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虚実篇 第六
虚実篇3・必勝パターンなんてナイっす。大切なことなので二度言ったっす。
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結局、究極的には「パターン化しない」ってのがパターンになるんじゃないですかね。
何か決まった形ってものが無ければ、例えば、敵の間者が忍んで来て情報とか盗んでいったとしても、結局役に立たないでしょ? だってこっちは盗んでった情報にある形の通りには動かないんだもの。
ちょっとぐらい頭が良い奴でも、規則性のない動きからはこっちの出方を予測出来ない訳ですよ。予測が出来なきゃ、作戦の立てようがなくなくないですか。
それで、こっちは敵さんの行動パターンを――できればこっちの思うツボなパターンに填めちゃって――その動きを見切って、それに対処して勝つっていう「段取り」を踏めば良いんです。
でもこの方法だと、普通の人には「どうやって勝ったか」は理解できないでしょーね。
みんな、
「あの超絶格好いい孫軍師様は、ああいう形にしたから勝った」
ってトコまではなんとか判るかもしれません。
でも、
「あの軍師はなぜああいう形で勝てたのか、どうしてその作戦を採用したのか、なぜ敵は負けるような行動を取ってしまったのか」
ってとこまではワカンナイと思いますよ。
例えば、オレが上手いことやったのを誰かが真似ッこしてみたとしましょうか。
多分、上手くいかないんじゃないかかなぁ。うん、きっと成功しないですよ。
だって、その方法で勝てるのは、その瞬間が、
「その方法を取るのがベストの状況だったから」
なんで。
別の状況で同じ事もう一回やったって無駄っすよ。
もしも、ですよ。
もしも敵さんが「超絶格好いい孫軍師様の華麗な成功例」をそっくり真似て攻めて来たとしましょうよ。
でも怖がるこたぁないですよ。こっちはそれに対応した別の手段を考えちゃえば良いだけですから。
そんなわけだから、自分のパターンなんてものは決めちゃわない方が良いんですよ。
いやいや、ホントに、戦争は水物っすよねー。
ほら、水は高いところから低いところに流れるでしょ?
居辛いところに無理して居座るようなことはしないで、動きやすい形に変わりながら留まりやすい場所へ移動しちゃう。それが水の性質。
ですから、戦争するなら、水みたいにするっと動きましょうよ。
真っ正面切ってカッチカチに堅い「実」の部分を叩くような、やり辛い方法はやんない方が良いんですから。そういうところはするっと回避して、潰しやすそうな、相手がしれっと忘れてるペラッペラな「虚」の部分を、ドーッっと叩いちゃいましょうよ。
それで、ですね。
水は地面の形に沿って――時々地形の方を変えちゃったりしながら――一つの形に留まらないで流れて行きますよね。
戦争も、敵の形によって作戦を変化させながら、勝利に向かったらイイじゃないかなぁと思うんですよ。
何度も言っちゃいますけども、戦争に必勝パターンなんてナイですよ。水はいつも同じ「形」をしていないでしょ? それと同じ事です。
だから、こっちはガチガチの大きな「形」を作る事にこだわらないほうがイイ。
敵さんの方のパターン解析をして、それに柔軟に対応して、その場にあった「形」を作ればイイ。
そうすれば勝てるんです。
このやり方こそが「神」ってものです。
五行相剋っていうじゃないですか。
森羅万象は「木」と「土」と「水」と「火」と「金」の、五つの元素で出来てて、元素にはそれぞれに強いモノがあって、って言う、あれ。
木は土の養分を吸い取って自分は成長し、相手を痩せさせる。だから木は土に剋つ。
土は水を濁らせ、吸い込み、川をせき止める。だから土は水に剋つ。
水は火から熱を奪い、消し止める。だから水は火に剋つ。
火は堅い金属を溶かし、形を変えさせる。だから火は金に剋つ。
金属の道具は木を切り倒し、加工することが出来る。だから金は木に剋つ。
……そうそう、ルールの面倒くさいジャンケンみたいなあれですよ。
それでですね。
例えば「木は土より強い」からっていって、じゃあ別の元素に対しても「土に対して勝った木のやり方」を、そのまま同じにぶつけたとして、勝てるか、ってお話ですよ。
いくら根っこを張って養分を取ろうとしても金属が相手じゃ勝てないし、水には押し流されちゃうし、火には燃やされちゃって、負けちゃいますからね。
それにほら、木は金に対しては元からして弱い設定ですし。
だから、それぞれにやり方を変えないといけないですよね。
あと、季節。
オレ、春って大好きな季節なんですけど、だからってずっと春がイイって思ったところで、そのご陽気を引き留めるなんてのは無理でしょ?
