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第4章『理想郷の王冠』と『理想郷の宝石』
人外で忠実系キャラ
しおりを挟む「ねえガロ、わたくしの話を聞いてますか?」
「…………はい。しっかり、1門1句聴き逃しません、アミィール様」
「なら、反応をしてちょうだいな。………わたくしはお母様のように、貴方の思考を読めませんので。ごめんなさい、ずっと傍にいてくださったのに…………」
「謝らないでください。アル様は私が幼き頃から傍に置いて下さったのですから、わかってくださるのです。アミィール様が悪いわけではございません」
………………なんというか、感動である。本当にキラキラしたイケメンで、ベリーベリーショートヘアといえばバリバリの武道派なキャラだと思うだろう?でも、このガロというキャラは違う。大人しく優男であり、それでいてヒロインの手を優しく引いてくれる真摯な忠臣キャラなのだ。
……………ヒロイン?
人狼側近はヒロインとヒロインの母親にしか心を開かない設定である。
つまり。
そこまで考えて____ある答えに行き着く。
『理想郷の王冠』のヒロインは、____アミィール様、なのか!?
俺は急いでアミィール様を見る。アミィール様はとても心配そうに俺を見ていた。
「………セオドア様、やはりお顔が優れないようですね……………講師はまた後ほどにしましょうか?」
「い、いえ!大丈夫です!本当に!」
慌てて否定する。…………だめだ、考えるのは後にして、少しでも情報を集めなければ…………!
アミィールはそう言って真剣な顔をするセオドアに疑問を抱きつつ、腕から離れてガロの傍に立った。
「では、紹介致します。この子はお母様の側近で、わたくしの講師もしてくださったガロです。
ガロ、挨拶を」
「はい。…………私はガロ、と申します。
不肖ながら貴方の教育係としての命を受けたものです。何卒よろしくお願い致します」
そう言って美しい礼をするガロ。もう自分が主人公キャラだというのが霞んでしまうくらい美しい男に、慌てて言葉を紡いだ。
「わ、私はセオドア・ライド・オーファンと申します!皇妃様の側近であらせられるガロ様に教育をして頂けるのは光栄、です……………」
うわ~、突然の展開すぎて言葉が上手く出ない…………!
顔を真っ赤にして頭を下げるセオドアに、ガロはふ、と笑みを浮かべた。
「アミィール様がお選びになった御方はとても可愛らしい御方のようですね」
「ええ。そうよ。それはもう可愛い御方で。………あ、ガロ。わたくしの大切な婚約者様を口説くのはいけませんよ?」
「そんなこと、恐れ多くて出来ませんよ。それと、私はちゃんと男です」
和やかに会話する2人に、胸が痛んだ。
どうみたってお似合いじゃないか……………というか、可愛いって…………俺は男なのに………………
ほんの少し、凹んだセオドアでした。
* * *
「では、早速行いましょう」
「は、はい!」
大きく広い鍛錬場に来た。
今日はとりあえず俺の実力、学力を見るらしい。ガロが手に剣を握っている。俺もだ。
…………もっと『理想郷の王冠』について考えたいけど、それは後からゆっくりじっくり考えよう。現時点では俺がアミィール様の婚約者なのだから。
「では、かかってきてください」
「はい!」
俺はガロに向かって走り出す。そして、兄に教えて貰った通りの動きで襲いかかった。
確かに、サクリファイス大帝国は兵士は勿論国民さえも剣を扱える。そんな中自分が突出して強い訳では無い。元々剣は苦手だ。…………でも、ヴァリアース大国で兵士長を務めている兄・セフィアのおかげでできない訳では無い。
今まで培った全てで攻撃を繰り出す。けれど、ガロは平然と片手でそれをいなしている。『ふむ』と考える素振りを見せてから、初めて剣を奮った。
「っわ」
そのたった一撃で、俺の剣は弾き飛ばされた。そして、一瞬で距離を詰められ…………首筋に、クナイのような短刀を当てられた。
それはもう殺す勢いで、泣きそうになりながら『まいりました』と言った。
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