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♡歩いて7歩
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「早く入れよ。雨が家の中に入っちまうからな」
せめて腰布は側面で結んでいただけないものでしょうか。
いえ、布が長方形ではないのですね。鍛え上げられたかどうかは存じませんがお尻が丸だしで御座います。
見たい訳では御座いませんが、シャナリシャナリと歩くわけではないので、一歩を踏み出される度に気になる部分が後部から揺れて見えてしまうのは見ているわたくしに非があるので御座いましょうか。
「叔父から頼まれたんだろう?街に行く時に送ってってやるから」
マクシム様は少し趣…いえ、傾きのあるテーブルをガタガタと引っ張って寝台のようなものの近くに寄せると、わたくしに「座れ」と申されます。
「ご厚意に感謝いたしますわ」
歩いて7歩。玄関だとやっと認識できた扉から歩いて7歩で寝台??に到着致しました。見回しますと一辺が3.5メルト程でございましょうか。女の足で7歩ですので男性ですと5歩?
※1メルト=1メートル
室内、いえ失礼いたしました。家屋はお部屋が1つ。そこに寝台と向かいに小さな竈が御座います。引っ張ったテーブルは気を付けないと竈の薪になりそうな近さでございます。
入り口の扉の他には、木の板を立てかけてガラスの代用とされている窓が1つ。
どうみてもクローゼットは御座いませんし、湯殿も御座いません。
もしや、一旦外に出て…とも思ったのですが、入ってくるときに、建物の前と両側面には何も御座いませんでしたし、反対側は木の板をガラス代わりにしている窓から見える限りでは‥‥自然しか見えません。
ゴトリ
「これしかねぇから。飲め」
テーブルに置かれているのは…ボウル?でございましょうか。
なみなみと注がれているのはおそらくミルク。そっと触れると温かくは御座いません。
「大丈夫だと思うぞ。2週間前に搾らせてもらった生乳だ」
――2週間前でも生乳――
いえいえ、そんな事を考えてはいけません。
ですが…夜会などでフルーツポンチが入っている程では御座いませんが取っ手もなく、帽子の代用も出来そうな【茶器】に注がれた【2週間前の生乳】‥‥。
ふとに気になりました。こんなに大量のミルクを飲んだら御不浄は何処にあるのか…と。
まさかと思いますが…少しだけ場所の特定をしてしまいましたが念のため。
「マクシム様」
カチッカチッ 竈の前で何かをされているようです。
少し耐性が出来ました。腰布より下部は敢えて見ない。しゃがまれているマクシム様の全体像を見るに【背面】は辛うございます。
「マクシム様」
「どした」
「あの…御不浄はどちらにございますの?」
「なにそれ」
困りました。マクシム様は御不浄をご存じない…やはり人に非ず。
しかし、わたくしには必要で御座います。恥を忍んで…。
「あの、御小水とか…はどちらで?」
「外」
――やはり――
考えていると、木の板を窓に当て始めます。雨が降ってきたようで御座います。
御不浄がないとなると、こんなに大量のミルクは頂けません。もっと小さな茶器はないかと見回しますが、正直茶器よりもマクシム様の装いをどうにかするのでは?と考えるに至りました。
だって…このミルクが入っている器以外に、食器と呼べるものが見当たらないのです。
