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第20章 SweetでBitterな日常
意見は無理やり通すもの!
しおりを挟む「…………というわけで!"男女逆転"演説をしたいと思いまーす!」
「巫山戯るな」
「巫山戯ないでくださいまし」
「……………………」
夜の会食中、アルティアの言葉に紅銀の髪、紅い瞳のサクリファイス大帝国皇帝、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスとアミィールは同時にそう言った。 セオドアも激しく首を縦に振る。
そりゃあこうなる。昼間、アルティア皇妃が思いついた『面白い孫自慢』というのは、皇族で女装、男装するというものだった。滅茶苦茶だろう?俺も滅茶苦茶だと思う。
そう思っているのは勿論俺だけじゃない。
「お母様、お戯れはおやめくださいまし。もう40を迎えるのですから極力黙っていてくださいまし」
「私は永遠の35歳だからちょっとヨクワカラナイ。
ねーラフェー!やろうよ~!」
「……………国民の前でそんな恥を晒せるか」
どちらも正論である。
サクリファイス大帝国というのはこのユートピアで最有力国家だ。そんな巫山戯た式典など出来ない。
しかし、そんな常識が通じないのがアルティア皇妃様なのである。
「え~でも、絶対楽しいと思うわ、演説じゃきっと国民もつまらないと思うし」
「ならば演説はやめましょう。わたくしはセオ様の御子達を見世物にしたくありません。
これから生まれてくるのにそのような仕打ちをする身内は恥ですわ」
アミィール様は通常運転である。笑顔で言い難いことをズバッと言う。しかしアルティア皇妃様も引かない。
「つまんない考え方ね~。頭が固いのはラフェーに似たんだわ」
「お前の頭が緩すぎるんだ。私は絶対女装などせんぞ」
「…………じゃあ閨を共にしません。私は家出します」
「!」
ラフェエル皇帝様の言葉にアルティア皇妃様は笑顔でそう言う。ラフェエル皇帝様のお顔が固まっている。これは絶対前科があるのだろう。黙って聞いていられない。俺も声をあげた。
「アルティア皇妃様!そのようなことを軽々しく言ってはなりません!」
「軽々しくないわ。私は本気でマジで大真面目よ」
そう言って無駄に凛々しい顔をしたアルティア皇妃。本当に無駄にだ。こういう時ばかり真剣に言うからたちが悪すぎる。
アミィールはそんな母親を見てはあ、と大きな溜息をついた。
「お母様、いい歳をしてみっともなく駄々を捏ねないでくださいまし。もう少し皇族という自覚をもてないのですか?」
「皇族だからって肩苦しいイメージをつけるのは偏見よ。バイタリティが欠如してるんじゃないの?そんなんで親になるなんて片腹痛いわ」
「それは暴論です、アルティア皇妃様」
「はぁ~、ラフェーの愛はそんなものなのかぁ~、私は新しい男を探すべきなのかしら~」
「…………………」
あからさまな挑発だ。流石のラフェエル皇帝様だってこれは怒るはず「……………やろう」…………はい?
ラフェエル皇帝様はぽつり、とそう言った。顔を見ると___これでもか、という不機嫌な顔。アミィール様は立ち上がった。
「お父様!?何を仰っているのですか!?皇族がこのような戯れをしたら国民に示しがつきませんよ!」
「国民よりもアルティアが他の男の物になる方が不愉快だ」
「………………」
やっぱりおしどり夫婦というのはやはりズレた感性をお持ちなのかもしれない、と悟ったセオドアだった。
____こうして、半ば無理やり『男女逆転演説』が決定してしまった。
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