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第18章 新しい家族と新しい生命
2つの生命の芽生え
しおりを挟む「……………双子……………!?」
セオドアは口元を抑えながら震えた声を出した。
急遽医師の診断を受けた。それには土の精霊・グランドと森の妖精神・リーファも付き添ってくれて、子供の大きさ等を詳しく調べた。
その結果___アミィール様は妊娠2ヶ月という診断が下った。
泣きすぎて寝てしまったアミィールを他所に、医師は言う。
「妖精神様達の話によると、双子ですね。心音も2つございますし、間違いないかと」
「~っ!」
嬉しくて、思わず1人でガッツポーズを取ってしまう。アミィール様のお腹に俺の子供がいる。それがこんなにも幸せで嬉しくて頭がおかしくなりそうになる。
「やっ___うわっ!」
そんなセオドアに、傍にいたラフェエルがぐい、と胸ぐらを引っ張った。浮かれていた頭が一気に恐怖に変わった。
ラフェエル皇帝様のお顔は___沢山の皺が寄っていた。
「…………よくやった、セオ」
「あ、ありがとうございます………?」
これは喜んでいるんだよな?とても喜んでいるんだよな?怒っているんじゃないんだよな?
鬼気迫るラフェエルの顔にセオドアはカタカタと震える。そんなずぶ濡れの子犬のようなセオドアから手を離し、背を向けた。
「…………私はサクリファイスに戻る。セシルに謝っておいてくれ。
結婚式が終わったらアルティアをよこす。転移魔法で帰ってこい。わかったな?」
「は、はい!」
ラフェエル皇帝様はそれだけ言ってふ、と消えた。俺はすぐさまアミィール様の元へ駆け寄る。
「…………すう」
すやすやと寝ている。愛らしい寝顔を愛でながら、考える。
_____これで、『任務』は出来なくなる。それだけじゃない。…………俺達の子供が、産まれるんだ。しかも2人だぞ?一気に2児の父親じゃないか。
嬉しい。
嬉しすぎてほかのことがどうでもよくなる。
兄上の結婚に参加しに来て、新しい家族ができると思った矢先に、自分にも新しい家族が出来たんだ。本当に、本当に…………なんと言えばいいのか分からないくらい嬉しすぎる。
『…………ふふ、セオドア様は面白いな』
「うわっ!」
声が聞こえて、思わず大きな声を出した。すぐさまアミィール様を見るけど起きてない。よかった……………。
そう思ってから、声がした方を見ると___土の精霊・グランド様と森の妖精神・リーファ様。そ、存在すら忘れてた………!
「あ、えっと………その………」
『ははは、存在を忘れていたか。豪胆な御方だ』
「な、なんでそれを……!」
『グランドは心が読めるのです』
リーファ様はにこやかにそう言って、グランド様の腕に抱き着く。すごくいい雰囲気だ…………なんだか、付き合っているようにも見える。でもリーファ様はギャルゲー『理想郷の宝石』の攻略対象キャラだよな?
『急に心が読みにくくなったな。不思議だ…………やはり、アミィール様の選んだ御方だ』
「あの、…………アミィール様とはどんなご関係ですか?」
しみじみと言うグランドに聞いた。なんだかアミィール様を見る視線が柔らかくて、嫉妬したのだ。
グランドは目を細めて天井を見上げた。
『アミィール様は俺を、この世界を救ってくれたアルティア様の御子だ。君の思うような感情は抱いていないよ。
俺にはリーファが居ますので』
『まあ、グランドったら』
そう言って微笑み合う2人。…………もしかしてギャルゲー『理想郷の宝石』だというのにリーファが出てこなかったのは………グランドと好きあっているからなのか?
「………んん」
「!アミィ!」
そんなことを考えているとベッドで眠っているアミィール様が動いた。それを見たリーファが『起きる前に退散しましょう』と言って、2人は消えた。
その直後に、アミィール様は黄金色の瞳を少し開いた。
「…………セオ様?」
「アミィ、目が覚めたかい?」
「ええ。……………あの、えっと、不思議な夢を見て………わたくしのお腹に、セオ様の子供が居る、と………」
「え」
アミィール様はたどたどしくそう言う。…………さっきのことを未だに夢だと思っているのか…………?
___貴方は、本当に…………そういう事に疎い御方ですね。
セオドアは小さく笑みを浮かべて、困惑しているアミィールに優しく、それでいて熱の篭った声で『それは夢じゃないよ』と教えた。
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