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第8章 幸せな新婚生活
貴方は安眠剤
しおりを挟む『………………………すぅ』
「…………………………」
庭園にある地下。
セオドアは手に刺繍の道具を持ちながら、目の前で眠る紅銀の龍____アミィールを見ていた。
アミィール様は、5日に一度、ここで3時間ほど眠る。初めて見た日から俺はアミィール様が龍になる日、同じように此処に来ることにした。
アミィール様は嫌がった。『見られたくないから』とやんわりと、だけど何度も言われた。けれど、この美しい龍のお姿も見ていたかったから、俺が無理を言ったんだ。
それでも首を縦に振らないアミィール様に、『じゃあ何故龍で眠るのか教えてくれたら行かない』と言った。こんな脅し紛いなことはしたくなかったけれど、それでも1人でこのような寂しい所に居て欲しくなかったから。
アミィール様はお悩みになった末に、俺が此処に来ることを許してくれた。……………そりゃあ、やっぱり、なんで眠るかを知りたい気持ちもあった。けど、それを無理に聞いてはだめなのだ。アミィール様の御心はとても繊細だから。
ましてや、龍神のことになると悲しい顔をして、酷い時には泣いてしまう。『穢らわしい血』と、何度も何度も繰り返して。
そんなの、悲しすぎるだろう?
だから前決めたように無理して聞かないことにした。俺達は夫婦で、隠し事なんてしてはならないけど………アミィール様の御心の闇をゆっくり時間をかけて溶かしてさしあげたいんだ。
………………なんて、こういう所が女々しいんだろうな。でも、アミィール様が無理をするのは嫌だから。
『ッ、ぐぅ…………』
「アミィ?」
アミィール様が突然呻き声をあげた。美しいお顔が苦しそうに歪んでいる。こういうのを見ると…………俺も苦しくなる。
なあ、アミィール様。
やっぱり聞いちゃいけないか?
____俺は、そんなに信用されていないのか?
そうじゃない。そうじゃないんだ。
こうやって、何度も自問自答をしてしまう。だから俺はアミィール様の龍のお姿を見ながら手を動かす。………刺繍をしていると、そちらに少しでも気が向くから。
勿論、今刺繍しているスカーフはアミィール様への贈り物。男装している時にポケットに入れてもらうんだ。指輪もしてるし、私服のドレスは結婚前に作ったウェディングドレスの試作品だし、俺の作ったものを好んで使ってくれる。
だから、俺も浮かれてまた作る。…………本当に、どっちが女なのかわからないな。
セオドアはそこまで考えてふ、と笑みを浮かべる。けどそれは、自虐しているものではなく穏やかな顔持ちである。
『ん……………………セオ様』
「あ、アミィ、起きたかい?」
アミィール様の黄金色の瞳が少し開いた。まつ毛も長くて、やっぱりアミィール様だと改めて認識する。…………どんな姿でも美しいのだから、この御方は凄い。
セオドアは刺繍の道具を置いて、アミィールの顔付近まで来て抱きしめる。アミィールはそれを受けて、すり、と大きな顔をセオドアに擦りつける。
…………可愛いなあ。
「よく寝れたかい?」
『ええ。やはり、セオ様が居ると、落ち着いて寝れますわ。
___わたくし、結婚してからセオ様が居ないと寝れない身体になってしまってるのかも』
そう言いながら、アミィール様のお身体が光り出す。どうやら、人間に戻るようだ。俺は持っていたシーツを取り出す。
案の定、アミィール様の身体は小さくなっていき、人間のアミィール様に戻った。いつも通り裸で、俺の顔に熱が篭った。
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