成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

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連載

204、ゴンドラ乗り場

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 その頃、俺たちは公爵の屋敷で何が起きているか知るよしもなく、意気揚々と遺跡都市へ向かっていた。
 アンジェを加えた新しいパーティで、遺跡都市に下りる為のゴンドラがある縦穴へと歩いていく。
 ジーナさんは警備隊の詰所に顔を出すとのことで、ゴンドラの乗り場で落ち合うことにした。
 迷宮は、地上に出ている部分だけでも数キロ四方もあるので、アンジェに案内してもらっている。

「ほら、あそこに人が集まっているのが分かるでしょ? あれがルイーナ行きのゴンドラ乗り場よ」

 アンジェのその言葉にリアナは駆けだすと、少し背伸びをした後にくるりとこちらに振り返る。

「凄いわ! まだ朝早いのに、もうあんなに冒険者が集まってるもの!」

「はは、朝からリアナは元気がいいよな」

 逆にアンジェは少し眠そうである。
 小さくあくびをする姿が可愛らしい。

「ほんと、リアナって元気いいわよね。朝ご飯だって一杯食べてたし」

 それを聞いて、リアナは頬を膨らませて反論する。

「アンジェったら、それじゃあ私が食いしん坊みたいじゃない! エイジの方が一杯食べてたわ」

「はは、確かに食べたけどさ」

 とんだとばっちりである。
 昨日の夜、鍛冶仕事を張り切ったから腹が減ってたんだよな。
 五分ほど歩くと、ゴンドラ乗り場の入り口がハッキリと見えてくる。
 そこからは緩やかな昇りのスロープになっており、遺跡都市への縦穴は見えない。
 ゴンドラは複数あるようで俺たちは、ジーナさんが来た時に分かるように一番近場の行列に向かう。
 その時、エリスが行列の最後尾を見て俺たちに言った。

「ねえ、見て。あの子、あんなに小さいのに並んでるわ」

 エリスの視線の先に居る少女は、まだ7歳か8歳ぐらいだろうか。
 俺の世界で言えば小学校低学年ぐらいに見える。
 その子は特徴的な耳をしていた。
 猫耳? いやどっちかっていうと狐耳って感じだ。
 栗毛色の髪に大きなきつね色の耳が頭についている。
 くりくりとした大きな目が愛らしい少女だ。
 リアナが目を輝かせる。

「獣人族ね、可愛いわ! でも、一人でゴンドラに乗るつもりかしら?」

 リアナの疑問にアンジェが答える。

「ゴンドラを使うのは冒険者だけじゃないわ。ルイーナの住民が行き来をすることはよくあるもの。でもあんな小さい子が一人って言うのは珍しいわね」

 狐耳の少女は、行列に並ぶ体の大きな冒険者たちの後ろで、不安げにキョロキョロしていた。
 エリスはそれに気が付くと。

「様子が変ね。誰かを探しているみたいだわ」

「ええ、そうね。エリス」
 
 リアナも頷いた。
 その手には、棒についたアメのようなお菓子が握られていた。
 そのアメは白くて動物の形をしている。
 フェロルクの町中で見かける屋台で、よく売られているものだ。

(もしかすると、親とはぐれたのかもしれないな)

 俺も小さいころ人が沢山いるところで、アイスクリームに夢中になっていて迷子になったことがある。
 少女は列の最後尾で辺りを見渡している、やはり誰かを探しているようだ。
 キョロキョロとしている少女は、前の様子を見たいのか少し後ずさる。
 そこに、俺たちとは反対の方向からやって来た若い冒険者がぶつかった。
 仲間と派手に笑いながら話しをしていたので、少女に気が付かなかったのだろう。

「きゃう!」

 少女はそう叫ぶと、尻もちをついた。
 その拍子に手にしていたアメが地面に落ちる。

「落ちたです……」

 地面を転がるお菓子を見て、少女は我慢が出来なくなったのだろう。
 愛らしい大きな目にジワリと涙を浮かべた。

「ママいないです。どこに行ったですか?」


─────

 書籍版からお越し頂きました皆様へ

『成長チートになったので、生産職も極めます!』をご覧頂きましてありがとうございます。
 書籍版をお読み頂きました皆様の中にはもうご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、三巻部分については書籍版と連載当時のWEB版には大きな違いが御座います。
 該当箇所のWEB連載部分は三巻が書籍化されるにあたって取り下げられておりますので、その部分のWEB連載版ならではの内容と現在の連載部分への繋がりを大まかにで恐縮では御座いますがまとめてみました。
 よろしければご覧くださいませ。

 ①アンジェがロイから炎の魔法剣『紅』を貰い、それを使っている。
 この剣はロイの弟弟子で異色の鍛冶職人リカルドが作った剣であり、ジーナもリカルドが作った『風神』という魔法剣を使っている。
 元々は『紅』と『風神』は姉妹剣であった。

 ②フェロルクの警備隊長であるジーナがエイジに剣を教えるシーンがある。
 ジーナはかつてのラエサルの冒険者仲間であり、ラエサルに頼まれてエイジたちの前に現れる。
 エイジの力を試すため、その命を狙うかのような行動に出たジーナ。
 その戦いの中で、エイジに非凡な才能を見出した彼女は彼らに手を貸すことを決める。

 ③迷宮の中に遺跡都市ルイーナと呼ばれる街があり、そこへはゴンドラを使って行き来をすることができる。

 ④そして一番大きな違いですが、WEB連載版ではまだアンリーゼとの戦いは起きていません。
 書籍版でも描かれているエリスがエイジに自分が王女であることを告白し、月光の下で二人が口付けをするシーン。
 その後、白王の薔薇を手に入れることを決意した彼ら。
 一夜明け、彼らが迷宮の中にある遺跡都市ルイーナに向かうところから現在のWEB連載部分へと話が繋がっていきます。

 書籍版とWEB連載版では大きく違いがありますが、どちらも皆様に楽しくご覧頂けましたらとても嬉しいです。
 今後ともエイジたち共々よろしくお願い致します。
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