力に慣れさせた後ならば、コレイショの力に届かないまでも、使える者達はできるだろうが。

 そんな奴の体を借り、奴の体に負担をかけ、その後に支障は出したくはないが。ここから離れ、何とか子供を手に入れなければ、今の私にこの場を切り抜ける事はできないだろう。

『ブレイデル様、いかが致しましょう』

『お前の体を借り、子供の体を手に入れ、この場を何とか離れる。体勢を立て直すぞ』

『畏まりました』

 我はすぐにコレイションの体を回復した。役に立たなかったラジミールの体に居た時よりも力は劣るが動きは良くなった。もっと早くそれに気づいていれば。この街どころか、かなりの範囲を手に入れていただろうに。

『コレイション、あの役に立たなかった体を用意した事、それについては我を復活させた事でなかった事にしてやる』

『はっ』
 
 さて、コレイションお体に入るのは良いが、そう簡単に奴等がそれをさせるわけもない。先程の人形に相手をさせておき、移動しながらコレイションの中に入るか。それとも外の結界を破り、魔獣達を中へ入れて奴等の相手をさせるか。

 …!? この感じ。また魔法陣の力が強くなったか。早くしなければ。考えるのは面倒だと。今できる事全てで奴等を止め、我は子供の元へ。



『あ~、これはまずいかもね。本当にいつまでもしつこい奴だよ。スノーラに報告しないと。それに周りにいるハイエルフ達にもね』

 僕はすぐにスノーラ達の元へ戻る。あのディアブナスの力。エンもスノーラ達も気づいているだろうけど、本当に早く魔法陣をしっかり発動させないとまずい事になる。エン達だって簡単に、奴の好き勝手にはさせないだろうけど。

『スノーラ!』

『向こうはどうだ?』

『あいつあの人間? 闇の人間? よく分かんないけど、そいつの体を使ってここまでくるつもりだ』
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