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0009★奪われてはならない理由

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 うれいを帯びた表情で答える大神官長に、武を司る者達は、市井の警護や迎撃より優先される内容に、疑問を口にする。

 「では、どのような意味があるのですか?」

 大神官長は、悲痛な表情で、その重い事実を口にする。
 もしも、直系の姫や皇子が奪われ、子が出来た場合の災厄を…………。

 「女神サー・ラー・フローリアン様が
  かつて封じた邪悪なる存在が
  地上に降りる為の形代かたしろになるのです」

 その場に居た者達は、その重すぎる事実に、無意識にゴキュッと喉をならしていた。
 そこに、左の補佐が、更なる事実を重ねる。

 「生まれた子供の数により
  彼の存在の力と影響が
  この世界に現れるのです」

 話しの成り行きを観察する為に、黙っていた第一皇子のビャクヤは、首を傾げて聞いてみる。

 「でも、それは、手遅れなのではないですか?」

 同じ疑問を持った、第二皇子のグレンも、質問を重ねる。

 「茶羽根ちゃばねの一族は、騙されて
  女や子供達を黒鼠族こくそぞく
  既に、奪われているのでは?」

 その問いに、大神官長は、少し肩を竦めて答える。

 「茶羽根ちゃばねの一族の血を引く者達は
  邪神の形代かたしろとなれる程の
  《力》を有してはおりません

  まして、他の種族との混血では
  羽根すら顕現けんげんしないでしょう」

 その言葉は、まさに、己の欲望によって、飛翔族の者達全てと、女神サー・ラー・フローリアンを裏切った、茶羽根ちゃばねの一族への評価だった。

 その重すぎる内容に、迎撃を望んでいた者達も、唇をかみ締める。
 初代の血筋を脈々と受け継ぐ、鳳皇ほうおうの血筋を奪われてはならないと………。
 もし、色濃き血筋が奪われ、子が生まれたならば、女神が初代と封じし邪神の形代かたしろを与えてしまうがゆえに………。

 飛翔族の頂点に立つ鳳皇ほうおうの決定に、そこにつどいし者達は肩を落す。
 それを確認して、大神官長は口を開いた。

 「それでは…………
  異議はありませんね」








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