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03 遊びに行こう 後編

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 右に海、左にも海。真っ直ぐの道路以外は一面青い。
長(上から見てみようか)[俯瞰ふかん
 長女の脳に彼女たちが乗っている魔石で走る車が映る。高度をどんどん上げていき車が小さくなったころ、海に囲まれるミジシマが見えた。こう見ると海は青いのではなく少し緑も入っているのだと分かった。
次「姉さん?なんで魔法を使ってるんですか?」
長「海が綺麗だな~って」
次(そんな理由で?)
 「私にも見せてください」
長「分かった」[転送]
次(魔法は上手いけど……)
 「綺麗です。ナツとヒカリにも見せてもいいですか?」
長「見せてあげて」
 すごく羨ましそうに見つめている妹たちに魔法を使う。
次[転送]
末「すごい、すごいよ!見える~」
三「すっごく綺麗!ありがとう、ユイ姉!」
長「どういたしまして」
運転手「殿下でんか。そろそろ到着致します」
末「だって!楽しみだね、ナツ姉」
三「そうだね。まずはジェットコースターだよね」
末「ミジシマの最恐ジェットコースターって4つあるんでしょ?」
長「そうね」
次「毎回言ってるけどグルングルンするのは嫌だからね………」
末「ツイ姉、回転するのダメだよねー。楽しいのに」
三「ねー」
次「君たち、おかしいわよ………」
長「ナツ、回転しないジェットコースターで最も怖いのは?」
三「マンクリシーカーだね。世界最大級だよ。全長2kmで落差は60m以上、スピードは154km/h超え。どう?」
末「何それ、めっちゃ楽しそう!」
長「ツイナ乗れる?」
次「なんかとても怖そうですが………大丈夫だと思います」
側仕え①「姫様、マンクリシーカーが見えて参りました。長くて赤いジェットコースターがご覧になれるでしょう?」
三「見える!あれが世界最大級………!」




 10分後、お忍びのエルフの王女様たちがミジシマに到着した。因みに、ハイエルフとはエルフの王族の総称である。
 いくらお忍びといっても警備の問題で平民として入園できるわけがない。伯爵令嬢お貴族さまとして入園することになった。貴族令嬢であれば平民は近付かないし、ミジシマの社員がはべっていてもなにも違和感はない。
 側仕えが買ってきたチケットで入園した4姉妹は、まず話に出ていたマンクリシーカーに向かった。
三「混んでるね」
長「当たり前よ」
ミジシマの人①「で………いえお嬢様方、此方こちらへどうぞ」
 案内の人が4姉妹を貴族用入り口に案内する。
次「緊張してきました………」
長「大丈夫よ、死ぬわけじゃあるまいし」
次(姉さん、例えが物騒ですよ)
ミジシマの人①「お乗りください」
 全員が乗り込んでシートベルトを閉める。寒暖調節なんて魔法で常にしているはずなのに震えが止まらない。
三「どうしよう、私も緊張してきたよ」
末「ナツ姉、今更?」
次「もう引き返せないですね………ブルッ」
長「そんなに緊張しないで」
ミジシマの人②「それでは出発します。いってらっしゃいませ」
 マンクリシーカーが動き出す。次女と三女がヒヤッと軽い悲鳴を上げる。驚いただけだ。
三「急!急すぎでしょ!」
次(!?)
末「ナツ姉ちょっと黙って」
三「なに言ってるの!ヒカリ冷静すぎ!」
末「ナツ姉が慌てすぎてるんだよ」
次「ねぇ!まだ上がるんですかぁ!」
長「まだ半分くらいしか上がってないよ」
次「ちょっと姉さん!掴まっていいでひゅか!」
 噛んだ次女に末子がゲラゲラ笑う。滑舌がおかしくなるくらい怖いということだ。
三「待ってぇ、無理無理!降りたいよー!」
末「ダメ。逃がさないから」
長(どこのヤンデレ彼女だよ)
次「あっあっ落ちる落ちるよー!」
 次女の悲鳴と宣告を頂上に残し急降下していく。本当はジェットコースターの成す角度は66°なのだが、乗っている人は直角より大きく感じるものだ。
長「ギャー!!」
末「ヤバいよー!!」
 次女と三女は怖すぎて声が出なかった。怖すぎると声が出ないというのは知られたことだが、彼女たちはここでその身で実感した。
 三女は死に物狂いでハンドルを掴んで次に起こることを予測するため目を閉じなかった。瞬きなし耐久1分半。その間にはさっきのよりは軽い山や暑いトンネル、急カーブなどを過ごした。彼女は途中から叫べるようになったが何を言っているかは自分でも分からなかった。
 2分後、恐怖のジェットコースターが終わって全員で息を吐いた。
次「私、絶対もう乗りません!」
三「1人じゃダメだね、これは。叫べないなんて初めて」
長「久しぶりに怖かった。ヒカリはどう?」
末「あたいはちゃんと楽しめたよ!」
 姉たちのゲンナリした視線を受けて「何?」と首を傾げた。
ミジシマの人②「お帰りなさいませ、お嬢様方」
側仕え②「如何いかがでしたか?」
三「ひとまず休む」
次「私も」
末「お姉ちゃんはヤワだねえ」
長「ベンチに案内して」
側仕え②「畏まりました。お飲み物も買って参ります」
三「お願い~」
 それからも末子に付き合わされた次女と三女が13時ごろギブアップしたので、長女が14時まで付き合った。帰りの車では長女以外が全員寝た。とても楽しい1日になったようだ。

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