人間が何をどうやったところで、春の次は夏が来て、秋がになって、冬がやってくるんですよ。
そうなれば、ずっと春の気分でふわふわ過ごしてる訳にはいかなくなりますでしょ?
夏には夏の、秋には秋の、冬には冬の過ごし方に変える必要がありますよね。
季節どこの話じゃないですよ。朝夕の時間だって長くなったり短くなったりしてますもん。
一年中、一日だって秒までで同じ日照時間ってのはそうそうないんですよ。
早起きしんどいから夜が長い方が良い、なんて思ってみたところで、人間はお天道様には勝てません。朝はお天道様の都合でやってきちゃう。
結局、その日その日の夜明けの時間に起きて、その日の夕焼け小焼けでお家に帰らないとないとダメなんです。
お月様なんかもそうですよね。
満月になったと思ったらドンドン痩せてって、十五日もすれば見えなくなっちゃう。だからて消えてなくなったってワケじゃなく、また太っていって、十五日もすればまん丸になる。以下、エンドレスループ。
月の形によって月明かりの強さだって変わるんですから、夜道の歩き方だって、使う灯明の芯の長さの長さだって、まるっきり違ってきちゃいますでしょうよ。
つまり、どんなもの対しても、どんな時でも、
「いつも同じ対策を取ってればイイ」
なんてことは、世の中にはないんですよ。
日常生活だってそうなんですから、当然、戦争だって……ねぇ?
何か決まった形ってものが無ければ、例えば、敵の間者が忍んで来て情報とか盗んでいったとしても、結局役に立たないでしょ? だってこっちは盗んでった情報にある形の通りには動かないんだもの。
ちょっとぐらい頭が良い奴でも、規則性のない動きからはこっちの出方を予測出来ない訳ですよ。予測が出来なきゃ、作戦の立てようがなくなくないですか。
それで、こっちは敵さんの行動パターンを――できればこっちの思うツボなパターンに填めちゃって――その動きを見切って、それに対処して勝つっていう「段取り」を踏めば良いんです。
でもこの方法だと、普通の人には「どうやって勝ったか」は理解できないでしょーね。
みんな、
「あの超絶格好いい孫軍師様は、ああいう形にしたから勝った」
ってトコまではなんとか判るかもしれません。
でも、
「あの軍師はなぜああいう形で勝てたのか、どうしてその作戦を採用したのか、なぜ敵は負けるような行動を取ってしまったのか」
ってとこまではワカンナイと思いますよ。
例えば、オレが上手いことやったのを誰かが真似ッこしてみたとしましょうか。
多分、上手くいかないんじゃないかかなぁ。うん、きっと成功しないですよ。
だって、その方法で勝てるのは、その瞬間が、
「その方法を取るのがベストの状況だったから」
なんで。
別の状況で同じ事もう一回やったって無駄っすよ。
もしも、ですよ。
もしも敵さんが「超絶格好いい孫軍師様の華麗な成功例」をそっくり真似て攻めて来たとしましょうよ。
でも怖がるこたぁないですよ。こっちはそれに対応した別の手段を考えちゃえば良いだけですから。
そんなわけだから、自分のパターンなんてものは決めちゃわない方が良いんですよ。
いやいや、ホントに、戦争は水物っすよねー。
ほら、水は高いところから低いところに流れるでしょ?
