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第38話
しおりを挟むラウルたち『聖域の守護者』パーティーが、変異種のジャイアントレイブンに乗り、町を目指そうとしていたちょうどその頃。
バルドら『神々の申し子』パーティーもまた、同じように帰還するべく村を発ったところであった。
「フッ……。さて、シェリー、エミル。満を持して町へ帰還するとしようか。窮地に陥った人々の最後の希望である、僕ら選ばれし勇者たち――『神々の申し子』の凱旋というわけだ……」
「うふっ。バルド、ご機嫌ですね。その調子ですよ。それでこそ私たちのリーダーというものです」
「……うん。らしくなってきたね……」
揃って声を弾ませる彼らは顔色も非常によく、全盛期の頃の雰囲気を取り戻しつつあった。
「――って、なんか、向こう側に黒いものが見えません?」
「……あ、本当だ、なんだろう……?」
ほどなくして、シェリーとエミルが遥か前方に見える黒い何かに気付く。
「ん、どうせカラスどもが雑談でもしているのだろう」
「なるほど。っていうか、なんだかこっちへ近付いてるような気がしますね……?」
「……うん。不気味……」
「いや、シェリー、エミル、心配するな。やつらは図体はでかいようだが所詮チキンだから、僕たちの発する猛者のオーラに怯んで寄り付かないはず。つまり、あの『聖域の守護者』パーティーよりも早く帰還できる可能性が高いというわけだよ」
「あー、バルド、それはそうかもですね。ダンジョンの不死系や闇系モンスターと違い、獣系モンスターは強い者を恐れて靡くといいますから。そこは運に左右されるはずもありませんし、私たちにとってはまさに好都合というわけですね」
「……だねえ。早くSS級に復帰して、この醜い顔も治したい……」
「まったく。エミルってやつは、こんなにも清々しいときに顔のことを心配か。本当にどうしようもないが、まあ今となってはその気持ちもわからんでもない。もう少しの辛抱だ」
「ですね……。エミル、今まではバルドも私も余裕がなかったので、そういうことにはあまり気が回りませんでしたが、町で暴れているという変異種を倒し、SS級に戻ったら真っ先に顔を治しに行きましょう」
「……うん。ありがとう、バルド、シェリー……」
壊れかけていたパーティーの絆さえも元に戻ろうとしていた、まさにそのときであった。
『『『『『ガアァッ……!』』』』』
突如としてけたたましい鳴き声が響いたかと思うと、バルドたちの前方からジャイアントレイブンの大群がやってきたのだ。
「「「……」」」
だが、モンスターの群れとはまだ距離があるにもかかわらず、彼らは一向にその場を離れようとはしなかった。
「フッ……大丈夫だ。心配ない。おそらく、やつらの縄張りに雑魚が侵入していて、それが発見されてしまったのだろう……」
「そのようですね。まあどうせ大方、汚物使い二世のウッドが一人でひっそりと帰ろうとしたものの、カラスたちに見付かってしまったのでしょう」
「……ウププッ……それ、普通にありえるねえ……」
依然として余裕の表情を浮かべる三名だったが、上空で見る見るモンスターたちが溜まっていき、周囲が真っ暗になる頃には焦りの色が覗き始める。
「って、おい、何故カラスどもは僕たちの頭上で留まる? ウッドのやつめ、まさか僕たちの近くにいるのか……?」
「それは、ありえますね。私たちに被害を与えるために、わざとやっているのかもしれません……」
「……ウザ。邪魔すぎ……」
「あ、あ、慌てるな。フッ……。やつらが僕たちを襲うことはないはず。さすがにカラスでも雑魚と猛者の区別くらいつくだろうから――」
『『『『『――ガアアァーッ!』』』』』
「「「ぬぁっ……!?」」」
それからまもなくのこと、黒い集団がほぼ同時に急降下してきて、バルドたちは血相を変えて逃げ惑う羽目になるのだった。
「にっ……逃げろおおぉぉぉぉっ!」
「いっ、言うのが遅すぎますよおぉぉっ!」
「……だっ、だずげでぇぇっ……!」
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