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第6章 お披露目祭り
波乱のお披露目会 #1
しおりを挟むオーファン公爵家はとても広い。人が沢山入れるくらいのスペースがある。そして、今日はその庭が人で埋まっている。全員、心優しきオーファン公爵家を慕っている人々で溢れかえっているのだ。
その人々に囲まながら歩くのは______
オーファン公爵家の男特有の群青色の短髪、緑色の瞳の白いタキシードを着て顔を仄かに赤らめている次男坊___セオドア・ライド・オーファン。
そして、その男の腕に手を添え隣を歩くのは………サクリファイス大帝国皇族の特有の紅銀の長髪、黄金色の瞳の白いドレスを身に纏い優しい笑みを浮かべる皇女____アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス。
今日は2人のお披露目会だ。
「おめでとー!」
「セオドア様久しぶりー!」
「ああ……………あれがサクリファイス大帝国の皇女様……………ありがたや…………」
人々は盛大に祝う。ヴァージン・ロードに見えなくもない道の先には____セオドアの両親と兄が。両親は2人とも涙を流している。
「セオ……………うう…………」
「もうっ、貴方は泣きすぎ………ッ」
「2人とも泣きすぎだよ。………おめでとう、セオ」
「……………あ、ありがとう……………父上、母上、兄上。
俺___凄く、幸せだ」
そう言って顔をクシャクシャにして笑うセオドア。それには両親も号泣せざる得ない。息子と言うより娘の扱いである。
その様子に美しい皇女はくすくすと笑う。
「_____お父様、お母様、お兄様。
必ずや、この可愛らしい御方を幸せにします」
「ッ…………お願いします、アミィール様」
「わたくしからも、お願い致します………」
「おう、頼んだぜ、かっこいい皇女サマ」
「…………ッ」
その言葉に更にボロボロの顔で泣くセオドア。こんなに幸せを感じられるのは、家族のおかげだ。間違いなく、俺がアミィール様の隣にいられるのは、この人達のおかげなんだ。
未だに泣き続けるセオドアを、アミィールは優しく頬に口付けをする。
「セオ様、わたくしも、幸せですわ」
「…………ッ、アミィ………」
いい雰囲気の中、2人はどちらとも言わず唇を______「2人とも~!」…………
その空気を壊したのは、皇妃のアルティアだった。隣にはなんとなんとヴァリアース大国女王陛下、エリアス・ラピュード・ヴァリアース。
邪魔をされたアミィールは物凄く険悪な顔をして睨む。アルティアはあっけらかんとしながらニコニコしている。
「いやーめでたい!正式な結婚式は再来月だけどね!」
「……………お母様、貴方って人は………!」
「セオドア、おめでとうございます、わたくしも嬉しいです」
「じ、女王陛下………………!」
2人の仲を引き裂くように大人達が割り込んでいく。その光景を空の上から2人の妖精神が見ていた。
『…………本当にやるんですか?ドゥルグレ』
『ああ、…………ムカつくが、祝いの日だ。祝おうぜ』
2人は地面に降りていく。そして、お披露目会の主役の前に立った。
「?リーファじゃない、それに、ドゥルグレまで……………」
一番最初に気づいたのはアルティアだった。アルティアの言葉に、セオドアはアミィールの方を見る。
緑色のグラデーションの髪を三つ編みにした、金色の瞳の美女。
___あれって、『理想郷の宝石』の攻略対象キャラの森の妖精神・リーファじゃないか!
学園中出てこなかった森の妖精神が、アミィールに近づく。アミィールは首を傾げた。顔見知りではあるようだ。
「リーファ様?どうなさいました?」
『おめでたい日なので、わたくしからお祝いを』
「お祝い____んっ!?」
「!」
リーファはなんと、アミィール様に唇を重ねたのだ。すると緑の魔法陣が生まれて___緑の光が、アミィール様の足元に吸い込まれていく。
「っは、な、何をしますの!?」
『契約印です。わたくしのお力が必要な時はお呼びくださいませ』
そう言ってにっこり笑うリーファ。遠目から見ていたセオドアは複雑な気持ちになっていた。
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