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文句をため息に変換作業
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伯爵さまの執務室ではヴィヴィアンと家令のスチュワートが
次年度の領地での作付けについて話をしています。
「来年も今年と同じで良いのではないか」
「そうですね。どこかの令嬢に使い込みをされていなければ!
今年と同じで良かったのですが、同じとするなら税収を上げるしかありません。
ですが、ここ数年は天候にも恵まれていましたが
そろそろ不作や洪水についても備蓄を備えて、対策をする時期です。
来年度は今年の1.3倍の作付けが望ましいと考えます」
「1.3倍か・・・小麦か」
「小麦もですが、ジャガイモ、カボチャなども品種を増やし、備蓄し
他の野菜も収穫量を上げ、外貨を稼いでおくことも大事です」
「そうだな・・鉱山でも我が領にあれば良かったのだが」
「それですが、ルピナスという鉱物が少量見つかっております」
「ルピナス?なんだ?聞いたことがないぞ」
「魔石の種類の一つです。魔力が弱いので帝国では一度粉砕し
再度結晶化させて、暖炉などに放り込むそうです。
そうすると、安価な魔石で1週間は暖がとれると」
「そうなのか。どのくらい見込めそうだ?」
「期待はしないほうがいいくらいとしか、今は言えません。
と、言いますのも北東のリベニア川の三角州になっている部分で
冬場に円状の氷、アイスディスクが出る付近で、最近発見されました。
おそらく、上流というか源流域でルピナスが採掘されてそのかけらが
流れ込んでいると思われるのですから」
「と、いう事は上流のほうでは、結晶となった大きなものが
採掘されている・・という事だな」
「そうですね。ですが我が領ではありませんので、迂闊な事は出来ません」
「とりあえず、そのルピナスについてはまた調べてみてくれ」
「かしこまりました」
そこに、コンコンと扉をノックする音が聞こえます。
「おそらく、キャンティ様の屋敷に付かせている者だと思います」
「わかった。通せ」
30代半ばの精悍な顔つきの男が静かに入室します。
「動きがありましたか?」
「目立った事は何も。ですが、本日は頻りに困ったと仰せられておりました」
「困りごとですか・・」
「はい、野菜の配達人も断ってしまったので、伝える方法がないと」
「あなた方が気が付かれたという可能性は?」
「それはないと思います。
言われておりました魔法についても誰一人感知をしておりませんし、
かなり近くまで薪代わりの枯れ枝を広いにも来られておりましたが、
ご様子も一向に変わらず拾っておられました」
スチュワートは顎に手をあてて考え込みます。
「わかりました。明後日それとなく様子伺いに出向いてみましょう」
「明日ではなく、明後日ですか?」
「えぇ、そんな事を言った次の日に行ったら、墓穴を掘る気がしますのでね」
「わかりました。それと・・」
「なんです?」
「別邸の中はいかがいたしますか?」
「別邸は平屋ですし、窓から中が丸見えの状態です。まさか湯あみや
寝ているところを監視するわけにもいかないでしょう」
「わかりました。では別邸の中は窓から見える範囲で監視を続けます」
スチュワートはヴィヴィアンをちらりと見ます。
「な?なんだ?」
「いえ、それでよろしいでしょうか?」
「うーん・・明後日と言ったな。明後日はリンダがいるのだが・・」
はぁ・・っと大きなため息をつくスチュワート。
「明後日はわたくしがキャンティ様のところに参ります。
旦那様はご自由にされてください。
あと、予定を変更するときは仰ってください。
リンダ嬢は明日の予定だったでしょう?」
「しかし、それで何か伺いを立てたいと言い出したらどうする?」
「それは、わたくしが聞いて、旦那様に報告し、回答を翌日以降に
持っていけば済むことではありませんか?」
「そうなんだが、リンダの前でアレの話はしたくないのだ」
額に手を当てて、スチュワートが言います。
「リンダ嬢はいつ頃、帰られるのです?」
「夕方になると聞いているが」
「では、午後にでも行って聞いて参ります。
旦那様には夜半に報告し回答をもらって、翌日わたくしが伝えます。
それならはよろしいでしょう?」
「そうだな。それで頼む・・・しかし買い癖は治らぬものだな」
「そうでございますね。女の子の日と褒美を伸ばし、買い物だけさせるとはね」
「は?何を言っている!リンダは違うぞ。あの女だ!」
両手の手のひらを上にし、少し上げてスチュワートは呆れ気味です。
「キャンティ様に何かを買わされたのですか?違うでしょう?」
「ふん、きっとリンダがあれこれ買ってもらうから、羨ましいのだろう。
あてつけがましく、リンダの来る日を狙って頼み事とは!」
「リンダ嬢が来られる日の変更は、わたくしも先程、初めてお聞きしましたが?」
「ヘッ?あ、そうだったな。フン!たまたまだ!
下手な鉄砲数撃ちゃ当たるというやつだ」
「旦那様・・3か月以上音沙汰のないキャンティ様は何も撃ってませんよ」
たまの情事に対しての貢ぎ具合を考えろと、喉まで出た言葉をため息に変えて
執務室を後にするスチュワートでした。
次年度の領地での作付けについて話をしています。
「来年も今年と同じで良いのではないか」
「そうですね。どこかの令嬢に使い込みをされていなければ!
