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306.罠かそれとも

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『………』

『………』

『………』

『………おい、何か感じるか?』

 すぐにジャガルド達に追いついた我等は、我等の気配を奴等が気づくとは思えないが。それでも念には念を入れ、気配をなるべく消して奴等のあとを追った。追ったのだが。

『我は何も感じん。カースお前はどうだ?』

『僕も何も感じないね。というか奴等をしっかり見たのは初めてだけど、元々あんな感じなの?』

『ボクもスノーラ達ほど力はないけどさ、何にも感じない。それに…。ねぇ、ジャガルドが持ってるやつ。あれ、布のせいで中まではしっかり見えないけど、あれにフーリ入ってるよね。それで魔法封じが掛けられてるけど。すぐにでも消えそうなくらい弱いよね』

 追いついてまず確認したこと、それはもちろんフーリの確認だ。フーリの確認をしないで攻撃はできないからな。どこに隠しているか、どうやってフーリを運んでいるか、どんな魔法を使ってフーリを逃さないようにしているのか。

 ちなみにフーリが入れられているだろう入れ物は布をかけ、ジャガルド自ら持っていた。気配から、そのジャガルドの持っている物にフーリが居るのは確実で、しかもフーリがまだ生きている事が分かり安心した。

 馬を走らせるジャガルド達。風で篭の布がヒラヒラと揺れ、中が見えそうで見えなかったが、ここまで近づけばブローもフーリの存在は感じ取れるからな。ブローも少しだが安心した顔をしている。

 続いて入れ物にかけられている、フーリを逃さないようにするための魔法について調べた。が、どうにも様子がおかしかった。今ブローが言った通り、今にも消えそうな、とても弱い魔法封じの魔法がかけられていたのだ。

 魔法封じ。捉えた魔獣、魔獣だけではない。人間だろうが魔獣だろうが、魔法が使える者達を閉じこめ、その場所から逃げられないようにする魔法。
 術者の力にもよるが、ジャガルドほどの力の持ち主ならば、かなり強い魔力封じの魔法を使えるはずだが。

 あれならば我等が何かしなくとも勝手に魔法が消え、自力で中からフーリは逃げられそうだ。ブローの話しからフーリは怖がって自ら出てくるとは思えないが、それくらい今にも解けそうな、魔法封じの魔法だった。

 我等が追ってくると分かっていて、ワザと弱い魔法封じの魔法をかけているのか? それで油断させて、何か別の魔法を用意しているのか。
 分からないまま次の確認に移る。そう、今言った通り、他に何か仕掛けられていないか調べた。

 もちろん調べたのは我だけではない。全員で奴等を調べた。その結果、我は何も感じる事ができなかった。あまりのことに、本当に我等をはめようとしているのではないかと3回も確認をしてしまった。

 最初にしっかりとジャガルドを調べた我は何も感じずに、おかしいと思いながらも他の奴等を調べ。が、他の奴等を調べるのもすぐに終わってしまい。
 ふと横を見るとエンやカース、ブロー全員が変なかをして、ジャガルド達を見ていた。我と同じようにおかしいと思ったのだろう。

 そのため回も調べ直してしまったのだが。やはり何も感じる事はできず。一応、我だけが何も感じない、なんて事はないと思うが、思わず全員に聞いてしまった。何か感じるか、と。

『奴等はこれ程までに、弱い者達だったか? 街ではあれだけの魔法を使っていたのだぞ?』

『あの魔法陣だって、ラジミールだけじゃなく、ジャガルドだって張っていただろう?』

『本当に罠ではないのか?』

『ねぇねぇスノーラ。スノーラがひょいって何かしたら、すぐに助けられない? ささっとフーリを助けてレン達の所に戻ろうよ』

『まぁ、攻撃しても大丈夫だとは思うが』

『もちろんあいつらも連れて戻るけどさ。どうやって連れて帰るかは自由でしょう? 面倒だからボコボコにした後に、その辺のツルでぐるぐるまきにして、引っ張って連れて行けば良いよ。カースとスノーラが引っ張れば、かなりのスピードでさらにボロボロになるだろうし。それが良いよ』

『奴等をボコボコにして、連れ帰る時もついでにボコボコにする事に、我も異論はないが。ここまで力がないのも、逆に疑ってしまうな。だが、こうしてずっと追いかけてるわけにもいかん』

『ここはもうブローの言う通り、奴らが何も準備していない。ただ逃げてるだけと思って、さっさとやっちゃうのが良いんじゃない?』

『そうそう、そうだよ。それが良いよ。僕、早くフーリを助けたいし』

『そうだな、その方が良さそうだ。では我がフーリを助けよう。エンはジャガルドの相手を。カースは他の奴等を頼む。ブローはこのまま我と共に。それで良いか?』

『ああ、問題はない』

『僕も問題なしだよ』

『さぁ、早くフフーリを助けて、ちゃちゃっと奴等をボコボコにしちゃおう!』

『だが気をつけろ。本当に何もないのか、実はかなりの魔法を使おうとしているのか、分からないからな』

『なに、何かされる前に動けなくしてやるさ』

 エンがブンブン腕を回す。

『動けなくするのは構わないが、何も問題がなければ、我の分を残しておいてくれ。レン達の事を思い知らせなければ。それに連れて帰るのだから、絶対に殺すなよ』

『分かっておるわ。よし、前方に見える大きな木の所へ、奴等が行ったらしかけるぞ』

 ニヤニヤ笑うエン、カースもフフンと軽く笑っている。本当に我の分を残しておけよ。ディアブナスとコレイション、そして他の黒服達は封印と、すでに捕まえていて、今までの鬱憤を晴らせていないのだから。

『フーリ具合悪くなってないかな? スノーラ、フーリをよろしくね』

『ああ、必ず助ける!』
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