162 / 202
第3章
第151話 リリス14歳 憂慮2
しおりを挟む
この日の放課後、授業を終えたリリスたちは城へ向かうため廊下を歩いていた。こうして皆で城へ出向くのは、あのカフェテリアの前でアーサーに誘われて以来2度目だった。アーサーはリリスやヘンリー、スタイラスたちと過ごす時間を大相気に入ったようだった。最初の時、皆が帰ったあと「次はいつ誘おうかな」と楽しそうに言っていたと、アーウィンがこっそり教えてくれたのだ。そして、それを聞いたアリーナとエリーゼは歓喜していた。
もう少しで校舎の出入り口が見えるというところで、突然リリスがヘンリーの腕を掴み、引き止めた。止められたヘンリーは驚いた表情でリリスを見るが、腕をを掴んだまま俯く彼女の表情を見ることはできなかった。
「リリィ?どうしたの?」
・・・・・
俯いて応えないリリスにもう一度「リリィ?」と声をかける。すると、リリスのかすかな声がヘンリーの耳に届いた。
「・・・行こう」
小さな声に聞き取れなかったヘンリーは聞き返す。
「なんと言ったの?もう一度言って?」
「森・・森へ行こう・・お城じゃなくて森へ行こうよ」
「リリィどうしたの?急に。今日は城へ行く予定だっただろう?昼休みに先生にもそう言ってたじゃないか」
「とにかくイヤなものはイヤ!」
顔を上げたリリスはさっきまでとは違いはっきりした声で言った。
その時、立ち止まったリリスたちに気付いたアリーナたちが戻ってきた。皆、怪訝な顔をしていた。
「ヘンリーどうかしたのか?」
スタイラスが尋ねると、ヘンリーは「いや、何でもないよ」と誤魔化し、先に馬車に行くよう言った。しかしこの時、リリスはアリーナたちを見て信じられない言葉を吐いた。
「なんであなた達と一緒に行かなくてはならないのよ」
「ちょっとリリィ!」
慌てたヘンリーがリリスの手を取り、いま来た廊下を戻ろうとする。しかしリリスは追い打ちをかけた。
「あなた達は私のおまけなのよ。おわかり?今から私たちは森へ行くの」
「リリィッ!」
誰もがその声に驚いた。いつも穏やかなヘンリーからは想像つかない大きな声だった。そしてそれには怒りの色を含んでいた。皆がヘンリーを見ると、彼の表情は怒りから心配へと変わりリリスを見つめていた。
廊下にしばらく沈黙が流れる。そしてその重い空気には似合わないあどけない言葉が発せられた。
「あら?みんなどうしたの?お城へ行かないの?」
声の主はリリスだった。目をパチクリさせ、その表情は幼い子供のようだった。
そして皆が戸惑い顔を見合わせた後、アリーナが声をかけた。
「リリス、いま城へ行かないって貴女が言ったのよ」
「えっ?嘘。そんな事言わないわよ」
リリスの答えにエリーゼは「まぁ」と口をおさえ驚いていた。アリーナ、スタイラスとアシュリーも目を見開き、驚いている。
「そう言えば今日の授業でも変だったわ」
エリーゼが思い出したように言った。ヘンリーが「それはどういう事?」と尋ねると、エリーゼは言葉を続けた。
「授業中にいきなり立ち上がってローブン先生に向かって『もっと楽しい授業しなさいよ』って啖呵を切ったんです。あれ、ごまかすの大変だったわ」
「「あー」」とスタイラスとアシュリーが遠い目をしている。ヘンリーはリリスに「本当?」と聞いた。それにリリスはキョトンとして「それが覚えてないの」と言った。ヘンリーは「ねえ、どこか身体の調子が悪いところない?」と聞くが、リリスは首を横に振り「だって健康診断でも問題なかったの知ってるでしょ」と言った。
「変よ。やっぱりリリス変よ。小さい頃からの付き合いだけど、貴女そんな事の言う子じゃないもの。ねえ、ヘンリー様。
素直で明るくてどっかの貴族みたいにお高く止まってないし、良くも悪くも公爵令嬢っぽくないの。そこがリリスの良いところで私は大好きなの。まあ、ちょっと天然で時々やらかしちゃうところはあるけど、でも先生や私たちにあんなこと言うなんて絶対におかしい」
アリーナはリリスの肩に手をのせ、真っ直ぐに瞳を視線そらさずに言った。
「ちょっと、アリーナ・・それって褒めてるの?酷い言われようなんだけど・・私そんなに酷い?」
そう言ってリリスが周りの面々に視線を移すと、皆は苦笑している。そしてスタイラスは言った。
「まあリリス嬢は人を傷つけるようなことを言わないのは確かだよ。アリーナ嬢が言うとおりちょっと変だな」
アシュリーがその言葉に何度も頷いた。
「もう、みんなして変・・変って・・・とにかく私どこも痛くないし、悪くないから・・ほら、もう行こうよ。殿下をお待たせしてしてしまうわ」
そう言ったリリスは肩に置かれたアリーナの手を取ると、出口へと進む。皆は戸惑いつつその後に続いた。ヘンリーも小さなため息をつくと、歩き始めた。スタイラスが「大丈夫かと?」尋ね、ヘンリーはそれに「ああ、大丈夫だ」と答えた。スタイラスは「そうか・・」と呟いたあと微笑むと「なにかあれば、力になるから」と力強く言った。ヘンリーは頼もしい友人の言葉に心から感謝したのだった。