当然カトラリーも見当たりません。
「マクシム様、お食事はどうされていますの?」
「飯?腹が減ってるのか?」
「いえ、わたくしではなく、マクシム様が日頃お食事をどうされているかと」
「飯は山に行った時かな。体を洗うついでに済ませる事が多い」
聞き捨てならない言葉が聞こえます。【体を洗う】と言う事は離れた場所に湯殿があるのでしょうか。あぁそう考えればお食事は食事室として別に建物があるのかも知れません。
公爵家でも屋敷の中にはありましたが、部屋としては別々で御座いました。
「では、後ほど食事室でお食事でございますね?」
「は?雨降ってきたから行かないけど?」
「えぇっと…ではお身体は…」
「この雨だからな。明日は良い感じになってると思うが滝壺の水は冷たいぞ?大丈夫なのか?」
「た、滝壺と申されますと…」
「山の中に滝があるんだよ。滝壺で泳げば体が洗えるだろ?滝の下は危険だから行くなよ」
――行きません。いえ。行けません――
聞けば完全自給自足生活をされておられ、罠に動物がかかった時は数日はご馳走なのだそうです。その他には山菜や木の実、キノコ。時に魚が獲れれば魚を召し上がるのだそうですが、食事室というものはなく大自然の中で召し上がるのだとか。冬場は食料が少なくなるので木の実の時期に貯め込んだり、年に1、2度やって来る叔父様が食料を運んできてくれるのだとか。
――叔父様、食料も大事ですが衣類も――
そして寝所で御座います。椅子を兼用しておりましたがやはり寝台でございました。
しかし…シーツは茶色く変色しており湿り気も御座います。臭いも致します。
最大の謎は人一人が丁度のサイズ。シングルの寝台の半分ほどの幅。
「上が良い?下が良い?下だと苦しいだろうから上がいいか?」
苦しいとは何でございましょう?
ふと足元を見ると、外は雨。隙間から入り込んだ雨水が床を濡らしております。
確かに、「下」で寝ればこの雨水で非常に寝苦しい事でしょう。
しかし、違いました。
抱き合った状態で眠ると平然な顔で仰るマクシム様。
と、言う事はわたくし、上でも下でもほぼ全裸の男性に抱かれると言う事ですの?
言葉を失ったわたくし。
マクシム様は「飲まないのか?」と仰るや否やボオルのような「茶器」を手に取りミルクを飲まれました。しかし、口に含んだ瞬間に玄関扉を開けて、ペっと吐き出されるとミルクを全て捨ててしまわれたのです。
「腐ってるな。良かったなぁ、飲まなくて」
――やはり――
わたくし、1週間目が明日だったらいいなと思わざるを得ませんでした。
せめて腰布は側面で結んでいただけないものでしょうか。
いえ、布が長方形ではないのですね。鍛え上げられたかどうかは存じませんがお尻が丸だしで御座います。
見たい訳では御座いませんが、シャナリシャナリと歩くわけではないので、一歩を踏み出される度に気になる部分が後部から揺れて見えてしまうのは見ているわたくしに非があるので御座いましょうか。
「叔父から頼まれたんだろう?街に行く時に送ってってやるから」
マクシム様は少し趣…いえ、傾きのあるテーブルをガタガタと引っ張って寝台のようなものの近くに寄せると、わたくしに「座れ」と申されます。
「ご厚意に感謝いたしますわ」
歩いて7歩。玄関だとやっと認識できた扉から歩いて7歩で寝台??に到着致しました。見回しますと一辺が3.5メルト程でございましょうか。女の足で7歩ですので男性ですと5歩?
