ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
56 / 73

56 提案と交渉

しおりを挟む
 次の日、書類やらなんやらの調整を終えた俺はダレク、カレン、サリアを連れて玉座の間に訪れていた。
 出来る準備は全てやった。
 もしこれで駄目なら……いや、駄目だなんて考えるな、これが最後だと腹をくくらなきゃ。
 
「なんじゃ。また来たのかの?」
「はい。お話、というよりは一つの案のご相談に参りました」
「……ほう? 何じゃ、昨日とは随分違う顔をしとるの。言うてみい」

 今日は天気も良く、クレアの表情や気配からも機嫌がいい事が伺える。
 俺はゴクリ、と生唾を飲み込んで、ゆっくりとプランを話し始めた。

「まず、先日お伝えしたテイル王国の件についてですが、世話になった二人の軍人を助け出した上で我が魔王軍に引き入れたいと思っております」
「ふむ。その意図するところはなんぞ?」
「は。その二人はテイル王国にて長年俺のサポートをし続けていてくれた人達です。俺の召喚の内容や、それに付随するあれこれ、召喚したモンスターの管理法などなどを熟知している者達なのです。彼らの協力があったからこそ、俺は軍での活動を滞りなく進める事が出来ていたのです」
「……ふむ。続けよ」

 クレアの顔を見るに、目は細められて真剣な表情ではあるものの、否定的ではなさそうだ。

「であるからして、是非とも我らが魔王軍に招致し、召喚したモンスターの管理や調整、俺のサポート役として働かせていただきたいのです。そうすれば派遣業務や、軍、魔王城、ひいてはクレア様が覇道を進むご助力が出来るかと」
「……確かにクロの仕事を知る旧知の者がおれば仕事の効率化や拡大も見込めるのう。じゃが我は既に魔王、魔界全土を束ねる王じゃ。これ以上のどこに覇道があると言うのじゃ」
「それは--天下統一でございます」
「何……? それはまさかお主、我が人界をも掌握せしめるという事か?」
「はい。クレア様のお力、この精鋭揃いたる魔王軍の力、そして俺の力があればそれは可能です」
「ククク……カッカッカ! 面白い! 実に面白い事を言うのぅ! まぁそれは置いておくとして、クロの提案は理に叶っておる。その者らを引き込めばクロの負担が減るというのであれば止めはせん」
「本当ですか!」

 よっし! 多少誇大広告はしたが、概ね間違った事は言っていない。
 ダラスとアスターがいれば、モンスター関連の作業効率が格段に上がるのは事実なのだから。

「じゃが! 魔王軍は動かせんぞ? そこはどうする? まさか後ろに控えているその者らと四人で敵地に赴くつもりか?」

 クレアがニタリといやらしい笑みを浮かべている。
 やはり、クレアはこうなるように仕向けていたのだろう。
 感情論ではなく理路整然と、メリットと目的を伝え、その為の案をしっかりと提示するように。
 そう仕向けたのだろう。
 全ては魔王の掌の上、恐ろしい人だ。

「それについては見て頂きたいものがありまして……よろしいでしょうか」
「かまわん」
「では」

 俺は一度立ち上がり、玉座の間の空いているスペースに手を向けた。

「サモン:TALOS-markX、テンコール」

 床に十個の魔法陣が浮かび上がり、そこから浮き出るようにして十体のパワードスーツが姿を表した。

「ほう……これもモンスターか? ふむ、硬い外骨格に覆われておるのう……これは鋼鉄なんかよりも数倍は硬そうじゃ。こやつの種族名がタロスと言うのか?」

 パワードスーツが出現すると同時に、クレアは玉座から飛び降りてその内の一体に近付いてその体をコンコンと叩いていた。
 特殊金属で構築された外骨格、本来は人が中に入って使用するものだが、俺が召喚してしまえば、無人といえど動き出す事が可能だ。
 もちろん動作テストは昨日のうちに済ませている。

「はい。人型の--そうですね、魔族に近い種族です。非常に強靭な膂力と外骨格で生半可な攻撃は通用しません。作戦時にはこのタロスを千体ほど投入する予定です」
「ほほぉ……なるほどなるほど。いやはや恐れ入った。クロにこんな隠し球があるとはの。どれ、今度お主が召喚出来るリストとその詳細を記した書類を作成する事は可能かえ?」
「それは可能ですが……タロスの出動許可はいただけるのですか?」
「かまわん。一見変わったフルプレートのようにしか見えんからの。魔族だと勘違いされることも無かろうて」
「! では!」
「うむ。作戦を許可する。よくぞ一日でここまで練り上げたのう! あっぱれじゃ!」
「あ……ありがとうございます! ありがとうございます!」
「で、作戦名は何にするんじゃ?」
「はい?」
「作戦には作戦名が必要じゃろうが。決めていないなら我が決めるぞ」
「こ、光栄です!」
「ふむ……そうじゃなぁ……」

 クレアは器用にパワードスーツの肩に座って瞼を閉じた。
 そしてカッと目が見開かれ、その可愛らしい唇がゆっくりと動いた。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...