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第21章 元龍神の末裔の『呪い』
攫われた皇女
しおりを挟む「あ……あ…………」
俺は腰が抜けていた。
頬に涙が流れているなんてどうでも良くなっていた。
目の前には_____アミィール様の龍のお姿よりも大きな、とても大きな黒い龍。サクリファイス大帝国に来た時初めて見た魔法壁に描かれていた____黒い龍が、居る。
『あ~、久しぶりの姿。………セオくん、巻き込まれたくなかったら離れなさい』
「っ、無理です!」
俺は腰を抜かしながらも怒鳴った。
我を失ったアミィール様を放って俺だけが逃げるなんてことは出来ない。状況は理解できないけれど、下がったらアミィール様の傍に居られないって思ったんだ。
セオドアの言葉に、アルティアは大きな、とても大きな溜息をついた。
『ほんっとうに馬鹿ばっかり…………なら、作戦変更よ』
「____!」
黒い龍のアルティア皇妃様はそう言って大きな身体だと言うのに素早く動いた。蛇が獲物に食らいつくような早さでアミィール様に近づき___アミィール様の身体に巻きついた。暴れていたアミィール様は未だに暴れようとしているけれど、アルティア皇妃様にがっちりホールドされて動けないでいる。
アルティア皇妃様は普段の美しさとはかけ離れた、いかにも龍の顔、という大きな顔で俺を見た。
『セオくん、ラフェーに"アミィールと一緒にアトランティスに行く"って伝えておいてね』
「な、アトランティスとは何処ですか!?」
『あー、それはラフェーにでも聞いて。んじゃあね~』
それだけ言い残して、ふ、と姿を消した。ゆっくりと暗かった空が晴れていく中、崩壊した庭園を見て____震えていた身体に鞭を打った。
アミィール様が____アルティア皇妃様に攫われた!
セオドアは顔に怒りを浮かべて、いつの間にか集まり怯えている従者達を無視して玉座の間に向かった。
* * *
「ラフェエル皇帝!」
セオドアは自ら玉座の間の大きな扉をこじ開け、怒鳴るように中にいるであろう男の名前を呼んだ。
男___このサクリファイス大帝国皇帝、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスは庭園側の窓の前に立っていた。
「____やはり来たか、セオ」
「呑気にお話をしている場合じゃないです!アミィがッ、アルティア皇妃様に攫われたんです!」
錯乱状態のセオドアはツカツカと足音を鳴らしてラフェエルに詰め寄る。ラフェエルは腕を組みながら、そんなセオドアを見ることなく言う。
「攫ってなどいない。………アイツのことだから"アトランティスに行く"とでも言ったんだろう?」
「____!」
アトランティス、という言葉にセオドアは目を見開く。
確かに、そう言っていた。
それにその名前は___アミィール様とのデートの際、若いアルティア皇妃様が言っていた。
「アトランティスとは、なんですか!?ラフェエル皇帝!どうか教えてください!」
「吠えるな。……………リーブ」
ラフェエルは静かに後ろに控えていた側近・リーブに声をかけた。リーブはラフェエルの言いたいことを理解した、と言わんばかりに言葉を紡いだ。
「わかっております。この一件の箝口令の徹底、又、ガロと共にこの場の指揮をさせていただきます」
「_____頼んだ。
セオ、行くぞ」
「どこにですかッ!それよりもアミィが「そのアミィが居る場所に行くんだ」………ッ」
ラフェエルはふーふー、と鼻息を荒くしているセオドアの肩を抱き、颯爽と歩き出した。セオドアは………泣きそうな気持ちを抑えて、身を委ねた。
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