※1メルト=1メートル
室内、いえ失礼いたしました。家屋はお部屋が1つ。そこに寝台と向かいに小さな竈が御座います。引っ張ったテーブルは気を付けないと竈の薪になりそうな近さでございます。
入り口の扉の他には、木の板を立てかけてガラスの代用とされている窓が1つ。
どうみてもクローゼットは御座いませんし、湯殿も御座いません。
もしや、一旦外に出て…とも思ったのですが、入ってくるときに、建物の前と両側面には何も御座いませんでしたし、反対側は木の板をガラス代わりにしている窓から見える限りでは‥‥自然しか見えません。
ゴトリ
「これしかねぇから。飲め」
テーブルに置かれているのは…ボウル?でございましょうか。
なみなみと注がれているのはおそらくミルク。そっと触れると温かくは御座いません。
「大丈夫だと思うぞ。2週間前に搾らせてもらった生乳だ」
――2週間前でも生乳――
いえいえ、そんな事を考えてはいけません。
ですが…夜会などでフルーツポンチが入っている程では御座いませんが取っ手もなく、帽子の代用も出来そうな【茶器】に注がれた【2週間前の生乳】‥‥。
ふとに気になりました。こんなに大量のミルクを飲んだら御不浄は何処にあるのか…と。
まさかと思いますが…少しだけ場所の特定をしてしまいましたが念のため。
「マクシム様」
カチッカチッ 竈の前で何かをされているようです。
少し耐性が出来ました。腰布より下部は敢えて見ない。しゃがまれているマクシム様の全体像を見るに【背面】は辛うございます。
「マクシム様」
「どした」
「あの…御不浄はどちらにございますの?」
「なにそれ」
困りました。マクシム様は御不浄をご存じない…やはり人に非ず。
しかし、わたくしには必要で御座います。恥を忍んで…。
「あの、御小水とか…はどちらで?」
「外」
――やはり――
考えていると、木の板を窓に当て始めます。雨が降ってきたようで御座います。
御不浄がないとなると、こんなに大量のミルクは頂けません。もっと小さな茶器はないかと見回しますが、正直茶器よりもマクシム様の装いをどうにかするのでは?と考えるに至りました。
だって…このミルクが入っている器以外に、食器と呼べるものが見当たらないのです。
当然カトラリーも見当たりません。
「マクシム様、お食事はどうされていますの?」
「飯?腹が減ってるのか?」
「いえ、わたくしではなく、マクシム様が日頃お食事をどうされているかと」
「飯は山に行った時かな。体を洗うついでに済ませる事が多い」
聞き捨てならない言葉が聞こえます。【体を洗う】と言う事は離れた場所に湯殿があるのでしょうか。あぁそう考えればお食事は食事室として別に建物があるのかも知れません。
公爵家でも屋敷の中にはありましたが、部屋としては別々で御座いました。
「では、後ほど食事室でお食事でございますね?」
「は?雨降ってきたから行かないけど?」
「えぇっと…ではお身体は…」
「この雨だからな。明日は良い感じになってると思うが滝壺の水は冷たいぞ?大丈夫なのか?」
「た、滝壺と申されますと…」
「山の中に滝があるんだよ。滝壺で泳げば体が洗えるだろ?滝の下は危険だから行くなよ」
――行きません。いえ。行けません――
聞けば完全自給自足生活をされておられ、罠に動物がかかった時は数日はご馳走なのだそうです。その他には山菜や木の実、キノコ。時に魚が獲れれば魚を召し上がるのだそうですが、食事室というものはなく大自然の中で召し上がるのだとか。冬場は食料が少なくなるので木の実の時期に貯め込んだり、年に1、2度やって来る叔父様が食料を運んできてくれるのだとか。
――叔父様、食料も大事ですが衣類も――
そして寝所で御座います。椅子を兼用しておりましたがやはり寝台でございました。
しかし…シーツは茶色く変色しており湿り気も御座います。臭いも致します。
最大の謎は人一人が丁度のサイズ。シングルの寝台の半分ほどの幅。
「上が良い?下が良い?下だと苦しいだろうから上がいいか?」
苦しいとは何でございましょう?
ふと足元を見ると、外は雨。隙間から入り込んだ雨水が床を濡らしております。
確かに、「下」で寝ればこの雨水で非常に寝苦しい事でしょう。
しかし、違いました。
抱き合った状態で眠ると平然な顔で仰るマクシム様。
と、言う事はわたくし、上でも下でもほぼ全裸の男性に抱かれると言う事ですの?
言葉を失ったわたくし。
マクシム様は「飲まないのか?」と仰るや否やボオルのような「茶器」を手に取りミルクを飲まれました。しかし、口に含んだ瞬間に玄関扉を開けて、ペっと吐き出されるとミルクを全て捨ててしまわれたのです。
「腐ってるな。良かったなぁ、飲まなくて」
――やはり――
わたくし、1週間目が明日だったらいいなと思わざるを得ませんでした。
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