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第20章 SweetでBitterな日常
懐妊記念になにかしたい皇妃
しおりを挟むひまわり畑にて。
「___いい、これは緊急会議よ」
黒の長髪、黄金色のアミィールによく似た美女、皇妃のアルティアは真剣な声でそう言う。その言葉に黒と白のごまプリン頭、黒瞳のセイレーン皇国の聖女、フラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーンと深緑の長髪、黄緑の瞳のヴァリアース大国女王陛下、エリアス・ラピュード・ヴァリアースがごくり、と唾を飲む。
それを見てから、アルティアは重々しく口を開く。
「____私の娘、アミィールに子供ができた。そしてその子供は勿論私の孫になるわけよ。
これがどういうことかわかるわね?フラン、エリアス」
「勿論、これは新たな続編に続いているわ、重大なことよ」
同じく真剣な顔をするフラン。そして、エリアスも口を開いた。
「由々しき事態ですよね。………どうしたらよいのでしょうか…………」
「わからないわ。___これは、20年前の旅よりも重大な事件。慎重に考え対処しなければならない案件……………知恵を貸してちょうだい」
「……………………あの」
「なあに?いい案があるの?」
男の声に、アルティアは反応する。
男は____鼻声で、叫んだ。
「私は男ですってばッ!!!!」
そう叫んだ男は____女性物のビキニを身に纏い、短い前髪をヘアゴムで無理やり結ばれたセオドアだった。
真剣な空気出してるけれど!女装無理やりさせたくせにこうして放置しているんですよこの悪ノリ大人軍団は!
セオドアはそう思いながら涙目で3人を睨む。
「私は!男で!19歳で!父親になるんです!
いつまでこんなことさせるつもりですか!?いっそ殺してください!」
セオドアは悲痛な叫びをあげる。
シリアスな空気だろうがなんだろうがこの人達の玩具で居る暇は俺には無いんだ!………というセオドアの強い気持ちなんて露知らず、アルティアは真剣な空気から一変して軽い調子で言った。
「な~によ、セアちゃんはそれ普段着でしょう?」
「本気で言ってるんですか!?」
「違和感しかないけど、逆に燃えるわよセアちゃん!」
「違和感があるならこんなことやらせないでください!」
「………男の尊厳、本当に大きいわ……」
「エリアス女王陛下!どこを見ているんですかッ!」
セオドアは一人一人に律儀にツッコミをいれる。そこにもう礼儀とかはない。この酔っ払い達には強気でいないと俺が!恥ずか死ぬ!俺は父親になるんだから嫌なものは嫌だと言わなきゃいけないんだ!
しかしそんな不憫なセオドアを他所に、酔っ払い達は話し始める。
「だからさぁ、要は私、孫が出来たことを自慢したいのよ。どんなのがいいと思う?」
「演説などはどうでしょうか?」
「演説ねえ、なんか面白みに欠けるわね」
「はいはーい!面白い何かをサクリファイス皇族でやるべきだと思いまーす!」
「そう!私はそれをやりたいのよ!けど重要な『面白い何か』が思い浮かばないのよねえ……………」
「ううっ…………」
考え込むアルティアにセオドアは涙する。
…………こんな格好で放置される俺の身にもなってくれよ…………ああ、脱ぎたい………恥ずかしい…………ビキニってなんだよ……ご丁寧に胸にパットまで入れられて、アンダーなんてTバックだぞ?俺が何をしたって言うんだよ…………………
というか、孫を自慢したいだけで何かをしようとしているそのぶっ飛んだ思考をどうにかしてほしい。完全に面倒なことが起きるじゃないか。俺の子供は見世物じゃないぞ…………!
怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらぷるぷると震えるセオドアを他所に会話はどんどん続く。
「面白い何かですか~難しいですねえ」
「でも、素敵なことですわ。せっかくなのですから国民達が楽しめる物だと尚いいですね」
「でしょ?セアちゃんもなんか案を出してくれる?」
アルティアはそう言って再びセオドアを見る。セオドアはツン、と顔を背けながら言う。
「その前にこの女装解いてくれませんか?じゃないと私は話しません!」
「女装……………それだッ!」
セオドアの言葉に、アルティアが勢いよく立ち上がった。目がキラキラと輝いている。
あ、嫌な予感がする。とてつもなく嫌な予感がする。むしろ嫌な予感しかしない。
「皇族で"男女逆転格好"をして演説すればいいんだよ!」
「………はい?」
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