今年と同じで良かったのですが、同じとするなら税収を上げるしかありません。
ですが、ここ数年は天候にも恵まれていましたが
そろそろ不作や洪水についても備蓄を備えて、対策をする時期です。
来年度は今年の1.3倍の作付けが望ましいと考えます」
「1.3倍か・・・小麦か」
「小麦もですが、ジャガイモ、カボチャなども品種を増やし、備蓄し
他の野菜も収穫量を上げ、外貨を稼いでおくことも大事です」
「そうだな・・鉱山でも我が領にあれば良かったのだが」
「それですが、ルピナスという鉱物が少量見つかっております」
「ルピナス?なんだ?聞いたことがないぞ」
「魔石の種類の一つです。魔力が弱いので帝国では一度粉砕し
再度結晶化させて、暖炉などに放り込むそうです。
そうすると、安価な魔石で1週間は暖がとれると」
「そうなのか。どのくらい見込めそうだ?」
「期待はしないほうがいいくらいとしか、今は言えません。
と、言いますのも北東のリベニア川の三角州になっている部分で
冬場に円状の氷、アイスディスクが出る付近で、最近発見されました。
おそらく、上流というか源流域でルピナスが採掘されてそのかけらが
流れ込んでいると思われるのですから」
「と、いう事は上流のほうでは、結晶となった大きなものが
採掘されている・・という事だな」
「そうですね。ですが我が領ではありませんので、迂闊な事は出来ません」
「とりあえず、そのルピナスについてはまた調べてみてくれ」
「かしこまりました」
そこに、コンコンと扉をノックする音が聞こえます。
「おそらく、キャンティ様の屋敷に付かせている者だと思います」
「わかった。通せ」
30代半ばの精悍な顔つきの男が静かに入室します。
「動きがありましたか?」
「目立った事は何も。ですが、本日は頻りに困ったと仰せられておりました」
「困りごとですか・・」
「はい、野菜の配達人も断ってしまったので、伝える方法がないと」
「あなた方が気が付かれたという可能性は?」
「それはないと思います。
言われておりました魔法についても誰一人感知をしておりませんし、
かなり近くまで薪代わりの枯れ枝を広いにも来られておりましたが、
ご様子も一向に変わらず拾っておられました」
スチュワートは顎に手をあてて考え込みます。
「わかりました。明後日それとなく様子伺いに出向いてみましょう」
「明日ではなく、明後日ですか?」
「えぇ、そんな事を言った次の日に行ったら、墓穴を掘る気がしますのでね」
「わかりました。それと・・」
「なんです?」
「別邸の中はいかがいたしますか?」
「別邸は平屋ですし、窓から中が丸見えの状態です。まさか湯あみや
寝ているところを監視するわけにもいかないでしょう」
「わかりました。では別邸の中は窓から見える範囲で監視を続けます」
スチュワートはヴィヴィアンをちらりと見ます。
「な?なんだ?」
「いえ、それでよろしいでしょうか?」
「うーん・・明後日と言ったな。明後日はリンダがいるのだが・・」
はぁ・・っと大きなため息をつくスチュワート。
「明後日はわたくしがキャンティ様のところに参ります。
旦那様はご自由にされてください。
あと、予定を変更するときは仰ってください。
リンダ嬢は明日の予定だったでしょう?」
「しかし、それで何か伺いを立てたいと言い出したらどうする?」
「それは、わたくしが聞いて、旦那様に報告し、回答を翌日以降に
持っていけば済むことではありませんか?」
「そうなんだが、リンダの前でアレの話はしたくないのだ」
額に手を当てて、スチュワートが言います。
「リンダ嬢はいつ頃、帰られるのです?」
「夕方になると聞いているが」
「では、午後にでも行って聞いて参ります。
旦那様には夜半に報告し回答をもらって、翌日わたくしが伝えます。
それならはよろしいでしょう?」
「そうだな。それで頼む・・・しかし買い癖は治らぬものだな」
「そうでございますね。女の子の日と褒美を伸ばし、買い物だけさせるとはね」
「は?何を言っている!リンダは違うぞ。あの女だ!」
両手の手のひらを上にし、少し上げてスチュワートは呆れ気味です。
「キャンティ様に何かを買わされたのですか?違うでしょう?」
「ふん、きっとリンダがあれこれ買ってもらうから、羨ましいのだろう。
あてつけがましく、リンダの来る日を狙って頼み事とは!」
「リンダ嬢が来られる日の変更は、わたくしも先程、初めてお聞きしましたが?」
「ヘッ?あ、そうだったな。フン!たまたまだ!
下手な鉄砲数撃ちゃ当たるというやつだ」
「旦那様・・3か月以上音沙汰のないキャンティ様は何も撃ってませんよ」
たまの情事に対しての貢ぎ具合を考えろと、喉まで出た言葉をため息に変えて
執務室を後にするスチュワートでした。
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