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第30章 巡る巡る夏の夜
お祭り満喫中! #3
しおりを挟むフランはそう言って『はい!』と射的用の銃を渡す。ダーインスレイヴははあ、と溜息をつきながらいちばん大きなぬいぐるみに焦点を合わせてパァン!と放った。
「!?」
それは見事に命中。ぬいぐるみの足元の粘着魔法を一蹴して転がり落ちた。これには出店の者もフランも目を見開いた。ダーインスレイヴだけ呑気な声を出す。
「銃もなかなかいいなあ。剣よりも殺傷能力、急所の狙いがしやすい。威力も抜群だ。魔剣をやめて銃になるのもいいなあ」
「………だ、ダーインスレイヴ様って………ハイスペック…………?惚れ直しました!付き合ってください!」
「いやだね」
ダーインスレイヴは素っ気なくそう言って銃を背負って意地悪く笑った。
* * *
「………………」
セオドアは黙ってその一部始終を見ていた。
ツッコミどころしかない。いや、両片想いが夏祭りデートをする展開としては美味しい。だがしかしその対象が身内だと、なんというか、恥ずかしいのである。そして2人ともピチピチの10代ではないからただシュールあんどシュール。
仲良しだなあ……………。
「パパ!はやくー!」
「父ちゃんとろとろとろいぞ!」
「あ、ああ、今行く」
セオドアは走って家族の元へ向かった。
____射的ではアドラオテルとアミィールの白熱とした戦いになり、出店の者を巻き込んで銃を乱射していた。
全ての景品が無くなるとほかの出店でもその勝負をしていて、このままでは射的の出店の者達は大赤字だと悟ったセオドアはなんとか2人を止めて景品は大きなぬいぐるみと玩具の剣だけ貰った。
セラフィールはやらなかったけれど、貰った大きなぬいぐるみにはご満悦で、にこにこしていた。アドラオテルも『やっぱ剣がいい!』と言いながらぶんぶんと振り回して上機嫌。アミィールも『銃ももっと精進する』と満面の笑みで言っていたが、セオドアは疲れすぎて息を切らしていた。
* * *
「よーよー!」
「よーよー!」
「お上手ですね」
子供達はヨーヨー釣りをしている。アミィールはそんな子供たちを優しく見守っている。しかし、セオドアだけはキョロキョロしていた。
…………4人も旅メンツの人間に会ったんだ。他にも会うパターンではないか?ガロとリーブも旅をしていたと聞いた。いるのではないか………?
「………?セオ様?どうなさいました?」
「ああ、いや、なんでも」
「父ちゃん!一緒にたくさんヨーヨー釣ろうぜ!」
「いっぱいは要らないかな」
セオドアは優しく笑いながら答える。
………いや、考えすぎか。2人はアルティア皇妃とラフェエル皇帝の側近。俺たちと鉢合わせることはないだろう………
そう思うセオドアと、ヨーヨー釣りに夢中な家族の頭上には____透明化した2人の側近が。
「…………リーブさん、もう少し近づいて護衛をすべきでは?」
銀髪のベリーベリーショートヘア、赤と金のオッドアイのガロは静かにそう聞く。しかし茶髪茶瞳のリーブは同じく静かな声で言う。
「これ以上近づけばアミィール様に気づかれます。我々の任務は『家族の時間を邪魔をせず不審な輩を排除する』です。
ガロ、ラフェエル様とアルティア様の言いつけを破りたいのですか?」
「____失礼致しました、リーブさん。ガロは失念しておりました。
索敵を行いますゆえ、監視をお願い致します」
「わかりました」
………………ガロとリーブはセオドア一家のストーカーをしていたとさ。
___ヨーヨー釣りを終えた子供達は金魚とヨーヨーをぶら下げながら次は型抜きをした。セラフィールとセオドアは難しいライオンの型をなんなく成功させ、アミィールとアドラオテルは開始10秒で机ごと叩き壊したのでした。
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