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3巻

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 第一章 首都ベルンドアへ?


 僕は長瀬蓮ながせれん。普通の中学生だったんだけど、気がついたら、知らない森に一人でいました。
 しかも、二歳児の姿で!
 これからどうなっちゃうか不安だったんだけど、スノーラっていう白いとらの魔獣に拾われたり、弱っていた青い小鳥を助けてルリって名前をつけてあげたり……それで、二人と一緒に住むことになりました。
 それからしばらく経ったある時、僕達は、森の近くにある街――ルストルニアの領主さんのところに引っ越すことに。
 それで、領主のローレンスさん、奥さんのフィオーナさん、二人の長男のエイデンお兄ちゃんに、次男のレオナルドお兄ちゃん。ローレンスさんが契約しているブラックパンサーのバディーと一緒に暮らしていました。
 そんな毎日を送りつつ、スノーラの知り合いのペガサス――ブラックホードさんの子供やたくさんの魔獣さん達を、誘拐ゆうかいされていた場所から助け出したり、その中にいたモモッコルっていうもふもふ魔獣さんと契約してアイスって名前をつけて家族になったり……あとは、大人のみんながエンって呼んでるドラゴンさんとその子供のドラちゃんとお友達になったよ。それから、女神のルルリア様からハリセンをもらったり、冒険者の依頼をしたり、僕達はルストルニアでの生活を楽しんでいました。
 でも、最近起こっている妙な事件の手がかりを得るために、この国の首都ベルンドアに行くってスノーラが言い出したんだ。
 新しい街、とっても楽しみだなあ。


 そんなわけで、僕とルリ、アイスは部屋に戻ってきて、まずは何を持って行くか話し合いをすることにしました。
 三日後の出発だけど、けっこう長い道のりだし、新しい街でもどのくらいお泊まりするか分からないから、しっかりと持って行くものを決めないと。
 もちろん、持って行くのはおもちゃばかりではありません。
 スノーラ達は、魔法陣とか変な気配とか、色々なことを調べに行くんだから、僕達もちゃんとお手伝いするよ。例えば……まぁ色々と。
 今は思いつかないけど、きっとお手伝いできることがあるはず。それに魔法陣があったら僕が綺麗きれいに消してあげるし。
 でも、ずっと僕達がお手伝いできるとは思えないからね。
 そうなるとみんなが調べている最中は、僕達は大人しくしているのがお手伝い。その時に遊ぶものが必要でしょう? 
 うるさくしないように静かに遊ぶの。この前、ドラゴンお父さん達と初めて会った時みたいにね。僕とドラちゃんはあの時、ちゃんと静かに遊んでいたから、その時みたいにするんだ。
 そんな話し合いを始めてすぐでした。

「待って、みんな」

 エイデンお兄ちゃんとスノーラが部屋に入ってきて、僕達にちょっと小さい、旅行カバンみたいなものを渡してきました。

「そのカバンに入るだけおもちゃを持って行くようにね」

 でも、ルリもアイスも首を横に振ります。

『スノーラ、いっぱい持てる』
『ボク達の、なんでもしまえちゃうなの』

 ね、だからカバンはいらないよね……って僕も思ったんだけど、エイデンお兄ちゃんは違うみたいでした。

「そうだろうけど、たくさん持って行きすぎて、向こうでそれを出して、散らかると後がね。だから、これに入るくらいのおもちゃがちょうどいいよ。それでスノーラに持ってもらえばいいから。ね」

 僕達はカバンを見つめます。
 う~ん、そう? 散らかしたりしないよ、だってすぐにスノーラにしまってもらえばいいし。でもこのカバン可愛いなぁ。もしかしてフィオーナさんが作ってくれたのかな?
 カバンにね、ルリそっくりの小鳥と、アイスそっくりな魔獣の刺繍ししゅうがしてあったんだ。

「行くって決まってから、母さんが作ってくれたんだよ」

 そっか、後でフィオーナさんに、みんなでありがとうしないとね。それにせっかく作ってもらったし、可愛いカバン使いたいかも。
 僕達は話し合って、このカバンにおもちゃを入れて持って行くことにしました。
 それからまたおもちゃの相談に戻ると、後ろでスノーラとエイデンお兄ちゃんが話し始めました。

