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第18章 新しい家族と新しい生命
皇族は砂糖で出来ている
しおりを挟むセオドアは本当に嬉しそうにそう言ってから言葉を重ねる。
「ラフェエル皇帝様だって、アルティア皇妃様の寝顔を見て幸せだとは思いませんか?」
「思わん。アイツはいつだって馬鹿面で色気のないほど寝相が悪いからな」
そう言っているラフェエル皇帝様の顔は明るい。………いくら口で悪口を言ったって、愛しているのだ。何度も実感するが、素敵なカップルだと思う。
それは、デートの時に見た記憶からは想像出来ないほど幸せそうな笑みで更に顔が緩む。…………死ぬ道を選ぶ、好きだと言うな、なんて言っていたけれど、あれがあったからこそなおのことアルティア皇妃様が好きなんだろうな……………
「………………そんなに顔を緩めていると、溶けるぞ」
「ラフェエル皇帝様とアルティア皇妃様を見ていたら誰でも溶けてしまいます。………それだけ素敵な夫婦ですもん」
「そんなことお前に言われなくとも当然だ」
「……………ですね」
セオドアは控えめに、でも幸せそうに笑った。
* * *
「ら、ラフェエル皇帝様、こここ、この度は、当家にきていただっ、き…………」
「…………………」
オーファン家に着くと、全員が俺を出迎える前にその場に跪いて震えた。それは当然である。目の前に世界で一番権力を持つと言われるサクリファイス大帝国の皇帝がいるのだから。父・セシルなどはもう口すら回っていない。絶対俺はこの人に似たんだ。
そんなことを思うセオドアを他所に、アミィール様がにこやかに口を開く。
「そんなに緊張なさらないでくださいまし。お義父さん方の目の前にいるのはただの紅銀の蝿ですわ」
「アミィ、お前は引っ込んでいろ。
____頭を上げろ、セシル・ライド・オーファン、そしてその一族よ。
私はお前たちの身内だ。身内に頭を下げるなどおかしいだろう?」
「み、身内など、お、おおお恐れ多く………!」
「あなた!それは不敬でございます!
………申し訳ございません、わたくしの旦那が小心者で………」
「母上、それはフォローになっていません。
ラフェエル皇帝様、この度は私事に御足労頂き光栄でございます」
…………阿鼻叫喚である。流石の母上もイケメン皇帝の前では顔を赤らめているし、兄上は兄上だしなんというか………いい人なのは知っているけれど、恥ずかしいような……………
複雑な気持ちのセオドアはそんな家族達に声をかける。
「父上、ラフェエル皇帝様は簡単に怒ったりしませんよ。
母上もとりあえず顔を赤らめるのはおやめ下さい。
兄上は………少し黙っていてください」
セオドアの言葉に家族全員がセオドアに詰め寄った。
「せ、セオ!ラフェエル皇帝が来るのならば前もって連絡しなさい!」
「そうですわ!ラフェエル皇帝様を迎え入れる部屋を準備するのに1ヶ月は必要なのですよ!?」
「私だけ黙れというのは酷くないかい?私が主役だぞ。なあ、サーシャ」
「?サーシャ?」
兄上の言葉を聞いて、兄上の視線を追ってみる。そこには___従者と共に震えながら頭を下げる銀髪の美女。微かに涙も浮かんでいる。………もしかして、あの方が………
「あの方が兄上の婚約者ですか?」
「ああ。………ラフェエル皇帝様、アミィール様、私の婚約者を紹介したいので、まずは応接室に御足労頂いてもよろしいでしょうか?」
「いいだろう」
「もちろんですわ。………セオ様、行きましょう」
「あ、ああ」
俺達は兄上と家族と共に家に入った。久しぶりの家は何も変わっていなくて安心したのは内緒の話。
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