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第一章:勇者誕生?

第2ラウンド

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 さて、あとどれくらい経てば動き出すのか。
 ……待てよ、このまま斬り掛かったらいったいどうなるんだろう。

「……た、試してみても、いいかな?」

 そして、俺がデーモンスレイヤーを構えて動き出そうとした時だった。

「テエエエエキイイイイイイイイッ!」
「いきなり動くなよおおおおっ!」
「「スウェイン!」」
「ガルアッ! ……ガル?」

 一匹だけ首を傾げていたツヴァイルは置いておき、俺は突っ込んできた魔人に対してデーモンスレイヤーを叩きつけた。
 接触と同時に黒い雷が刀身から溢れ出し、魔人の右腕を炭化させる。
 それを脅威と感じたのか、魔人の表情に焦りが浮かび後方へ飛び退いた。

「……これが、デーモンスレイヤーの威力か」
「ス、スウェイン? それは、いったい?」
「まさか、魔剣か?」
「いや、なんでも神の遺物アーティファクトらしいぞ」
「「……ア、神の遺物ですってえっ!?」」
「……ガルル?」

 ツヴァイルだけが立ち位置の変化を気にしていることがおかしかったが、二人が魔人そっちのけで迫ってきているので簡潔に説明を済ませておこう。

「女神様が話し掛けてきた。んで、デーモンスレイヤーを貰った。以上だ」
「「……意味が分からない――」」
「イタイイイイィィイイイイイイイイッ!?!?」

 さらに詰め寄ろうとしてきた二人だったが、魔人の耳をつんざくような金切り声にハッとしたのか視線を正面へと向ける。
 うんうん、今は魔人との戦いの最中なんだから、よそ見は禁物だよ、君たち。

「ナンデ! イタイ! ワタシガ! イタイイイイィィイイッ!?」
「このまま押し切らせてもらうぞ!」
「援護するわ!」
「宵闇の魔法師の力、見せてあげるわ!」
「……ガウッ! ガウガウガウアッ!」

 ようやく我に返ったツヴァイルも戦線に加わり、俺たちは魔人との第2ラウンドを開始した。

「コロスウウウウウウウウッ!」
「誰が死ぬかよ!」
「合わせるわ!」

 炭化した右腕が再生していることには驚いたが、俺は構うことなくデーモンスレイヤーを袈裟斬りに放つ。
 接触を恐れてか、魔人は横に飛んで回避しようと試みたものの、先回りしていたルリエの大剣が魔人の首に迫る。
 左腕を伸ばして掴み捕ろうとした魔人だったが、何のためらいもなく引き戻された大剣を前に左手は空を切り、そこへ再びデーモンスレイヤーの刺突を放つ。
 さすがに距離を取らざるを得なくなったのか、魔人は再び大きく後方へ飛び退いたのだが、本命は俺のデーモンスレイヤーではないのだ。

「狙い通りね!」
「――!」

 魔人に対して最も威力を発揮するのはデーモンスレイヤーだが、常に警戒されてしまっては当てることも難しい。
 ならば、本命をデーモンスレイヤーと思わせることができれば別の攻撃を当てるのは容易いと考えたのだ。

「キイイイイイイイイィィッ!」
「ヴァースブレイク!」

 先ほどの手を抜いた攻撃とは違い、渾身の力を込めた斬り上げが地面を抉る。
 地面に埋まった刀身が解放された瞬間、今まで見たことのない程の剣速で大剣が魔人へと迫る。

「キイイイイアアアアアアアアッ!!」
「させないわ」

 空中では回避不能と魔法を発動させようとしたのだろうが、そこを狙ったのがリリルである。
 宵闇の魔法師というのがどういったものなのかは聞いていないが、魔人の魔法は不発に終わった。

「ナイスアシスト!」
「さっさと決めちゃいなさい」
「コロスウウウウウウウウッ!」

 回避も迎撃も無理だと判断した魔人は、両腕を犠牲にするつもりか大剣めがけて振り下ろしてきた。
 大剣と両腕がぶつかり合うと、衝撃波を発生させて突風が吹きつけてきた。
 砂煙が舞うが、俺は視線を一人と一匹から離さない。
 ルリエの大剣が砕け、魔人の両腕が吹き飛んだ。
 だが、魔人は再生することができる。
 このままでは武器を失ったルリエが殺されてしまう。

「アオオオオオオォォン!」

 そこに放たれたのが、ツヴァイルのブレスだった。
 魔人の着地と同時に着弾したブレスは、その身を再生すら追いつかせない威力で焼き尽くそうと襲い掛かる。
 ここで飛び出せばデーモンスレイヤーを当てることもできるかもしれない。
 だが、このような状況になっても、魔人の視線は俺を向いている。……いや、デーモンスレイヤーを向いているのだ。

「……マズいわね」
「……ブレスが、途切れる!」
「コオオオオロオオオオスウウウウウウウッ!!」

 まるでエレーナが戻ってきたかのような叫び声をあげ、大量の魔力がその身に集約されていく。

「くっ! 魔法が、解けるわ!」
「みんな! 伏せろ!」

 俺の声が届いたかは分からない。
 だが、直後には魔人を震源とした大爆発が巻き起こった。
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