「別にカバンを用意してもらわなくとも、我がしまってしまえばいい話だが……確かにたくさん持って行って、散らかしてもな」
「本人達は散らかさないって思ってるみたいだけど、時々すごい勢いで散らかすから。それに、カバンに必要なものだけ入れて出かけるってことに、少しずつ慣れた方がいいって母さんが言っててね」
「そうか。確かにレン達は時々我でもビックリするほど、散らかすからな。それにフィオーナの言うことも一理ある。今までは我が全てやってきたが、こういうことも勉強していかなければ。後で礼を言ってこよう」
「うん――はは、真剣に選んでるね」

 お兄ちゃんがそう言って楽しそうです。
 だって、カバンに入るもので、みんなでいっぱい遊びたいんだもん。
 う~ん。ローレンスさんに貰った、いつも一緒に寝ているリス魔獣のぬいぐるみは、首掛けカバンの方に入れて持って行くから大丈夫。
 こっちの新しいカバンには、おもちゃだけしっかりと入れられるよね。
 あっ、そうそう。ぬいぐるみね、アイスの分もローレンスさんが買ってくれたんだ。おそろいのやつ。
 前の依頼の時に、この家の執事しつじのスレイブさんにみんなお揃いのヘラを貰って、依頼の報酬ほうしゅうでお揃いリボンを貰って。
 その後にぬいぐるみまでお揃いにしてもらったアイスは、とっても喜んで、少しの間どこへ行くにも、その三つをずっと持ったまま移動していたんだよ。
 もちろん僕達もお揃いが増えてニコニコ。これからもどんどんお揃いのものが増えたらいいな。
 ルリがおもちゃを前に、うーんとうなります。

『小さいおもちゃがいいかも』
『うん、いっぱい持って行けるなの』

 そうだね。大きいおもちゃはそんなにいっぱい入らないから、すぐに遊ぶものがなくなっちゃう。それなら小さいものがいっぱいの方がいいよ。
 僕達はおもちゃ箱の中から小さいものを選んで、カバンの中に入れていきます。
 そういえば、今度行く首都ベルンドアってどんな所なのかな? 街の様子とかは、ルストルニアとか、他の街とかと変わらないのかな? ただ大きいだけ?
 スノーラが住んでたのはもう何十年前だし、今の街がどうなっているか分からないよね。

「おにいちゃ」
「ん? なぁに?」

 隣で僕達を見てくれているエイデンお兄ちゃんに、ベルンドアのことを聞いてみます。

「べりゅんどあ、おおき? おうち、いっちょ? おみしぇいっちょ?」
「ああ、ベルンドアのこと? そうだね、ルストルニアよりももっともっと大きくて、大きな家もたくさんだよ」

 そう言って、エイデンお兄ちゃんが色々教えてくれました。
 大きい家、小さい家が詰まっている感じだって。
 それからね、ルストルニアでは、一番大きな建物は冒険者ギルドと商業ギルドでしょう? それはベルンドアも一緒なんだけど、大きさが全然違うみたいです。横にもたてにも大きくて、なんと十階建て。
 別にそこまで大きくなくてもいいんじゃない? って思ったんだけど……
 ベルンドアは首都で、他国との交流が盛んだから、人も物もあふれているんだって。だから毎日全部の部屋を使っても作業が遅れて、そのせいで夜中まで仕事が大変みたいです。
 でも他国との交流が盛んなぶん、色々な物が集まってくるから、お兄ちゃんでも見たことがない物がいっぱい売ってるんだって。
 そんな大きな、人も物もいっぱい集まるベルンドアを、一日で見て回るのは無理で、最低でも五日間くらいないと、全部を見られないってお兄ちゃんは言いました。それも最低限ね。
 お兄ちゃんでも五日間で最低減しか見られないなんて、僕が見て回ったら、何日かかるのかな?

