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第36話  この結婚、ケリつけさせて頂きます③-①

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何もいらないと思い、国すらボロボロにして捨ててやろうと考えていたステファンだったが、売り言葉に買い言葉。初めて自分に向かって歯向かってくるミネルヴァーナを見返してやろうと試みた。

ステファンの部屋で従者達が慌てふためく様子に東の離宮に引っ越しをしているのかと専属執事は意気揚々とやって来た。

ステファンが離宮に住まいを移すとの手紙に王妃はいたく喜んでいつもは声を掛けてくれるだけなのに、その日ばかりは手を握り「ありがとう」と言ってくれた。

――それだけでパン10個は飲み物無しで食べられる!――

そう思っていたが部屋の中を見て息も心臓も止まった気がした。


「殿下…あの…」
「なんだ?」
「いえ、お体はもう?」
「あぁ、何の問題もない。ところで議長はいるか」
「議、議長?は、はい。議会棟の議長室におられますが…陛下ではなく?」
「父上に用はない。父上は議会が決定した事にサインするだけだからな」
「何をされるのです?あのっ」

咳き込む事も、ヒューヒューと声に息が混じる事もなくステファンは自分の足でしっかりと廊下を歩いていく様子が執事には幻を見ているようで信じられなかった。

――起き上がるのも困難だったんじゃないのか?――

混乱しながら後を追いかけるが、右足と左足が一緒に出てしまって盛大に転んでしまい、廊下の中央に敷いてあるカーペットが大きく捲れあがってしまった。

這う這うの体でやっと追いついた時にはもう議長室の扉を開けてしまったステファン。
何を言うつもりだ?余計な事を言わないでくれ。そんな執事の願いは虚しくステファンの口からは衝撃の事実が飛び出した。

「殿下!どうなされたのです!」

驚く議長が飛び上がって立ち上がり、近寄ろうとするがステファンは手で制した。

「近くに来なくてもその地獄耳ならしっかりと聞こえるだろう」

まるで廊下に、いや議会棟にいる者全てに聞こえるような声でステファンは王妃の秘密をぶちまけた。

「第2王子は国王の子にあらず。王家の血などただの1滴も流れていない紛い物だ」
「なんですと?!殿下!それはまことですか!」
「事実を述べずになんとする。秘密を知るが故に毒殺されそうになり、この日まで身を守って来たのだ。国王の、いや、先代国王の血を引くのは私と…シルヴァモンド、ベルセール家の子息フェルディナンド。あとは…女児だな」

当然ハチの巣をつついたように大騒ぎになり、王妃の耳にもそして国王の耳にも直ぐに届く。

「ステファン。苦し紛れの嘘であれば例え我が子と言えど許される事ではない。解っているな?」
「もとより。陛下は御存じですか?人には血に ”型” と言うものが存在する事を」
「型だと?」
「えぇ。我が国は医療面で大きく他国に出遅れている国。私の仮病、詐病ですら見抜けなかったのが何よりの証拠です。ですが、型を見る方法があるのですよ」

まだ試験段階ではあるものの、血液の合致で親子を判定したりする方法が隣国で出来た。
冗談半分で臣下の親子を試してみれば国王も理解は出来た。

ただ、父親と母親の血液の「型」が異なるのは当たり前でそれだけをもってして否定する事は出来ない。それを念頭に置き国王はB型という血液の型、王妃はO型という型だと判明した。

ステファンはBという型だったが、他に髪の色も巻き癖も、爪の形も今の体形ですら国王の若い頃によく似ていた。しかし第2王子はAという型で、「否定はできないが是とも出来ない」と判定された。

「違うのです!これは何かの間違いです!」

反論する王妃だったが、それまで王妃が実弟と非常に仲睦まじく「姉弟」の関係を超えたものだったと証言する従者が出てきてしまった。

従者もまた、我先に保身をすることで生き延びる事を選んだだけ。
即日で第2王子は廃嫡。王妃は「聴取する」と幽閉をされてしまった。

事はそれでは収まらない。第2王子が即位することありきでシルヴァモンドが第3王子となったのだが、王家の血を残す事を前提とし、女児を排除した場合は現国王ではなく先代国王の血を引くものが継承者。
何もかも覆った事で、ステファン、シルヴァモンド、フェルディナンドのみが継承する権利を持つ事となった。



この中で現在婚姻をしているのはシルヴァモンドのみ。
ステファンは「そもそもが違うのだから妃の選定も見直すべき」と議会を通してシルヴァモンドとミネルヴァーナの婚姻を無かった事とし、3人のうちいずれかがメレ・グレン王国の第11王女を妃とするべきだと訴えた。

その上で…

「シルヴァモンドには情を交わした女がいる」とエルレアとの関係も暴露した。

「貴様‥‥汚いぞ」
「汚くもなる。欲しいものを手にするには当然の事だ」

睨むシルヴァモンド、せせら笑うステファン。その2人を見てフェルディナンドはほくそ笑んだ。

「勝手にやっててよ。アンタたちが揉めれば揉めるほど中立の僕にヴァーナは落ちてくるから」


メレ・グレン王国との確約は間に正教会も入っていてル・サブレン王国で決めて良いものでもない。

やっとここにきて大問題になる事を呆けていた国王や、ずっと欺かれていた事に気が付かなかった議会は認識をすることになったのだった。

「何を言われても私はエルレアと関係は持ってない!!」

シルヴァモンドは抵抗をしたがその言葉を聞く者は誰一人いなかった。
何故なら、エルレアと公爵夫人がシルヴァモンドとの関係を認めてしまったからである。

権力がそこまで、手の届く位置にある。
欲にまみれた女2人が諦めるはずなどなかったのだ。
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