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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

184★魔晶石を作ってみました

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 ゲームの中で、何度も来ることになった、ちょっと‥‥‥いや、かなぁ~り苦労した思い出の地に、今降り立つ。
 私は、アバターライムの身体でゲーム内を探索したコトを思い出しつつ、恐竜もどきがやたらと出現する場所へと、今度は歩いて向かう。

 「ママ、歩いてなの?」

 「忘れたのコウちゃん?
  私が歩いた、些細な振動を感知して
  あいつらは出現するって‥‥‥」

 「そうだったね、飛んでだと
  なかなか現れなかったっけ‥‥‥」

 「そうなんですか? マスター」

 「思い出したコウちゃん
  うん、そうなのよ、ガッちゃん
  だから、こうやって歩き回るとね‥‥‥
  ほら、出た‥‥うん、まずは

  ティラノサウルスもどき?が
  群れで来たわね

  だいぶ、群れもガタイも大きいわね

  コウちゃんガッちゃん魔石ごと
  ぜぇ~んぶ食べちゃいなさい

  討伐証明なんて要らないから
  それよりも魔晶石を作る為に
  たぁ~んと食べてね

  私はその間、そこの磐座(いわくら)に
  座(ざ)して、魔力練りするから‥‥‥


  その前に、もうちょっと
  魔物呼びしておくから‥‥‥」

 そう言って、私は手のひらをちょっと切り、鮮血をそこに撒いて、風の魔法を使って広範囲に匂いを散らす。
 ここに、手負いの獲物がいると‥‥‥。

 「それじゃ、コウちゃんガッちゃん
  たぁ~んと食べてね‥‥‥

  あっ‥‥‥そうだ
  音に反応するのもいたわね」

 そう言って、私は手のひらの傷をさっさと治して、口に両手を添えて、大きく息を吸って‥‥‥。

 「ヤッホー‥ヤッホー‥ヤッホー‥‥‥」

 うん、良い感じに響いた感じかする。
 悲鳴よりも、コレの方が遠くまで届くのよねぇ‥‥‥。
 うん、地響きが聞こえるから、大きいガタイの群れが向かって来ているわね。

 ラッキーなのは、ゲームん中の恐竜もどき達より大きいガタイと群れってコトかな?
 あのダンジョン奥に居た恐竜もどき達ととんとんぐらいあるもの‥‥‥。
 これは、期待できるわね。

 うそぉ~‥‥‥草食の恐竜モドキの群れを追い駆けていた、ティラノもどきの群れがこっちに向かっているわ。
 そのおこぼれを狙う、小型の肉食恐竜の群れまで‥‥‥うわぁ~‥神様ありがとう。

 それを確認した私は、にっこりと笑って再度言う。

 「魔石ごと食べて、魔晶石を作ってね
  私は、魔力溜めに励むわ」

 そう言って、私は磐座(いわくら)の上に座り、意識を集中させるのに相応しい、結跏趺坐(けっかふざ)の姿をとる。
 私が座った磐座(いわくら)は、自然の気を満ち溢れさせていた。
 濃厚な魔力を放っているソレを、私は自分の中に取り込む為に、自分の中の魔力を溜める場所を強く意識した。

 そして、私は大気に意識を溶け込ませるというコトする。
 自然界に意識を同化させ、より多くの魔力を体内の魔力貯蔵庫に取り込む為に‥‥‥。

 私が意識を大気に溶け込ませ、周囲の魔力を集めている間に、コウちゃんとガッちゃんは、次々と現れる獲物をただひたすら食べまくっていた。
 魔晶石を作る為に食べているので、食わず嫌いはない。
 ただ、無尽蔵な胃袋にまかせて、ひたすら食べ続けた。

 しばらくして、私の中の魔力貯蔵庫が、もう大気の中の魔力や魔素や真素を吸収出来ないと訴えたところで、パチッと目を開けると、そこには丸々としたコウちゃんとガッちゃんが居た。