「あ、そうだ。一番大事な話をしなくちゃね」

 大事な話?
 お兄ちゃんが立ち上がって本棚ほんだなの方へ。そして一冊の絵本を持って戻ってきました。
 それは勇者が凶暴きょうぼうな魔獣から国を守る絵本で、僕もルリ達も大好きな絵本です。

「この絵本の絵が一番似てたかな」

 絵本を読まずにペラペラページをめくるお兄ちゃん。そしてある絵のところで手を止めました。
 そこにはお城の絵が。もしかして……

「レンもルリ達も、お城見てみたいって言ってたでしょう。今度行くベルンドアには、大きな大きな、この絵と似ているお城があるんだよ」
「ほんちょ!!」
『お城ある!?』
『本当にお城あるなの!?』

 まさか本物のお城が見られるなんて!
 本当に大きなお城で、街の外、かべも関係なく、遠くからでもお城が見えるんだって。どのくらい遠くから見えるのかな?
 ただ、街に近づくと、逆に少しの間見えなくなるみたいです。
 どうしてって聞いたら、街を守っている壁が高すぎて、その壁のせいで、近づくと逆に見えなくなっちゃうみたい。お城のてっぺんの旗は少し見えるかもしれないらしいけど。
 ベルンドアの街を守る壁の高さは、ルストルニアを守っている壁の二倍くらい。場所によってはもっと高いみたいです。もちろん低い所もあるけど。
 だからこう、壁を見上げる形になっちゃって、壁の近くだと逆に中が見えなくなっちゃうんだよ。遠くからの方が、壁が低く見えるから、お城の上三分の一くらいが見えるんだって。
 それから、壁は三重になっていて、街の中心部に入るだけで、門を三つもくぐります。
 それくらいしっかりベルンドアを守っているってことだよね。もちろんそれは国の首都だからってこともあるけどね。
 でも、お城があるってことは……

「みんなが会ってみたいって言ってた、王様、王子様ももちろんいらっしゃるよ。ただ、お会いすることができるかは僕には分からないけど」
「おしゃま!!」
『王子様いる!! 凄い凄い!!』
『アイス、会いたいなの!!』

 そりゃあいるよね、王様、王子様。王妃おうひ様だってもちろんいるわけで。
 凄いなぁ、本当のお城に王様、王子様だよ。もちろん地球でも王様はいるし、お城もあるけどさ。施設にいた僕が会うことも、見に行けるわけもなくて。
 それに、王様に会うことはできなくても、お城は見られるってことでしょう?
 僕、それだけでもとってもうれしい! 
 お城はどんなだろう? この絵本のお城に似ているって言っていたけど。
 絵本のお城は全体的に明るい水色と白で、あとは綺麗なステンドグラスみたいな窓。絵本のお城だから、細かい所までは描いていないけど、そんな感じの絵です。
 それから絵本には、お城の中でパーティーをするシーンもあるんだけど、中もキラキラしているものばかり。壁も天井も、飾りもキラキラ。置物もキラキラ。
 ルリとアイスは、絵のページ何回もめくって、交互に何度も質問してます。
 僕も質問したかったけど、大体はルリ達が聞いてくれました。

『お城そっくり、色がそっくり?』
「そうだね、色も形もそっくりかな」
『旗、いっぱい付いてるなの?』
「うん、一番上に付いている旗が一番大きくて、他にもいっぱい付いているよ」
『お城の中に入った?』
「何回かね」
『王様会ったなの?』
「うん、何回かお会いしているよ」
『王子様も?』
「うん、王子様も」
『凄いなの!! アイスも会いたいなの!!』

 その他にもいっぱい質問したルリ達。
 やっぱりお城の中も絵本と同じで、かなりキラキラしているみたいです。
 あっ、それからね、絵本のお城と同じように、シャンデリアがあるみたいなんだけど、その他にも、光の魔法で色々な光の玉が浮いているそうです。それがゆらゆら揺れながらキラキラ光って、絵本よりももっと綺麗だって。
 あと、本物そっくりの大きな魔獣の銅像どうぞうが飾られているし、僕達が喜ぶ銅像も飾られているって。
 何の銅像か聞いたんだけど、「何かなぁ」って、お兄ちゃん、教えてくれませんでした。
 なんで? 僕達街には行くけど、別にお城には行かないでしょう? 外から見て終わりじゃない? 教えてくれればいいのに。
 ブーブー言う僕達に、お兄ちゃんは笑って銅像のお話をやめちゃいました。
 もっとルリ達は質問したかったみたいだけど、スノーラに「おもちゃは用意しなくていいのか?」って言われて、あっ、そういえばって顔をしていました。
 そうそう、僕達準備している途中だったんだよ。