居辛いところに無理して居座るようなことはしないで、動きやすい形に変わりながら留まりやすい場所へ移動しちゃう。それが水の性質。
ですから、戦争するなら、水みたいにするっと動きましょうよ。
真っ正面切ってカッチカチに堅い「実」の部分を叩くような、やり辛い方法はやんない方が良いんですから。そういうところはするっと回避して、潰しやすそうな、相手がしれっと忘れてるペラッペラな「虚」の部分を、ドーッっと叩いちゃいましょうよ。
それで、ですね。
水は地面の形に沿って――時々地形の方を変えちゃったりしながら――一つの形に留まらないで流れて行きますよね。
戦争も、敵の形によって作戦を変化させながら、勝利に向かったらイイじゃないかなぁと思うんですよ。
何度も言っちゃいますけども、戦争に必勝パターンなんてナイですよ。水はいつも同じ「形」をしていないでしょ? それと同じ事です。
だから、こっちはガチガチの大きな「形」を作る事にこだわらないほうがイイ。
敵さんの方のパターン解析をして、それに柔軟に対応して、その場にあった「形」を作ればイイ。
そうすれば勝てるんです。
このやり方こそが「神」ってものです。
五行相剋っていうじゃないですか。
森羅万象は「木」と「土」と「水」と「火」と「金」の、五つの元素で出来てて、元素にはそれぞれに強いモノがあって、って言う、あれ。
木は土の養分を吸い取って自分は成長し、相手を痩せさせる。だから木は土に剋つ。
土は水を濁らせ、吸い込み、川をせき止める。だから土は水に剋つ。
水は火から熱を奪い、消し止める。だから水は火に剋つ。
火は堅い金属を溶かし、形を変えさせる。だから火は金に剋つ。
金属の道具は木を切り倒し、加工することが出来る。だから金は木に剋つ。
……そうそう、ルールの面倒くさいジャンケンみたいなあれですよ。
それでですね。
例えば「木は土より強い」からっていって、じゃあ別の元素に対しても「土に対して勝った木のやり方」を、そのまま同じにぶつけたとして、勝てるか、ってお話ですよ。
いくら根っこを張って養分を取ろうとしても金属が相手じゃ勝てないし、水には押し流されちゃうし、火には燃やされちゃって、負けちゃいますからね。
それにほら、木は金に対しては元からして弱い設定ですし。
だから、それぞれにやり方を変えないといけないですよね。
あと、季節。
オレ、春って大好きな季節なんですけど、だからってずっと春がイイって思ったところで、そのご陽気を引き留めるなんてのは無理でしょ?
人間が何をどうやったところで、春の次は夏が来て、秋がになって、冬がやってくるんですよ。
そうなれば、ずっと春の気分でふわふわ過ごしてる訳にはいかなくなりますでしょ?
夏には夏の、秋には秋の、冬には冬の過ごし方に変える必要がありますよね。
季節どこの話じゃないですよ。朝夕の時間だって長くなったり短くなったりしてますもん。
一年中、一日だって秒までで同じ日照時間ってのはそうそうないんですよ。
早起きしんどいから夜が長い方が良い、なんて思ってみたところで、人間はお天道様には勝てません。朝はお天道様の都合でやってきちゃう。
結局、その日その日の夜明けの時間に起きて、その日の夕焼け小焼けでお家に帰らないとないとダメなんです。
お月様なんかもそうですよね。
満月になったと思ったらドンドン痩せてって、十五日もすれば見えなくなっちゃう。だからて消えてなくなったってワケじゃなく、また太っていって、十五日もすればまん丸になる。以下、エンドレスループ。
月の形によって月明かりの強さだって変わるんですから、夜道の歩き方だって、使う灯明の芯の長さの長さだって、まるっきり違ってきちゃいますでしょうよ。
つまり、どんなもの対しても、どんな時でも、
「いつも同じ対策を取ってればイイ」
なんてことは、世の中にはないんですよ。
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