 「いやぁ~ん‥可愛い‥‥
  コウちゃんもガッちゃんも
  頑張って食べたのねぇ~‥‥‥」

 「うん、かなり食べたよ」

 「はい、マスター
  久々にお腹いっぱいです」

 私は、結跏趺坐(けっかふざ)の姿を解いて、磐座(いわくら)の上から降り、コウちゃんとガッちゃんの頭を撫でる。
 流石に、魔晶石なんて作ったコトが無いので、ここは物知りのコウちゃんかガッちゃんに作ってもらいましょう。

 「良かったね
  それで、魔晶石だけど
  どうやって作るの?」

 私の言葉にコウちゃんとガッちゃんは顔を見合わせてから、ちょっと考えて言う。

 「ここは、ガッちゃんに魔力譲渡して
  魔晶石を作ってもらうのが
  効率良いと思うよ、まま」

 「そうですね、ボクの方が
  コウちゃんよりも作り易いかな?」

 「それじゃ、まず俺からガッちゃんに
  魔力譲渡するね」

 そう言ったコウちゃんが、内側から輝くと、普段はモフモフの毛に隠れている額の角がニョイッと伸び、ガッちゃんの額の宝珠に何の抵抗も無く、スッと入った。
 途端に、ガッちゃんの額の紅い色の宝珠が金粉を含んだようになり、よく見ると紅い宝珠の中で、注がれた魔力?が渦巻いていた。

 「ママ、ガッちゃんの額の宝珠に触れて
  それで、ママの溜めた魔力を込めて
  そうすると魔晶石ができるよ」

 「わかったわ」

 私はコウちゃんの指示に従って、ガッちゃんの額の宝珠へと魔力を注ぐ。
 もう、これ以上は無理、魔力枯渇寸前まで注ぎ込んで、ガッちゃんから離れた。

 ガッちゃんの額にある宝珠は、いまやガッちゃんの身体ととんとんぐらまで膨張していた。
 ソレが唐突に収縮を始める。
 じわじわと元の大きさになって行く。
 完全に、元の大きさになった頃、ガッちゃんの宝珠から私達三人分の魔力の結晶である魔晶石が、コロリンッと零れ落ちる。
 その大きさは、ウズラの卵ほどの大きさだった。

 「やった、作れた」

 ガッちゃんがそう言えば、コウちゃんも頷く。

 「うん、意外と大きいの出来たな」

 「ねぇ‥‥‥コレで起こせる子っている?」

 コウちゃんとガッちゃんにそう振ると、ちょっとしょぼんとしてどちらも首を振る。

 「ゴメン、ママ、無理」

 「マスターの右腕輪の中で
  仮死状態で眠る者達の
  維持は出来ますが‥‥‥

  目覚めさせるとなると‥‥‥
  せめて、大人の男のこぶし程は
  必要です

  それも、1体に1つ、それぐらいの
  魔晶石が必要です

  それでも、最低限の条件です

  ボクは、身体を極限まで縮めて意識を保ち
  マスターから溢れ零れる魔力や
  コウちゃんから魔力補助

  それと、目覚めた直後の大量のご飯で
  なんとか維持しましたけど‥‥‥」

 「はぁ~‥‥‥そうよねぇ~‥‥‥
  そう都合良く、簡単に

  今3人で作った魔晶石で
  目覚めさせられないよねぇ‥‥‥」

 ちょっとがっかりする私に、コウちゃんは慰めるように言う。

 「とりあえず、出来た魔晶石を
  右の腕輪に入れてあげて
  それで、衰弱しきっているあいつ等も
  少し活性化するはずだからさ」

 「それもそうね‥‥‥はぁ~先は長いわね
  でも、確実な一歩よね

  今日は、とりあえず
  コレで帰りましょうか」

 「マスター、その方が良いと
  ボクも思います

  感知できる周囲に獲物になるモノは
  もう居ないみたいですから‥‥‥」

 「それじゃ、帰ろうか‥‥‥」
 









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