「ほら、後でまた話してあげるから、先に準備しようね」
「りゅり、あいしゅ! じゅび、はやく!!」
『どんどん入るだけ入れちゃおう!!』
『もう一つのおもちゃ箱のも、ちゃんと入れるなの!!』

 僕達が作業を再開すると、またスノーラとお兄ちゃんが話していました。

「ふふ、さらに遊びに行くみたいになってるね。あれは何をしに行くか完璧かんぺきに忘れてるよ」
「お前が城の話などするからだろう。まぁ、レン達には楽しみなことがある方がいいからな。だが……そうだな、お前が途中で銅像の話をしなかったこと。我もあれのことは黙っておくか。その方が、何の銅像か分かった時、喜びが増すだろうからな」
「でしょう? だから言わなかったんだよ。レン達はお城が見られるとだけ思ってるからね。しかも外から」
「今からレン達の喜ぶ顔が目に浮かぶな……これが、ただ遊びに行くだけならもっとよかったのだがな」
「それはしょうがないよ」
「しゅのー、きちぇ!!」
『お兄ちゃんも! 手伝って!』

 話していないで、おもちゃ入れるのを手伝って! まだ聞きたいこといっぱいなんだから。
 それに僕達よりスノーラ達の方が綺麗に、いっぱい入れられるでしょう? 

『いっぱい入れてなの!!』
「分かった分かった、はぁ、まったく」
「さぁ、準備を終わらせちゃおうか」


 ◇ ◇ ◇


「ラジミール、報告が来た。あの子供は三日後にベルンドアへ行くようだ。その前に計画は実行できそうか?」
「はい、コレイション様。ギリギリですがなんとか。後はあれがしっかりと定着すれば、力を半分ほどは使えるようになるかと。そうなれば子供をさらってくるなど簡単にできるはずです」
「そうか。後はジャガルガ達がどう出るか……しかしそれもお前が力を手に入れれば関係はないが、先に動かれても面倒だ」

 もうすぐ私、コレイションの計画が動き出す。
 ここまで来るのは大変だったが、それもあと数日。ラジミールが力を手に入れれば、そこからはもう止まることはないだろう。
 しかしその前に、ジャガルガ達に邪魔をされる可能性がある。
 奴らは元々、報酬を払って実験に付き合わせていたのだが、あの子供に目をつけ、我々とたもとを分かつことになった。
 別に奴らがどうしようと構わないが、あの子供を攫う時に邪魔をしてきて、余計な手間をかけさせられてはたまらない。
 私は面倒な、そして余計なことに時間をかけるのは好まないのだ。
 あの子供が使えることが分かり、計画を少々変えたことで、予定よりも時間がかかってしまっている。
 これに関しては、今後の計画をよりスムーズに動かすために必要だと判断したので、問題はない。
 だが他のことで時間を取られるのはダメだ。
 まぁ本当は、あの子供に目をつけたのはジャガルガ達が先なのだが。
 最初ジャガルガ達があの子供を調べていると分かった時は、今度は子供に手を出すのか、程度にしか思わなかった。
 しかしその子供と、子供と常に行動を共にしているスノーラという男が、私の計画に関係するようになると、予定外のことが次々に起こり始めた。
 まさか、魔獣共をつかまえるための魔法陣まで、あの子供が消してしまうとは思ってもいなかった。
 魔法陣を作ったラジミールが失敗をしていたのかと、ジャガルガではないが私もそう考えた。だが、ここまで失敗してこなかった以上、それはないと断言できる。
 子供がどうやって魔法陣を消したか知らないが……本来の目的の魔法陣さえ見つからなければよかった。
 そのため、ダミーの魔法陣をジャガルガ達に見張らせておいて、私はラジミールと、秘密裏ひみつりに集めておいた他の者達で、本命の魔法陣を使うことにした。
 そうして最後まで本命のものは見つけられることはなく、しっかりとアレを手に入れることができた。他に一匹おまけが付いてきたが。
 目的の第一段階を達成したことで余裕ができた私は、例の子供について調べることにした。
 その結果、私の計画にどうしても足りなかった魔力が、あの子供で補えることが分かった。しかも補えるだけではなく、おりがくるほどの魔力を持っていたのだ。
 ――こうして今、私の計画は最終段階の手前まで来ている。
 今ラジミールがおこなっている段階が終了すれば、さらに真の計画を進めることができるだろう。
 ここに来るまで、本当に時間がかかってしまったが、私が実行しようとしている真の計画には、それだけの価値がある。
 この計画が成功すれば、またあの頃の素晴らしい世界がやってくるのだ。
 ほくそ笑む私に、ラジミールが頭を下げる。

