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第15章 主人公と兄

主人公の爆弾発言

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 「アミィール様、お疲れ様でした」


 「はい。お疲れ様です」



 アミィールはそう言ってセフィアに頭を下げてから颯爽と歩きながら考える。


 …………今日も『任務』があった。
 2日連続で血を浴びたせいで自分の身体からおぞましい血の匂いがこびりついているようで気持ち悪いわ。


 セオドア様に消毒して欲しいけれど…………2日連続でお願いするのは流石に心苦しい。そんなことをして、わたくしの『任務』の事を少しでも知られたら…………嫌だ。


 セオドア様はお優しい。
 以前、卒業パーティーの際、下賎な者達を屠ろうとしたら泣きながら止められた。自分が傷ついているのにも関わらず、それでもわたくしが人殺しをするのを見たくないと…………泣いてくださった。


 そのような御方にわたくしの穢らわしい行為を知られてしまっては…………嫌われる自信しかない。


 「_____わたくしは、醜いですね」


 1度歩くのを辞めて、ぽつりと呟く。
 人を殺しておきながら、卑しくもセオドア様を求める。穢れている身体で、綺麗すぎるセオドア様を汚している。とても罪深い事をしているというのに、わたくしはセオドア様に甘えている。



 _____わたくしは、最低な女だ。
 ちゃんと自覚している。セオドア様に釣り合わない女だと。セオドア様の優しさに甘えて、自分の罪を曖昧にして。自害することもままならない身体を引きずって、醜くも愛を求めて。


 「わたくしはやはり____「アミィ」…………!」



 不意に、後ろから愛しい声が聞こえた。優しくて、甘い声。わたくしの大好きな声。思わず振り返ると___群青色の髪、緑の瞳の美しいわたくしの愛する人。


 笑顔を、作らなくては。


 「…………セオ様」


 「アミィ、おかえり」


 「ふふ、………ここは廊下ですよ?」



 「………そうだったね。じゃあ、部屋に行こう」


 「え?………きゃっ」



 セオドア様はふわり、と笑みを浮かべてからわたくしに近寄って抱き上げた。突然の事でセオドア様の服にしがみつく。


 セオドアはアミィールを愛おしげに見つめてから、歩き出す。あっという間に寝室について___アミィールをベッドに優しく下ろし、覆い被さる。


 状況が読めなくて、アミィールは首を傾げる。




 「せ、セオ様…………?」


 「アミィ_____俺は、貴方を愛してます」


 「ん、………」


 セオドアはちゅ、と首筋に吸い付いた。アミィールは身を捩る。

 セオドア様が積極的に触れてくる事は滅多にないから、戸惑う。勿論嬉しいけれど………それでも、わたくしは今日も人殺しをした。罪を感じている時に受ける愛に後ろめたさを感じる。



 そんな事を考え、目を伏せるアミィールの服に手をかけながら、セオドアは甘く優しい言葉を紡いだ。



 「アミィ、……聞いて欲しいことがあるんだ」


 「な、なんでしょう…………?」


 「_____これから、俺が作り出す子種は全て貴方に受け止めてもらう」


 「えっ、そ、それは…………ッん」



 どういうことでしょう?という言葉はセオドア様の唇に遮られた。荒々しく優しいいつものキスなのに、どこか違和感がある。近くにあるセオドア様の目元が腫れている。


 「ん、ふ、…………」



 聞きたいのに、セオドア様は唇を離さない。まるで、有無を言わさないと言わんばかりに貪ってくる。それを受けていれば自然と…………冷えきった身体がじんわりと温かくなって、いつの間にかわたくしもそれを享受していた。



 唇を離した頃には__アミィール様のお顔が蕩けていた。………いつ見てもこの顔は愛らしく、美しく………俺の理性を壊していく。


 ____俺は、この人を守る為ならなんだってやれる自信がある。

 それだけ愛しているし、………『穢れている』と言われても、引き返せない。愛している、という表現じゃ足りないんだ。


 俺はこの御方がいればなんでもできる。

 俺はこの御方がいないと何も出来ない。


 _____いくら貴方が血に塗れようとも、それは変わらない。



 セオドアは唇を離して、丁寧にアミィールの身体を舐めた。どこを舐めても甘い。血の味なんてしない。__たとえ血の味がしたとしても、それも全部舐めとる。


 「アミィ_____アミィの全てを、俺は愛するから…………ちゃんと全部受けて」


 「ッ、はい、セオ様…………いえ、セオ。


 貴方の全てを、全身で受け止めます___」




 2人は再び、唇を重ねた。
 その日からアミィールは甘い時間をより濃厚に過ごすこととなったのだった。







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