もう少しで校舎の出入り口が見えるというところで、突然リリスがヘンリーの腕を掴み、引き止めた。止められたヘンリーは驚いた表情でリリスを見るが、腕をを掴んだまま俯く彼女の表情を見ることはできなかった。
「リリィ?どうしたの?」
・・・・・
俯いて応えないリリスにもう一度「リリィ?」と声をかける。すると、リリスのかすかな声がヘンリーの耳に届いた。
「・・・行こう」
小さな声に聞き取れなかったヘンリーは聞き返す。
「なんと言ったの?もう一度言って?」
「森・・森へ行こう・・お城じゃなくて森へ行こうよ」
「リリィどうしたの?急に。今日は城へ行く予定だっただろう?昼休みに先生にもそう言ってたじゃないか」
「とにかくイヤなものはイヤ!」
顔を上げたリリスはさっきまでとは違いはっきりした声で言った。
その時、立ち止まったリリスたちに気付いたアリーナたちが戻ってきた。皆、怪訝な顔をしていた。
「ヘンリーどうかしたのか?」
スタイラスが尋ねると、ヘンリーは「いや、何でもないよ」と誤魔化し、先に馬車に行くよう言った。しかしこの時、リリスはアリーナたちを見て信じられない言葉を吐いた。
「なんであなた達と一緒に行かなくてはならないのよ」
「ちょっとリリィ!」
慌てたヘンリーがリリスの手を取り、いま来た廊下を戻ろうとする。しかしリリスは追い打ちをかけた。
「あなた達は私のおまけなのよ。おわかり?今から私たちは森へ行くの」
「リリィッ!」
誰もがその声に驚いた。いつも穏やかなヘンリーからは想像つかない大きな声だった。そしてそれには怒りの色を含んでいた。皆がヘンリーを見ると、彼の表情は怒りから心配へと変わりリリスを見つめていた。
廊下にしばらく沈黙が流れる。そしてその重い空気には似合わないあどけない言葉が発せられた。
「あら?みんなどうしたの?お城へ行かないの?」
声の主はリリスだった。目をパチクリさせ、その表情は幼い子供のようだった。
そして皆が戸惑い顔を見合わせた後、アリーナが声をかけた。
「リリス、いま城へ行かないって貴女が言ったのよ」
「えっ?嘘。そんな事言わないわよ」
リリスの答えにエリーゼは「まぁ」と口をおさえ驚いていた。アリーナ、スタイラスとアシュリーも目を見開き、驚いている。
「そう言えば今日の授業でも変だったわ」
エリーゼが思い出したように言った。ヘンリーが「それはどういう事?」と尋ねると、エリーゼは言葉を続けた。
「授業中にいきなり立ち上がってローブン先生に向かって『もっと楽しい授業しなさいよ』って啖呵を切ったんです。あれ、ごまかすの大変だったわ」
「「あー」」とスタイラスとアシュリーが遠い目をしている。ヘンリーはリリスに「本当?」と聞いた。それにリリスはキョトンとして「それが覚えてないの」と言った。ヘンリーは「ねえ、どこか身体の調子が悪いところない?」と聞くが、リリスは首を横に振り「だって健康診断でも問題なかったの知ってるでしょ」と言った。
「変よ。やっぱりリリス変よ。小さい頃からの付き合いだけど、貴女そんな事の言う子じゃないもの。ねえ、ヘンリー様。
素直で明るくてどっかの貴族みたいにお高く止まってないし、良くも悪くも公爵令嬢っぽくないの。そこがリリスの良いところで私は大好きなの。まあ、ちょっと天然で時々やらかしちゃうところはあるけど、でも先生や私たちにあんなこと言うなんて絶対におかしい」
アリーナはリリスの肩に手をのせ、真っ直ぐに瞳を視線そらさずに言った。
「ちょっと、アリーナ・・それって褒めてるの?酷い言われようなんだけど・・私そんなに酷い?」
そう言ってリリスが周りの面々に視線を移すと、皆は苦笑している。そしてスタイラスは言った。
「まあリリス嬢は人を傷つけるようなことを言わないのは確かだよ。アリーナ嬢が言うとおりちょっと変だな」
アシュリーがその言葉に何度も頷いた。
「もう、みんなして変・・変って・・・とにかく私どこも痛くないし、悪くないから・・ほら、もう行こうよ。殿下をお待たせしてしてしまうわ」
そう言ったリリスは肩に置かれたアリーナの手を取ると、出口へと進む。皆は戸惑いつつその後に続いた。ヘンリーも小さなため息をつくと、歩き始めた。スタイラスが「大丈夫かと?」尋ね、ヘンリーはそれに「ああ、大丈夫だ」と答えた。スタイラスは「そうか・・」と呟いたあと微笑むと「なにかあれば、力になるから」と力強く言った。ヘンリーは頼もしい友人の言葉に心から感謝したのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
579
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる