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第31話 兄弟喧嘩は他でやれ
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やはり兄弟。よく似ている。
そっぽを向いたシルヴァモンドとフェルディナンド。
ミネルヴァーナ以外は「結構違うと思いますけど?」というが、ミネルヴァーナには口元に黒子があるかないかの違いにしか見えなかった。
要するにどちらもミネルヴァーナにはその他大勢にしか見えていない。
ただ、シルヴァモンドは腐っても夫である事は変わらず、飛び散ったバラの花びらを片付けるクーリン達を横目に2人は図々しさも同じ遺伝子を持つからか、堂々と椅子に腰かけた。
「お二人とも。こんな時間に何の御用です?」
「私は!妻である君とちゃんとやり直したいと思って…先ずは大盛況だったしお祝いをと思って」
「それなら僕もだ!いや!僕の方が早かったんだよ?ちゃんと肉巻きも買ったし…売り上げにも貢献した!」
――えぇっ?!ストーカー気質も同じなの?――
コソコソと遠目にあの大混雑でヒィハァしていたのを眺めていた兄シルヴァモンド。
客に紛れて買い物をしていったフェルディナンド。
正直、どっちもどっちなのだがミネルヴァーナにしてみると実際お金を出して品物を買ってくれたフェルディナンドに軍配‥‥は上がらなかった。
「さぞかし美味しかったでしょうね!ヤマブドウまで横取りする食いしん坊なんだから!」
マリーが掃除をしながら悪態を吐くと…。
「食べてないよ!野営中ならまだしも屋外で買ったものなんか食べるわけがないだろう!僕だって聞かなかったら行ったりしなかったよ!」
「誰に聞いたのです?今日の大通り公園での販売は貼り紙一つしておりませんが?」
「そ、それは…知り合いから…。でも!いいじゃないか。買ってやったんだから」
全員の目がギロっとフェルディナンドを睨みつける。
「食べもしないのに何故買ったのです。正直そんな言葉は聞きたくありませんでした」
失言に気が付いたフェルディナンドは「そうじゃない!」と弁明しようとするがもう遅い。作ったマーナイタも必死で売った他の4人もこの先何を言われても苦しい言い訳にしか聞こえない言葉を聞く気もない。
「フェルディナンド様。お引き取りください」
「そんなっ…次!次からはちゃんと食べるよ!」
「いいえ、結構です」
「そう言わずに!今日だって忙しかっただろう?次から僕も手伝おうと思ってわざわざ来たんだよ」
「手伝って頂かなくて結構。間に合っております」
ピシリと言い放つミネルヴァーナ。そして「ざまぁ」と言わんばかりのシルヴァモンドの表情にフェルディナンドが口にしてはならないシルヴァモンドの秘密を暴露した。
「ヴァーナ!」
<< はっ? >>
誰の事を言ってるのかは見当はつくが、愛称呼びをされる関係ではないしそもそもまともに話をした事もないフェルディナンドに呼ばれる筋合いもない。
「僕だけがヴァーナを救えるんだ」
「いえ、金魚すくいのように掬って頂かなくて結構です」
「強がらないでよ!ヴァーナが傷ついているのは知ってる。父上も母上もバカなんだ。次の当主は僕だし当主になればちゃんと追い出す。こんな結婚前から他の女と夜明けを迎えている兄上なんか!僕が忘れさせてあげる!」
「何を言ってる!嘘を吐くな!」
シルヴァモンドが勢いよく立ち上がるが、フェルディナンドは不敵な目でシルヴァモンドを睨んだ。
突然始まりそうな暴露大会、いや兄弟喧嘩だがミネルヴァーナも心中穏やかではない。
――待って待って。何がどうしてそう進化してるの?――
ミネルヴァーナの疑問はフェルディナンドの言葉で徐々に紐解かれる。
「聞いたんだ…殿下とエルレアから」
「エルレアっ?!」
シルヴァモンドは聞きたくなかった名前にビクリと体を震わせた。これ以上エルレアとの事をミネルヴァーナに知られるのは不味い。
前日はけんもほろろに追い返され離縁の意思が揺らぐどころかカッチカチに固い上に時期を早めて欲しいと言われ、そのまま話を続けると心が砕けそうになったので話を切り上げ退散した。
今日こそは!と祝いを口実に関係修復をする為にやって来たのにエルレアの事を持ち出されては困るのだ。
「ヴァーナ!聞いてよ。兄上は毎朝エルレアと朝を迎えてるんだ。それが何を意味するか解るだろう?この事は父上も母上も了承済みであの家で!あの家でヴァーナを救えるのは僕しかいないんだ!」
「嘘を言うな!」
「嘘じゃないだろう!兄上は汚いんだよ。あんな玉座にしか興味がない女に昔から傾倒してたくせに!これ幸いと毎晩楽しんでるんだろ!もうあの女でいいじゃないか!書面上だけ兄上の妻であるヴァーナで我慢してやると言ってるんだ!」
シルヴァモンドとフェルディナンドはお互いの言い分をぶつけ合うのだが、ミネルヴァーナとしてはどうでもいい話であって、ついつい苛立ってしまった。
ガンッ!!ガタターン!!
テーブルを叩いたところで大きな音など出るはずもなく、面倒になったので誰も座っていない椅子を蹴り上げた。勢いよく椅子が転がっていく。
「いい加減になさって!兄弟喧嘩は他でやって頂戴!」
ビシッと玄関を指差したミネルヴァーナ。
その目には見る間に涙が溢れてくる。
シルヴァモンドとフェルディナンドは静かになった。
「ミーちゃん!大丈夫?!」
「マリりん‥‥うぅっ」
「すまない」「ごめんよ」と面倒な男2人が「泣かせてしまった!」と気遣ったのだが違う。
「マリりん…小指が思いっきりイっちゃった…」
椅子を蹴り上げた時、思いのほか足の小指を打ち付けてしまい、ミネルヴァーナは物理的な痛みに涙ぐんでしまったのだった。
そっぽを向いたシルヴァモンドとフェルディナンド。
ミネルヴァーナ以外は「結構違うと思いますけど?」というが、ミネルヴァーナには口元に黒子があるかないかの違いにしか見えなかった。
要するにどちらもミネルヴァーナにはその他大勢にしか見えていない。
ただ、シルヴァモンドは腐っても夫である事は変わらず、飛び散ったバラの花びらを片付けるクーリン達を横目に2人は図々しさも同じ遺伝子を持つからか、堂々と椅子に腰かけた。
「お二人とも。こんな時間に何の御用です?」
「私は!妻である君とちゃんとやり直したいと思って…先ずは大盛況だったしお祝いをと思って」
「それなら僕もだ!いや!僕の方が早かったんだよ?ちゃんと肉巻きも買ったし…売り上げにも貢献した!」
――えぇっ?!ストーカー気質も同じなの?――
コソコソと遠目にあの大混雑でヒィハァしていたのを眺めていた兄シルヴァモンド。
客に紛れて買い物をしていったフェルディナンド。
正直、どっちもどっちなのだがミネルヴァーナにしてみると実際お金を出して品物を買ってくれたフェルディナンドに軍配‥‥は上がらなかった。
「さぞかし美味しかったでしょうね!ヤマブドウまで横取りする食いしん坊なんだから!」
マリーが掃除をしながら悪態を吐くと…。
「食べてないよ!野営中ならまだしも屋外で買ったものなんか食べるわけがないだろう!僕だって聞かなかったら行ったりしなかったよ!」
「誰に聞いたのです?今日の大通り公園での販売は貼り紙一つしておりませんが?」
「そ、それは…知り合いから…。でも!いいじゃないか。買ってやったんだから」
全員の目がギロっとフェルディナンドを睨みつける。
「食べもしないのに何故買ったのです。正直そんな言葉は聞きたくありませんでした」
失言に気が付いたフェルディナンドは「そうじゃない!」と弁明しようとするがもう遅い。作ったマーナイタも必死で売った他の4人もこの先何を言われても苦しい言い訳にしか聞こえない言葉を聞く気もない。
「フェルディナンド様。お引き取りください」
「そんなっ…次!次からはちゃんと食べるよ!」
「いいえ、結構です」
「そう言わずに!今日だって忙しかっただろう?次から僕も手伝おうと思ってわざわざ来たんだよ」
「手伝って頂かなくて結構。間に合っております」
ピシリと言い放つミネルヴァーナ。そして「ざまぁ」と言わんばかりのシルヴァモンドの表情にフェルディナンドが口にしてはならないシルヴァモンドの秘密を暴露した。
「ヴァーナ!」
<< はっ? >>
誰の事を言ってるのかは見当はつくが、愛称呼びをされる関係ではないしそもそもまともに話をした事もないフェルディナンドに呼ばれる筋合いもない。
「僕だけがヴァーナを救えるんだ」
「いえ、金魚すくいのように掬って頂かなくて結構です」
「強がらないでよ!ヴァーナが傷ついているのは知ってる。父上も母上もバカなんだ。次の当主は僕だし当主になればちゃんと追い出す。こんな結婚前から他の女と夜明けを迎えている兄上なんか!僕が忘れさせてあげる!」
「何を言ってる!嘘を吐くな!」
シルヴァモンドが勢いよく立ち上がるが、フェルディナンドは不敵な目でシルヴァモンドを睨んだ。
突然始まりそうな暴露大会、いや兄弟喧嘩だがミネルヴァーナも心中穏やかではない。
――待って待って。何がどうしてそう進化してるの?――
ミネルヴァーナの疑問はフェルディナンドの言葉で徐々に紐解かれる。
「聞いたんだ…殿下とエルレアから」
「エルレアっ?!」
シルヴァモンドは聞きたくなかった名前にビクリと体を震わせた。これ以上エルレアとの事をミネルヴァーナに知られるのは不味い。
前日はけんもほろろに追い返され離縁の意思が揺らぐどころかカッチカチに固い上に時期を早めて欲しいと言われ、そのまま話を続けると心が砕けそうになったので話を切り上げ退散した。
今日こそは!と祝いを口実に関係修復をする為にやって来たのにエルレアの事を持ち出されては困るのだ。
「ヴァーナ!聞いてよ。兄上は毎朝エルレアと朝を迎えてるんだ。それが何を意味するか解るだろう?この事は父上も母上も了承済みであの家で!あの家でヴァーナを救えるのは僕しかいないんだ!」
「嘘を言うな!」
「嘘じゃないだろう!兄上は汚いんだよ。あんな玉座にしか興味がない女に昔から傾倒してたくせに!これ幸いと毎晩楽しんでるんだろ!もうあの女でいいじゃないか!書面上だけ兄上の妻であるヴァーナで我慢してやると言ってるんだ!」
シルヴァモンドとフェルディナンドはお互いの言い分をぶつけ合うのだが、ミネルヴァーナとしてはどうでもいい話であって、ついつい苛立ってしまった。
ガンッ!!ガタターン!!
テーブルを叩いたところで大きな音など出るはずもなく、面倒になったので誰も座っていない椅子を蹴り上げた。勢いよく椅子が転がっていく。
「いい加減になさって!兄弟喧嘩は他でやって頂戴!」
ビシッと玄関を指差したミネルヴァーナ。
その目には見る間に涙が溢れてくる。
シルヴァモンドとフェルディナンドは静かになった。
「ミーちゃん!大丈夫?!」
「マリりん‥‥うぅっ」
「すまない」「ごめんよ」と面倒な男2人が「泣かせてしまった!」と気遣ったのだが違う。
「マリりん…小指が思いっきりイっちゃった…」
椅子を蹴り上げた時、思いのほか足の小指を打ち付けてしまい、ミネルヴァーナは物理的な痛みに涙ぐんでしまったのだった。
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