後宮の棘

香月みまり

文字の大きさ
131 / 189
第10章 後宮

第392話 望んでいたもの

しおりを挟む

グロ注意です。
流血、堕胎、流産表現に抵抗トラウマある方は回避をお願いいたします。

--------------------------





東左に冗談まじりに皇子の後見になるべきだと言われてから、芙艶は度々その事を考えるようになった。

しかしまずは目先の劉妃の件を告発しなければと思ったところで

自身の妊娠が分かった。


それは間違いなく東左の子で、もちろん皇帝の子ではあり得ない。

懐妊が分かった次の瞬間、芙艶は考えていた。

「なんとしても無かったことにしなければ」

皇后が、皇帝以外の男の子どもを身籠るなどという醜聞は恥でしかない。下手をすれば祖国との関係の問題にも発展する。

そして何より

皇后としての自身に傷がつく。


すぐに祖国へ密書を送り、薬草を取り寄せた。

祖国の響透国には古くから、産医という妊娠から出産に関わる専門の医師がおり、薬草やまじないを利用した産み分けから堕胎、子授けなど、多岐に渡って研究がなされている。


もちろん堕胎薬というものは優秀な成果を発揮していて、信頼性は随分高い。

しかし祖国に堕胎薬をよこせと言えばすぐにも状況はバレてしまう。

仕方なしに、さまざまな薬草の一覧を作り、それを送らせた。

そして、その中から必要なものを取り、自身で調合して服薬した。

効果はすぐにあった。

声も上げられない中、激しい腹の痛みと一晩戦った末に、それは大量の血と共に出てきた。


痛みが引いて、汗と涙でぐしゃぐしゃのまま、その小さな真っ赤に染まった塊を眺めた。

少しは胸が痛むかと思ったのに、それは全く起こらなかった。

逆に湧いてきたのは

なぜもっと早く来てくれなかったのだという怒りだった。

もっと早く、皇帝との間に来てくれたのなら、産んでやることも出来たものを。

ここまで苦しい気持ちを抱えて生きなくても良かったものを!


小さな塊に憎しみを込めて睨み付けた。


そして、様子を見に来た東左が血溜まりの中から拾い上げたそれを「どこかに埋めますか?」と聞いたので。

「どこか、足のつかないところに捨ててきて」と何の感情もなく答えた。

それからしばらく芙艶は堕胎の影響による不調で伏せた。

出入りの医師を上手くやり過ごし、体調が戻ってきた頃、突如として禁軍の将である王弟に清劉との縁談話が持ち上がった。

望まぬ懐妊あんな事が起こっていたから、劉妃をしばらく泳がせていた事が不味かった。劉妃の思惑が絡んでいるに違いない。そう確信してすぐにでも阻止せねばと思った所を、東左に止められた。


「私に良い案があります。任せていただけませんか?」

そう強請られて、大丈夫なのか?と訝しむと、東左は満面の笑みを浮かべて、芙艶の髪を梳いて口付ける。


「愛しい方、貴方の望みをこの手に。私と貴方の大切な命を犠牲にしたのです。それくらいの報いがなければ、あまりにも貴方が浮かばれない」


東左の瞳は強い光を放っていた。

そうだこんな思いまでしたのだ、自分はもう後には引けない。


「任せるわ東左。お願いね」
しおりを挟む
感想 260

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。