「……ではコレイション様、私はまたあそこへ」
「分かった。くれぐれもやりすぎには気をつけろ。下手をすれば、全てまた最初からということになりかねない」
「心得ております。では」

 そう、無理は禁物きんもつだ。禁物だが、やるべきことはやらなければ。
 ラジミールが出て行き、私は別の者を呼ぶ。

「おい」
「はっ、ここに」
「子供の様子はどうだ?」
「変わりございません」
「ジャガルガの方は」
「動き出すタイミングを計っているようです」
「そうか、動きがあったらすぐに知らせろ」
「かしこまりました」

 もうすぐだ。もうすぐあのお方が復活をする。そうなれば私の理想の世界も復活するのだ。そして世界は私達のものに。もうすぐだ。


 ◇ ◇ ◇


「お~い、入るぞ」
「おにいちゃ! おはなち、ちゅじゅき!」
『さっきの続き!』
『いっぱい教えてなの!』
「ま、待って待って。これから行くんだから、あんまり話を聞かないで、楽しみにとっておいた方が……」
「おはなち!!」
「……何だこれ、どうなってるんだ? 荷物はもうまとまったのか?」

 部屋に入ってきたレオナルドが、レン達とエイデンの様子を見て、我、スノーラに聞いてきた。
 準備が終わったレン達は、すぐさまエイデンに先程の城の話の続きをしろと、凄い勢いで迫った。
 エイデンがその勢いに追い込まれているところに、レオナルドが来たのだ。
 レオナルドにその話をすれば、「話しすぎた兄さんが悪い」と言って助ける様子もなく、準備の終わったカバンに目をやった。

「何だこれ? よくここまで入れたな? 一度出したらもう元に戻らないんじゃないか?」

 そう、我の前には、もうこれ以上、紙一枚すらも入らないくらいにおもちゃを入れたカバンがあった。
 レオナルドの言う通り、二度としまい直せないであろうほどに、パンパンになっている。レオナルドは大笑いだ。

「帰りは結局、スノーラがしまって帰ることになりそうだな」
「だろうな。まぁ、本人達が満足していたし、その時の可愛い顔を見られたから、我はそれでいい。次回はもう少し少なく入れさせるがな」

 我にとっては、ここ最近の様々な事件の原因を調べるための大切な旅だが、レン達にはただの楽しい旅になりそうだ。
 ベルンドアへ行くまで後三日、どんな旅になるか。
 それに我々が戻ってくるまでに、何も起こらないといいのだが……レン達やローレンス達が帰ってくる場所が、いつも通りであってほしい。

「おにいちゃ!」
『早くお話!!』
『話してなの!!』

 はぁ、そろそろエイデンを助けに行くか。

「レン、ルリ、アイス、エイデンは少々疲れているようだ。また後で……」
「しゅのー、しー!!」
『今お話聞いてるなの!』
『スノーラ、今のお城、知らないんでしょ!』

 思っていたよりも凄い迫力で、今度は我の方へ向かってくるレン達。何も言わなければよかったか?
 エイデンがホッとした顔をして、レン達が我の方へ来ているうちに、部屋から出て行こうとしたのだが……気付いたレン達に追いかけられることになってしまった。
 すまんエイデン、助けられそうにない。


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