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4章 異世界葛藤編

第53話 雨降って何とやら

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 ルリアと仲直りをした後、周りからの冷やかしに耐えかねてギルドを後にする。

 何やら誤解もされていた気がするが、今は気にしない事にした。

 外に出ると、いつのまにか雲間から陽の光がさしていた。

 空を見上げていると、声をかけられる。
 声のする方に振り向くと、そこには腕を組み壁に寄りかかっている『デグ』がいた。

「早めに寄りを戻してもらえて良かったぜ。じゃねぇと毎朝アイツのおもりをしないといけないところだったぞ」

 どうやら、間接的に迷惑をかけていたようだ。
 なんとなく、朝の二人の様子が想像出来てしまった。

「すみませんでした、ご迷惑をおかけしたようで…」

「ま、済んだ話だ。また同じことにならないなら、それでいい」

「もう大丈夫です」

「そうか。まぁ…ちょっと変わった奴だが、良い奴だからな。大事にしろよ?」

なら、大事にしますよ」

「ち、反応がつまんなぇなぁ」

「つい先程冷やかされたばかりなので」

「さっき声をかけるんだったぜ」

 フッとデグが笑いながら言う。
 茶化すような言い草だが、きっとデグもルリアを心配していたのだろう。

「ご心配をお掛けしました」

「心配なんざしてねーよ。面倒だから勘弁しろってだけだ」

 そう言いながらデグは、手で払うような仕草をする。

「わざわざこっちに様子を見に来ていたのにですか?」

 本来デグはこちら側ではなく、訓練所側にいるはずなので、きっと心配で様子を見に覗きにきたに違いないと思い、カマをかけてみる。

「うるせぇ、用が済んだなら帰るか訓練してけ。今ならみっちりしごいてやるぞ?」

「…では今日はこれにて失礼します」

「ったく…」

 アレ以上厳しくされるのはまっぴらなので、そそくさと退散することにする。

 この後、食堂にも寄って二人にも話をしたいと思ったが、今行くと時間的に迷惑と思い、倉庫でお布団を返してもらい、先程再び受け取った合鍵を持って、ルリアの家に一旦向かう事にした。

 それから適当に時間をつぶして、食堂が一旦閉まる時間に合わせて二人に会いに行った。
 二人には改めての謝罪をすると、エリスさんは笑っていたが、キリーカはアタフタとしており、両者真反対の反応をしていた。

「今までは変な遠慮をしていたけれど、今後は悩みがあったらキリーカも頼らせてくれ。逆に困ったことがあったら、何でも言ってくれ。全力でキリーカの力になれるようにするから」

「えっと…あの…」

「キリーカも俺にとって大事な存在だから、大切にさせてほしい」

「だい、じ…はわ…」

「今までごめんな。こんな情けない奴だけど、これからもよろしく」

「えと…ひゃい…」

 俺が手を差し出すと、おずおずとしながらも手を差し出してくれたので両手で握り返した。

 しかし、エリスさんが先程からずっとニヤニヤとしているが、なんだろうか。

「エリスさんにも、ご心配やら気遣いをさせてしまって、申し訳ありませんでした。発破をかけてもらえて、助かりました」

「なーに、あたしはキリーカが心配してるのを見てらんなかっただけさ。この子の為に動いただけであって、感謝されるほどのことはしてないよ」

「それでも、ありがとうございました」

「その気持ちがあるなら、せいぜいこの子をかわいがっておくれ」

「もちろんです、全力で可愛がります」

「ふぇ!?」

 俺はそう言いながら、キリーカの頭を撫でる。
 キリーカが耳を赤らめてうつむく様子が可愛らしく、抵抗される様子も無いので、しばらく撫でていると、「そろそろよしてやんな」とエリスさんに言われ、仕方なく手を離した。

 キリーカはプルプルと震えている。
 ちょっと調子に乗りすぎただろうか…。

「ごめん、嫌だったかな?」
「っ…」

 全力で首を横に振られたので、嫌では無かったようだ。

「そうだ、キリーカは俺のことをお兄様って呼んでくれてるよな」

 キリーカはこくりと頷く。

「だから今後は、本当の兄だと思ってもらえるよう、もっと頼れるような存在になれるように頑張るから、キリーカももっと甘えてくれよな!」

 俺はルリアにもしたように、決意表明のごとく宣言をする。
 エリスさんは後ろを向いてプルプルと震えているが、どうしたのだろうか。
 キリーカはキリーカで呆然としている。
 何か変な事を言っただろうか…

「えっと…その、お兄様は今でもお兄様なので…これからも、その…よろしく、お願いします」

「…こちらこそ、よろしく」

 俺は優しくキリーカの頭を撫でる。
 キリーカも、今度は少し照れた様子ながらも微笑んでくれた。


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