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十四皿目 おいでませ精霊王

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 耳殻の裏側を舐め、耳たぶを食む唇。

 腰を抱く手で胸元の飾りや濡れそぼった陰茎を擦り、俺の反応をつぶさに観察する。

 酔っていようがいまいが、アゼルの手管はいつも巧みだ。

「お、怒ってないぞ? 俺は、っ、ん……はぁ……っ」
「お前を一番好きな俺を、諦めちゃだめだぁ……! 俺よりお前が好きな奴は、いない、いない……、ふっ、シャルぅ……っ」
「ん……っ、は、それは知ってるとも。それはそうと、なんで、あっ、そ、そうなったんだ? っ……ひ、ん、っ……あ、ぅ」

 俺の弱点を的確に攻める執拗なものだから、俺は喘ぎ声に邪魔をされて、うまく二の句が告げなかった。

 どうにか解読すると、俺が怒っていると思ったみたいだが、ちっとも怒っていない。

 困っていただけだ。
 嫌がってもない。

 アゼルにされて嫌なのは、俺を嫌うことや、俺以外を選ぶことぐらいだな。

 諦める云々はええと、俺が今後諦めてくれと言ったからか。

 それはお前に言ったんだぞ。

 俺がお前を諦めるわけがないのに、いつの間にそんな解釈をしたんだ。

 それだけはありえない。

 わかっているくせに、どうしてそんなことを不安に思ったんだろう。

(むむむ……俺の気持ち、解釈違いだ)

 アゼルは小さな声でだが、もにゃもにゃと〝俺も告白する〟〝俺が一番好き〟〝俺以外に好かれちゃダメだ〟と言うことを伝えてくる。

 ということは、昼間の騒動をどこかで聞いていて、持病の暴走癖が刺激されたのだ。

「んっ……う……お、前、俺が告白、されたのっ……知ってたの、か。ん、あっ、ぅ……」
「! うぅぅ~……っ! そう、俺に隠し事、しちゃだめだっ? おれはおまえ、ううっ、おまえがだいすきぃ……っ」
「っぁ……っ! ん……なるほど、く、アゼル、っあぜる、こっち……っ」

 ようやくアゼルがしょげていた理由を知った俺は、アゼルに声をかける。

 拘束された体を仰向けに返してもらうと、グリュ、と中のモノが擦れて、敏感な粘膜がうねった。

 覆いかぶさるアゼルの影になって薄暗い視界で、アゼルは眉根を寄せて瞳を潤ませる。

「シャル……俺以外に、好きって、言われんなよぉ……」
「ふっ……」

 アルコールで頬を赤くして、いつもより蕩けた目をした彼が、情けない顔で俺を見ながらクゥンと鳴いた。

 俺はつい、吹き出してしまう。
 笑われたアゼルは、余計に泣き出しそうになった。

 額をコツンとぶつけ、笑うなと抗議を込めて擦り付けられる。擽ったいぞ。

 手が使えないから、仕方がない。

 後ろ手に拘束された腕は動かせないので、そっと首を伸ばし、アゼルの唇にチュ、とキスをした。

「ん、ぅ……? ん」
「う……ふふ。告白はきっぱり断ったに決まっているだろう? 一瞬だって迷わなかった」

 もう一度キスをする。
 汗ばんだ肌が触れ合う行為も、特別なのだ。

 あわや大怪我、なんて騒動もアゼルだから、仕方ないなと笑ってしまう。



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